第十四話 そんな趣味だったの?
ブクマが嬉しい今日このごろ。
必死でストックを継ぎ足しています。
目指せ、毎日更新。
指摘を受けて表現を変えました。
やって来ました迷宮都市。
いやぁ、懐かしいってぐらいの時は経ってないけど、やっぱり故郷って感じがするな。
あちこちを見て回ると、相変わらずの賑やかな風情で、帰って来たという感じがする。
向こうの世界も確かに故郷だったけど、今ではこちらのほうが馴染みが深い。
ああ、なんとか戻れないものかな……
しばらく歩き、迷宮都市の管理区域に近づいていく。
ここいらは相変わらず静かな佇まいで、街路樹も相変わらずだ。
計画都市なのであちらの世界の都市を参考にしたけど、やっぱりこの世界では見ない街になっている。
だけど幹部連中には受けたので、そのまま建設に及んだんだ。
もっとも、ここも迷宮の領域になるから、町の構築はお手軽なんだけどね。
「いらっしゃい。見ない顔だね、新人さんかい? 」
「新しい変装だ」
「そういや、その気配は。けど、何か変だな」
「ちょっとトラブルに巻き込まれてな、本体は別のところに居るんだ」
「戻れないのかい」
「ああ、今はこうして仮初の姿が精一杯だ」
「それでもこうして顔を見せてくれるだけ嬉しいさ」
「ここはオレの故郷だしな」
「ははは、違いない」
「ああ、それでな、上級の薬の材料、可能な範囲で揃えてくれるかな」
「量はどれぐらいだ」
「100本分ずつぐらいでいい」
「それならすぐ揃うぞ。なんせ最近、生産量が増えてな」
「大概にしないと宝物倉庫ばかりになっちまうぞ」
「あはは、そういや最近、また増えたんだ」
「やれやれ、少しは使うほうも考えてくれよ」
「稼ぐほうが面白いからな、使うのは別の奴に任せるさ」
「皆が同じ事を言うんだよな」
「あはは、とにかく、すぐ揃えるから」
「頼むな」
統括代行とは言っても、あいつも同じ幹部。
ただ、気安いのが気に入っている奴だ。
ざっくばらんが好きなのに、固い奴はとことん固いがあいつは違う。
ああいうフレンドリーな感じでやってくれれば良いのに、中々聞いてくれないんだよな。
待っているのも何だと、宝物倉庫をチェックをしたら14もあった。
あり過ぎだろ。
あれ1つが体育館ぐらいあるんだぞ。
仕方が無いな。
向こうでお土産を買う為にいくらかもらっていくぞ。
ええと、金塊が良いかな……うお、何だこのピラミッドは。
迷宮だから底は抜けないが、どんだけの重さか分からんぞ。
まあいい、適当にもらっていくか。
上のほうからつらつらと倉庫に入れていき、5メートルぐらいの高さのピラミッドを1つ消して店に戻る。
あんなピラミッドが宝物倉庫の中につらつらと並んでいたからな。
確かにいくらでも構築出来るとは言うものの、そろそろ迷宮金山に還元しても良いかも知れない。
「揃ったか」
「ああ、揃っているよ」
「7番の金塊倉庫から1山もらったぞ」
「あいよ、ならまた入れておくかな」
「向こうで換金して土産を買うからな」
「楽しみにしておくよ」
「どうせお前ら幹部連中の好みは分かっているんだ。事典とか技術書の類を集めておくからな」
「うはぁ、楽しみだな」
「やっぱりな」
「あはは」
「そういや、開発研究班の奴らはどうなっている」
「エンジンって言うんだっけ? それの目処が何とか付いたらしいよ」
「やれやれ、となると科学技術関連の本も集めておくか」
「あいつらに伝えておくよ」
「表に出せない技術だけど、迷宮内でやる分には問題無いさ」
「そういや、90番台後半の予備フロア、使っても良いよな」
「ああ、構わないぞ。解除コードはニイタカヤマノボレだ」
「どんな意味なんだ」
「まあ、ちょっとした合言葉みたいなものさ」
「そうか」
別に攻撃命令って訳じゃない。
予備フロアは後々に繁華街とかオフィス街とか、現代社会に近い色々を再現しようと思って取っておいたフロアなんだ。
だけどもうひとまず帰れたから、要らなくなったフロアでもある。
本当に望郷心がどこまで肥大してたんだか。
故郷を模した都市空間にしようなんて、そんな事を考えていたんだよな。
だけどお土産を渡したら、本当にそんな風景を作り上げるかも知れないな。
開発研究班の奴らは本当にそういうのが好きだから。
それでも予備のままにしておいたのは、作ってしまったら入り浸ってしまう予感があったから、構想のみで止めておいたんだ。
だから使う分には何も無いから、好きにいじくれば良いさ。
