十二話 君、長じゃないよね?
「こんちわ~苔取っても良いかな? 」
『珍しいのぅ。到来者はいきなり襲い掛かってくるものじゃと思うておったが』
「あれ? 長老は? お留守? 」
『ワシが長じゃがの』
「またまたぁ。君は違うでしょ。ほらほら、長に許可もらってよ」
『何を言うか、ワシが長じゃ』
実に白々しいと言うか、何で長の振りしているんだろう。
奥にでかい気配があるようだから、別に留守って訳じゃないよな。
それとも何か用事でもあるのかなぁ。
「おーい、エンドロフィーン」
『な、なして、その、名を』
『何じゃ、騒がしいの』
『あ、長』
あれ、忙しいんじゃないのか。
代理って訳でも無さそうだけど。
「そいつ、長の振りしてたぞ」
『ああ、それはの、約定じゃ』
「ああ、ゲームのね」
『おぬしもそうじゃろうが』
「たはは、そうだった」
『苔なら好きに採るが良い』
『長、約定では試練を与えるのでは』
『おぬし、こやつの中をよぅく探ってみぃ』
『うぬ……うな……なななな、なしてじゃぁ』
バレちゃった。
「なのに長の振りが必死でさぁ、クククッ」
『うおおお、言うでない』
『ほっほっほっ、丸分かりじゃったようじゃな』
「やっぱ、試練したほうが良い? 」
『冗談では無いぞ。到来者なれば仮死で済むが、おぬしなれば消滅じゃ』
「ああ、そういや、ケロンの奴が近々ここに来るとか言ってたけど、もう来た? 」
『おお、あやつが来るのかの。これは楽しみじゃ』
「まだなのね。ああ、来たらオレ、ちょっと戻れない事になっているって伝えておいて欲しいんだ」
『それでそのような姿なのじゃな』
「すっかり雑魚になっちゃって。今なら簡単に殺せそうだろ」
『到来者は蘇生があるから無理じゃの。じゃが確かに弱々しいの。以前の欠片程も脅威を感じぬわい』
やっぱり相当弱くなっちまってるんだな。
まあ、ゲームのキャラがそんなに世界に脅威を与えるような強さとか拙いよな。
蘇生付きで脅威の強さとか、それこそ世界がヤバくなっちまうもんな。
でもあれっ、オレってそんなのだよな。
ううむ、気を付けないと世界がヤバくなっちまうのか。
自覚して良かったな。
「エイザン、ちょっと台になって」
『うぬぬ、仕方が無いのぅ。ほれ、乗るがよい』
「ありがと」
折角、弱々しくなっているんだし、元のスキルが使えるとか教えないほうが良いよね。
あんまり怯えさせるのは趣味じゃないんだ。
今なら対等ぐらいに話せているけど、元の姿だと何故か怯えるんだよな。
何もしないのにさ。
あれがちょっと悲しいと言うか、残念と言うか。
小さきモノは怯えないのに、どうしてかでかいのは怯えるんだよ。
あれがどうにも不思議なんだ。
よし、こんなもんだろう。
「ありがと」
『もう良いのかの』
「うん、とりあえずはね」
『うむうむ、なればまた来るがよい』
「この姿でね」
『そのほうが良いの』
「あいよ」
さーて、お次はミストラス湖だな。
システムで作ればチートにならないと分かって良かったよ。
普段のつもりでやるとチートになるけど、システム上での調合なら普通に完成するみたいだ。
だから恐らくオレのスキルがシステムに介入しようとしているんだろう。
だから普段のつもりでやると、いわゆるシステムにハッキングかけているような感じになって、チートアイテムになっちまうと。
そもそも元のスキルのほうが上位存在だから、ゲームのシステムでは防げないんだな。
ゲームのスキルは誰でも使える汎用っぽいし。
◇
おお、今日もわんさかと募っているな。
「ちょと水汲んでも良いよね」
『忌まわしき世界の敵が何用じゃ』
「あれ、耳、大丈夫? 今、言ったよね。水を汲みたいと」
