第九話 どうしてこんな事に?
あいつらを探すのを中止して、最寄の迷宮へと移動して、番人みたいなのをスキルでかわし、中に潜って迷宮管理スキルで通信する。
《おーい、ここの管理は誰だ》
《いきなりなんだ。お前も同類か》
《マウンテンマウスの……》
《失礼しましたぁぁぁぁぁ》
ああ、びっくりした。
いきなり大声出すなよな。
つまり、あるんだな、オレの迷宮が。
何だよもう。
元の世界かよ。
すっかり騙されたな。
幸い、友好迷宮連合の一員だったのでそのまま中継を依頼して、友好迷宮通信中継方式で遠距離通話をして配下に状況を説明し、当分戻れそうにないから自由に過ごすように伝えておいた。
やはりコンタは同行したがったが、今は無理だから我慢してくれと言っておいた。
思わぬ事で連絡が出来て良かったが、何でこんな事になっているんだか。
確かにつらつらと考えてみれば、VRゲームってかなり科学が発展しないと無理だよな。
だからもしかしたらそういうのがやれなくて、こういうのでお茶を濁しているだけだとしたら、世界を管理している存在が居るって事になる。
そいつが導入したのが異世界利用のVR風ゲームなんだろう。
空想に妄想が足されるような話だけど、異世界自体は存在しているんだし、迷宮を管理するように世界にも管理が居るってのが妥当な考えだ。
だって魔王認定は誰がやっているのかって話になる。
それこそが世界の管理じゃないかと思う訳だ。
そりゃ人族に言わせると神って事になるだろうけど、それは単なる名称だけの事だ。
世界にとって悪しき存在を魔王認定し、討伐の名の下に排除させようという試み。
これってそんなに荒唐無稽な話じゃないよな。
それにしてもこのゲームは良いんだけど、これからどうしよう。
確かにステータスはかなり反映されているが、限界値が設定されているようで、オールステータスMAXになっているんだよ。
しかもその限界値がそこまで高くなくてさ、とても知人の脳筋管理とは戦えそうにないんだ。
今出会えばあっさりと殺されるだろう。
確かにレベルを上げていけば改善されるかも知れんが、そうじゃなかったとしたら先の無いゲームって事になる。
そりゃ今の姿なら人類の敵じゃないだろうから、人族の中にでも平気で入っていけるが、別にオレはあの境遇に不満がある訳じゃない。
そりゃ当初は少し思ったが、この年月の中でつくづく人族の愚かさに愛想が尽きている。
それに比べるとまだしも、モンスターのほうがオレにとっては馴染み易い存在だ。
確かに立ち位置がそうだからと言えばそうかも知れないけど、それを差し引いても変わらない。
まあいい、とりあえず一度戻ろうか……《飛術……空間転移》
◇
「お前、今、急に現れたな。もしかして、転移スキルとかあるのか? 」
どうしてそんなに他人が気になるかな。
「何の事ですか」
「いや、今、急に現れたろうが」
「なんだなんだ、どうしたんだ」
「こいつよ、転移スキル持ちだぜ」
「おいおい、そんなの実装されたのか」
「言いがかりは困りますね。よそ見している間に移動してきた私に対してのそんな言いがかり。何かの意図を感じますよ」
「ははーん、お前、そういう手を使うのかよ。けどな、こいつは男だろ。それとも、そんな趣味なのか? 」
「そ、ちげぇよ。そんなんじゃねぇよ」
「ええええ、そんな趣味なの? パーティから出てってよ、気持ち悪い」
「だから違うと言っているだろ」
「そういえばさっき、お尻を触られたんだ」
「うわぁぁぁ、止めてよね」
「あれは単なる激励みたいなもんだろうが」
話題を転換させて対話の対象をずらし、気配を消して速やかに退去する。
ふふん、人族などこんなもんよ。
さてと、あいつらは何処かな。
あいつらに連絡しようとしたが、よく考えたらフレンドじゃないと通信できないぞ。
同類なら可能な通信術も、人族相手じゃ意味が無い。
◇
あちこち探してみるも中々見つからず、仕方が無いからあちこちの店を冷やかしながら、2時間ぐらいしてようやく見つけたものの、出会っても素通りしようとする奴。
「おーい、2-Cのカリスマ寝癖君」
「うおおお、誰だぁぁぁぁ」
クククッ、あいつ、朝にはいつも変な髪型でよ、付いた仇名がカリスマ寝癖ってよ。
「お前……誰だよ」
「はぁぁ、やっぱりかよ」
「その白衣姿、もしかして」
「ダチの顔を忘れたか」
「雰囲気が全然違うじゃねぇかよ」
「どうだ、イケメンに見えるか」
「女かと思った」
「ひでぇぇぇ」
「くっくっくっ」
「もう狩りには行ったのか? 」
「おうよ、レベル4だぜ」
「オレはまだ1のままだ」
「ならよ、一緒に狩りに行くか。ちょうど他の奴らも来ているんだ」
「攻撃に期待するなよ」
「判っているって」