それからあちこちの店を巡り、特産品などを買い込んでいく。
料理スキルのほうに使おうと思い、あれやこれやと集めていく。
そのうちに嗜好品のほうに気が向いて、かつて420万ポイントの大枚をはたいて誘致した珈琲豆に目が留まる。
あん時はもう、酷いぼったくりと思ったもんだが、届いてみれば豆とは別に、各地の豆の苗もセットになっていて、すぐさま生産部門に渡せたんだ。
道理で高いと思ったよ。
豆をいくつか買い、ミルやらカップやらと買い揃えていく。
自分用ならこれでも良いが、店でもするなら大量に欲しいな。
うん、喫茶店と言うのも面白いかも知れない。
そうと決まれば大量に……
◇
王都で金塊をいくつか換金し、ギルド近くの店を借りる。
小さな店の中を喫茶店に改装してもらい、奥の部屋にマイ研究室の登録をしておく。
店の名前は『アルケミスト』
有毛霧にしようかと思ったが、寒いので止めた。
いかんな、もっと精神年齢を下げないと、本当に爺さんになってしまうぞ。
メニュー
・ブレンド
・アメリカン
・アイスコーヒー
・サンドイッチ
・ホットドッグ
・フルーツパフェ
・桃のジュース(ホットもあります。ライム付き)
こんなもんかな。
迷宮都市の特産品ばかりで揃えてみたが、自作しないと料理スキルが上がらないな。
実は迷宮都市では『サンドイッチ』とか『ホットドッグ』も特産品になっていて、柔らかいパンを使ったこれらが外から来た商人達に受けている。
後は迷宮産のフルーツを使ったパフェとかジュースとかになるけど、桃も数種類の苗を誘致した。
今ではそれを掛け合わせて品質改良とかもやっているようで、特産品になっている桃は瑞々しくて本当に甘いんだ。
足が早いからそのままでは交易には向かないけど、居ついた冒険者や商人などには人気の果実でもある。
香辛料や砂糖は別の大陸からの貿易しか手が無く、それだけにかなりの価格で流通しているが、桃が本当に甘いからそれで満足しているようでもある。
果物屋は『ミズカシ屋』と呼ばれていて、名付けはオレだ。
付けてくれと頼まれて悩んだ挙句、ちょっと古風な名を付けた。
どのみち古風などは分からないだろうからとそのままになっているが、土産を渡したらそのルーツを知るかも知れないな。
うん、書籍は大量に集めよう。
全幹部の興味を満たせるぐらいの種類を集めるのは大変だけど、本屋巡りをしてでも集めようか。
さすがにネットでの買い物は親がびっくりするからな。
配送所留めも良いが、うっかり倉庫に入れているのを見られたら言い訳が出来ん。
それなら買って物陰で入れてまた買ってのほうが安心だ。
手間だけど。
店の内装の改装を業者に任せ、とりあえず近日開店と書いた紙を貼っておこう。
オープンはまだ先の予定なんだけど、通行人への宣伝になるかな。
さて、ログアウトして本屋巡りといくか。
◇
夏休みも残すところ後10日余り。
本当にゲーム三昧になってしまったな。
もちろん、宿題は終わらせてあるが、下手に日記とか提出する訳にもいかん。
8月1日 ゲームをした。
8月2日 ゲームをした。
8月3日 ゲームをした。
8月4日 ゲームをした。
・
・
・
こうなっちまうからな。
「あら、珍しいわね。今日はゲームはやらないの? 」
「多少は日焼けもしないとね」
「そうよね、でも、あんまり焼けないほうが良いわよ」
「そうかな」
「うん、折角の色白なのに、もったいないわよ」
「そんな女じゃあるまいし」
「あらあら、でも、女服を着たら女の子に見えるわよ」
「止めてよ、気にしているんだから」
「小さな頃は本当に女の子みたいで、母さん、楽しかったのよ」
「それでアルバムに変な写真があるんだな」
「ねぇ、ちょっと着てみない? 色々あるのよ」
「まさかそんな野望を持っていたなんて」
「さあさあ、こっちに来て」
◇
黒歴史がまた増えてしまった。
結局、スイッチの入った母さんを止められず、趣味に付き合わされる羽目になった。
こういうのも親孝行なのかと心を誤魔化し、ひたすら着せ替え人形と化していた。
考えてみれば、母さんの趣味とか今まで考えた事も無かったけど、折角戻ったんだからこちらに居る時ぐらいは協力しても構わないか。
だけどクラスメイトには絶対に見せられないな。
「おいおい、うちに女の子が居たのか。知らなかったぞ」
「母さんの趣味だよ。今日は着たまま過ごしてくれと言われてさ、仕方なくだよ」
