実りの秋にしましょう!
雨乞いの一件の翌日、私は気合を入れて森さんの元へ行く。
「森さん!さっそく新しい作物を作りましょう!!」
「えっと・・・新たな作物、ですか?」
唐突な私の申し出に森さんが首を傾げる。
槙さんの管理する土地で感じたことは感じたこととして、とりあえず一度言い出したことを実行しなければ気が収まらないわけだ。
食文化の改善っていうのは、今あるものを工夫するって意味もあるけれど、新しいものを作りだすっていう意味もある。
というか、ホットケーキが主食って・・・いえ、いいんですけどね?おいしいし。アレンジもあるし?
でもね、楓の国っていうだけあって、メープルシロップオンリーなんですってよ!?
さすがにあきると思うの!!ね?そう思いません???
「ええ、フルーツ類とナッツ類を大量に!」
食に対する飽くなき追及・・・ビバ!日本人!!!
はっ、少し興奮しすぎたようで。
森さんがちょっとばかり引いているように見えるけども気にしなーい。もう、ホットケーキを昇華してパンケーキにしてあげよう!―――え、違う?
と、それはともかくとして、苗木を大量に用意しての宣言はさすがの森さんもびっくりした模様。ごめんなさーい。
「作物が増えるのはとても良いのですが・・・現在、作付けできる土地は限られていますが・・・」
「ああ、なら、1本の木にたくさん生るようにします・・・ん?」
“現在”作付けができる土地が限られているって言った?
カクン、と首を傾げた私の疑問に気付いたのだろう。森さんが困ったように笑った。
「槙と一緒に行っていただいた場所は干上がったのですが、他の場所は常に雨が降っていましてね・・・根腐れをおこしてしまうんです。菌類でさえも育てるのは難しいくらいなんです」
なるほど、これも斜陽する世界の弊害と言えそうだ。
「じゃあ、そこも作物が育つ環境にしちゃいましょう!!」
ニッコリと笑って言えば、森さんはほんの少しの間呆けてから、目元を緩めた。
「夢未様は、何でも叶えてしまえるんですね」
「コトノハ使いですからねぇ。でも、簡単に叶えられないものもあるんですよ」
「ほう、そうなのですね」
例えばだけれど、カナン様から力の供給が途絶えて久しいこの世界を、一気に直すなんてことはできない。
確かに私は眷族の証である手の甲の文様から力の供給を受けているけれど、私に与えられている力はカナン様の力の一部であって、カナン様自身の力に比べたら赤ちゃんみたいなものだから。
我ながら使えないなぁとは思うけれど、コトノハを使えばある程度の望みは叶えられるわけだから、それでなんとか誤魔化しながらこの世界を改善していくしかないのだ。
「もどかしいですけど、一気にこの世界が抱えている問題を失くすなんて荒技は無理なので、こうして各国に顔を出して問題点をお聞きしてるんですよ」
そう言えば、森さんは納得した様子で頷き、次いで苦笑いをうかべた。
「理解しました。・・・他の国からも早く巫女姫様を寄越せとせっつかれていますし、長期間夢未様を独占するわけにはいかないようですね」
「あらら~、じゃあ、じっくり一つの国に留まって問題改善に取り組むより、短期間であちこちに訪問して問題点を直していくっていう方法が良いのかもしれませんね~」
崩壊へと突き進んでいる影響はあちこちに出ているから、確かにどこか一国だけ重点的に直すというわけにもいかないのはわかっていたのだけれども。
急を要する問題もあるかもしれないし、これは腰を落ち着けてる暇はなさそう。
「まずは、作付けできる土地の開拓、ですね」
「そうですね!!私、頑張りますよぅ!!」
カナン様が私にコトノハを授けた意味がやっとわかった。
時間をかけている場合ではなく、即効性のある力でないと対応できないから、コトノハという言葉によって望みを叶える力を与えてくれたのだ。
使い方によっては恐ろしい力だけれど、悪いことには使えないっていう制限を設けてるし、私が“利用される”ことだけはなさそうなので一安心だ。
さぁ、ここからは急ピッチで作業を開始しなくちゃね!!