『許さぬ』
『何をしているのです。下がりなさい』
『し、しかし、こやつは』
『下がれと言っているでしょう』
『は、ははっ』
一喝するとパパーと散っていったな。
『ごめんなさいね。若い子は真実を知らなくて』
「いや、別に宣伝するつもりもないし」
『あの子達、元気にしているかしら』
「ああもう元気も元気。かなり増えていたぞ」
『ああ、それは良かったわ。一時はもうどうなるかと思っていたのに』
「最近はどうだ。もう居ないか、人族に脅かされているような奴らは」
『そうね、まだ大丈夫みたいだけど、そのうちまたお世話になると思うわ』
「うちの連中に連絡してくれれば、すぐに迎えが来るはずだ」
『その時はお願いね』
「あいよ」
『それじゃゆっくりしていってね』
「ありがと」
見た目が変わってもさすがは妖精。
すぐに特定されたな。
かつて水を汲みに来て、迫害を受けている種族を見つけてうちの迷宮に誘致してからというもの、妖精の態度が思いっ切り変わったんだ。
あれからもう長いから、若い連中はその事を知らないみたいだな。
それでも彼女が知っていればそれで何とかなるから、特に宣伝するつもりは無いさ。
うっかり人族にバレたら面倒な事になる。
なんせ、かつて人族が争って狩っていた、レアな種族も保護したんだから。
それがバレたら神託無しに魔王認定されるかも知れない。
もっとも神の神託を騙ったら、それこそ神罰が下ると思えば自重するとは思うが。
人族の欲には際限が無いからなぁ、どうなるか分からんな。
まあ、最低でもうちの迷宮都市に軍隊が押し寄せる羽目になるかも知れん。
もっとも、そうなったら幹部連中が反撃する事になるだろう。
あいつらもかなり増えているから、そろそろ100体ぐらいになってはいないか?
なんせ迷宮の中では理想的な竜穴をシステムで構築するし、外敵も居ないから増え放題なんだよな。
そんなの簡単には叩けないだろ。
そういや以前、統括が派手な計画を立てていたな。
迷宮都市の緊急対策って計画書を見たけど、あれが緊急時に発動したら相当派手だろうな。
その計画とは、迷宮都市の外壁上に竜族がつらつらと一周して並ぶらしいな。
そうして全方面飽和攻撃とかするらしいぞ。
その時が来ない事を祈るしかないが、頼むぞ、人族。
くれぐれも攻めて来るんじゃないぞ。
包囲したら全滅するぞ、人族が。
◇
たっぷりと汲んだので、そのままマイ研究室の中に入る。
これってさ、登録場所さえ決めておけば、何処で入っても登録場所に出られるんだ。
つまりこれを利用すれば転移と同じような事になるんだよな。
ただ、行く時は使えないから帰りだけ楽々って事になる。
さてと、システムでの調薬をやりますかね。
誰も居ない研究室の中は静まり返っており、集中するには良い環境だ。
チビはあれからしばらく一緒に居たが、ログアウトの前に送り出しておいた。
今頃はコンタと一緒に過ごしているだろうが、仲良くなれたかな。
『最上級回復薬』
材料・竜汗苔・妖精水・得林木・殺人蜂の蜜・一角獣の唾液・単眼兎の血
効能・欠損を含む身体の回復
よし、完成だ。
これが普通に作った場合の効果だな。
これにチートが足されると、欠損どころか手足が吹き飛んで内臓破裂で瀕死でも全快するトンデモ薬になっちまう。
だから大量に持てば他の国が侵略してまでも欲しがるような事になるんだな。
献上の時には1本しか持っていかないのに、10本まとめて売った時は多分自慢したんだろうな、人族だから。
そうしてそれが命取りになったと。
ふむ、システムで作れば何も考える必要が無いな。
下手に集中して、また介入になったら困るので、注意を散漫にしないといけないぐらいだ。