「中々似合っているぞ。どうだ、モデルとかにならないか」
「嫌だよ、そんなの。そんな趣味とか思われたら身の破滅だ」
「ちょっと父さんと写真を撮らないか? 」
「また黒歴史を増やすつもりかよ」
「夢だったんだ。娘と写真を撮るってのが」
「諦めてくれよ、なぁ」
「同僚がいつも自慢のように見せて来るんだ。そのたびに父さん、悔しくてな」
「だから写真は嫌だと言っているだろ」
「あらあら、そういう事ならもっと可愛い服に着替えなきゃ」
「うぇぇぇぇぇ」
◇
酷い目に遭った。
両親揃って悪乗りして、散々玩具にされてしまった。
挙句の果てに『夏休み企画、我が家の自慢の娘』とか題したアルバムとか作りやがって。
頼むから絶対に人に見せるなよ。
その日は結局、買い物に行くようにならず、仕方なく翌日から本屋巡りとなる。
早朝から出かけると親に伝え、眠って起きたら部屋に昨日着せられた服の数々が……
「母さん、あんな物、部屋に入れないでよ」
「あら、起きたの? 早いわね」
「今日は買い物に出るって言ってあったよね」
「それならついでに気に入ったウィッグを買ってらっしゃいな」
「もう女装は止めにしてくれよ」
「いいじゃない。そういう事がやれるのも今のうちよ。年取ったらやれない事なんですもの、楽しまなきゃ」
「楽しんでいるのは母さんだろ。オレは嬉しくも何ともないよ」
「くすくす。でも、久し振りに昨日は良い思いをさせてもらったわ。ありがとうね」
「ま、まあ、たまにならな」
「うんうん、ならまた可愛いのを集めておくからね」
「お手柔らかに」
「くすくす」
どうにも止まりそうにない母さんの趣味。
だけどそれを断れない訳がある。
オレを作った後、子供が産めない身体になってしまったらしいんだ。
だから女の子も欲しかったと聞けば、強い態度で断る気が失せちまってさ。
オレで事足りるなら、まあ良いかと思ってしまったんだ。
言葉の上では嫌だと言っているが、実際、変装で女装した事もある。
向こうじゃ何でも使える手段を使わないと、生き残れなかったからな。
今でこそ最古の迷宮とか言われているが、新米の頃はいつ滅ぼされるかと冷や冷やものだった。
時にはスラムの住民に身をやつしてみたり、女に化けてやり過ごした事もある。
確かにコアに触れて交代になりはしたが、あの迷宮の難易度はそこまで高くないうえに立地が悪く、あのまま構築すればすぐさま潰されると思ったんだ。
だからコアと共に旅をしながら、理想の地で構築したんだけど、聖職者なんかにはすぐに特定されるんだよな。
だからもう、逃げて逃げての繰り返しで、なりふり構わず何でもやったさ。
それを思えば親の趣味に付き合うぐらいは何でも無いけど、やっぱり男の子としては嫌がらないとな。
こちらに戻って向こうでのあれこれは忘れていたけど、思い出したら特に大した事でも無いと思えてしまう。
そうさ、オレはそうして生き延びたんだ。
それを考えればなんて事も無いか。
ふむ、ウィッグか、そうだな。
なら、ゲームのアバター風にしてみるか。
あれならアバターの格好をしてみたくなったと言えば通りそうだし。
◇
「あら、お似合いですよ」
「これ、実はゲームのアバターの格好でさ、現実で真似てみたくなったんだ」
「まあ、それって話題の仮想ゲームね」
「凄いんだ。中は別の現実みたいで」
「そうなんですか。私も興味はあったんですけど、やってみようかしら」
「戦わない職もあるから、そういうのが苦手な人でもやれるかも」
「ああ、それなら良いかも」
「しかも、仮想空間だから甘い物をいくら食べても太らない」
「あらっ、それは良いわね」
結局、買いました。
パールシルバーのロングウィッグを。
ついでに白衣も調達して、気分はゲーム内でのオレのスタイルです。
しかし、この格好になるとどうしてかジロジロ見られて困る。
さて、買い物の続きといきますか。
「ねえ君、今暇? 」
「これから買い物なんです」
「付き合うよ」
「あの、見ず知らずの人に付き合ってもらう謂れはありませんけど」
「まあまあ、遠慮しないで、さあ、行こうか」
しつこいな。
だけど、そちらがその気なら、こちらもそのつもりで良いんだよね。
まあ、そういう事なら付き合ってもらいますか。
◇
久々に新鮮な食事ありがとう。
君の事は5分ぐらいは忘れないよ。
さてと、買い物の続きをしないと。
ティの中でもほっとすル熱い桃の果汁をノムのが好きです。