待ち合わせ場所を聞き、雑貨屋で買い物をしてから行くと伝え、急いで買い物をする。
「お姉さん、この釘おくれ」
「あらあらお上手ね。それで何本欲しいの? 」
「手持ちが1000ベイダなんだけど」
「1本2ベイダだけど、何本欲しいの? 」
「それじゃ、500本欲しいです」
「900ベイダに負けておくわ」
「ありがとう、お姉さん」
「くすくす。また来なさいよ」
「うん、また来るね。本当にありがとう」
こんなAIとか、今の科学で作れるかよ。
さあて、気を取り直して、狩りに行きますかね。
途中、道端でひとまず武器の作成をしようと、件の毒薬の瓶に釘を浸して別容器に入れていく。
気分は暗殺者、なんてな。
500本の処置をして、容器のひとつを腰に取り付け、合流地点へと走っていく。
こぼれないとは思うが、落とすとヤバい代物だよな。
◇
ひーふーみーよー……
「やっほー」
「えーーー誰よ」
「え、男? 女? 」
「これは男でしょ」
「誰も特定してくれない」
「くっくっくっ、オレが悪いんじゃないだろ」
「カリスマ寝癖が煩いぞ」
「あんだよ、サンチノ」
「うえええ、山口君なの? 」
「リアルネーム禁止」
「あわわわわっ」
サンチノも止めてくれよな。
苗字が山口だからと、山口さんちの○○○君でサンチノって付けやがって。
「ダンマスと呼んでくれ」
「変な名前だな」
「そうかな、気に入っているんだけど」
「どうせならサンチノにしろよな」
「だったらカリスマ寝癖にしろよ」
「まあまあ、そんな事より狩りに行きましょうよ」
「「そんな事とは何だ」」
「あははっ」
「そう言えばダンマス君はどんなジョブなの? 」
「効いて驚け。こいつは死に職だ」
「え、まさか。でもその白衣は、やっぱりそうなの? どうしてよ」
「目指せ錬金術師」
「茨の道だとは思うがな」
ううむ、既に成っているとは到底言えんぞ。
それはともかく、皆で門のほうまで歩いていく。
そのうちパーティ申請が届き、イエスで加入になる。
「あれ、まだ1なの? 」
「こいつ、今から初だとよ」
「初で死に職って、寄生だよね」
「いいじゃねぇかよ。βじゃ誰も調べなかったいわく付きのジョブだろ。だからオレも先が知りたかったんだしよ、色々協力してやる事にしてんだ」
ますます言えんぞ。
それにしても、初の上級特典って派手なんだけど、こんなのもらっても良いのかな。
『マイ研究室』
別空間に設けられた貴方だけの研究室。
さあこれで何時でも何処でも研究が出来ます。
セーフティエリアにもなっていますので、ログイン・アウトも可能です。
野宿対策確保だぜ。
◇
「お前、さっきの奴。くそぅ、オレはあれで……」
ヒュッ……トスッ……
「今、何か……それよりさっきはよくも逃げやがったな」
「おいおい、オレ達のパーティメンバーに何いちゃもん付けてんだ、コラ」
「いや、そうじゃなくてよ。こいつが、うっ、何だ、これ」
お、効果が出たかな。
そいつは急に苦しみ出し、光の粒子になって消えていく。
「うお、すげぇ早業」
「いや、ちげぇよ、オレじゃねぇよ」
「まさか、近くにPKが」
「そんな赤い奴とか居ないぞ」
うげ、オレのネームは……あれ、赤くない。
もしやあの毒薬、システム外アイテムになっちまってんじゃねぇか。
だってゲームでの調べでは※マークで読めなかったし。
うわぁ、ますます売れねぇぇ。
弱ったな。
この分だと回復薬も同様になりそうだし、料理も下手をすると同様の可能性がある。
そうなると金が稼げない訳で、禁断の元の倉庫に頼るしかなくなるぞ。
もっとも、あれに頼れば金策の必要なんか無いんだけどね。
歩きながら小石を拾っていく。
さっきの事があってから、周囲を警戒しながら移動していく面々。
なので自然と移動速度が落ち、小石を拾いながらでも付いていけている。
拾った小石はそのままアイテムボックスに入るから、ドンドン拾っていく。
確かに釘は大量に買ったし毒薬も塗ったけど、あれは対人用だ。
対PKの武器なので、そんなのをモンスターに使いたくない。
大体、殺さない為に小石を拾っているんだ。
恐らくオレがまともには戦えないと思っているだろうから、タゲ取りに専念するつもりだ。
小石で注意を引くぐらいでも文句は恐らく言わないだろう。
これぐらいで勘弁してくれよ。
配下に同様の奴らが居るオレだしさ、殺したくないんだよ。
ヒョイ……ギャウン。
「お、投擲か」
「攻撃スキル、それしかない」
「たはは、さすがは学者だな。よし、もっとけん制頼むぜ」
「あいよ」
少し強かったな。
もう少し弱めに。
ヒョイ……キャウン。
うん、これぐらい軽く投げると、痛いぐらいで終わるか。
結局は殺されるにしても、直接は殺したくないよ。
あーあ、参ったなぁ。




