四季の世界の住人と創造主様との距離をしりました
さて、氷室の件についてはこのままここにいる私達だけで決められるものでもないよね~。ということで、霧矢さんをナビゲーターにして桜の国の散策。
海斗さんも桜の国には何度も来ているようだけど、ちゃんと見たことはないらしいので、一緒に散策することになった。まぁ、2人より3人の方がより楽しいだろうしね!
「あー・・・なんだろうなぁ、このほんわかな感じ」
海斗さんが呟く。さすがに常春の桜の国でカフィエは目立つし、むしろ暑いし、で脱いでいる。
サラサラとした黒髪は・・・たぶん、海藻類をたくさん食べてるからですねー。あっはっは・・・。
じーっと海斗さんを見ていたら、ん?と笑顔のまま小首を傾げる。――うわー・・・なんで成人男性なのにこの仕草が似合うの??
「――桜の国は幸せいっぱいなんですよ」
そう答えてあげれば、納得した様子で頷く。
「ああナルホド・・・でも、痩せてんな・・・」
うん。見るべきところは見ているようだ。
桜の国の食糧事情は他国でも有名らしい。まぁ、そりゃそうだよね、他3国をまかなっちゃうくらい輸出してるんだもん。桜の国は大丈夫か?!と心配するのは当たり前だよね。
海藻とほんの少しのホットケーキで満足って言うんだから驚愕の事実だと思う。
「食に対する欲が薄いんですよ・・・」
霧矢さんがポツリと言う。そうだよね・・・普通はお腹空いたって思ったら、もうちょっと行動があるはずなのに、食べれないならそれでいいや~みたいなところがあるんだ。
「まぁ、うちも貪欲、とまでは言わねーけどさ・・・桜の国は異常だぞ?」
「わかってますよ・・・私はね」
まぁ、霞さんに言ってものれんに腕押し状態だから、他国の王族も言うに言えなかったんだろうなー・・・。
「女王陛下が理解してないってのがマズイよな・・・つーか、お前等王族ですら平均よりは痩せてるだろ」
「・・・まぁ、我が国は食事は1日に1回ですからね・・・王族である私達はお客様がいらっしゃる時は会食もありますし、間食もしてますからさほど気になりませんが」
「・・・・・・わかってるはずの霧矢がこれだもんな・・・巫女姫サマも驚いたろ?」
「ええ、まぁ」
1日1回の食事・・・まぁ、増えるわかめとホットケーキじゃ・・・しょうがないような気もするけど。
「海の国は・・・」
「1日3食、キッチリ食ってるぞ。じゃねぇと暑さにやられて倒れちまう。・・・まぁ、魚づくしだけどな」
そうだよねー、ちゃんと食べて体力つけないと・・・毎日猛暑日じゃ倒れちゃうよね・・・。
「3食ですか・・・あっと言う間に国の食糧庫が尽きますね」
「――――――そういう理由もあるか」
溜息をもらす海斗さん。とはいえ・・・。
「氷室さえ作れれば、海の国との輸出入が五分五分になりますし!食糧事情は改善しますよ」
「だよな。貰ってばかりだった海の国から輸出できるなら・・・少しは桜の国の食糧庫も余裕ができるだろ」
余裕があるなら・・・少しは食べるようになるよね?意識改善とかも必要なのかな・・・?
「ちなみに、調味料って塩と砂糖とかだけですか?」
香辛料って無いのかな?
「塩と砂糖と・・・味噌と醤油はあるな。味噌と醤油の醸造は楓の国がやってるぞ」
うん、さすが元ネタ日本。・・・味噌と醤油は絶対ですよねー・・・。
「香辛料は?」
「・・・コウシンリョウってなんだ?」
きょとんとして海斗さんが首を傾げる。
調味料はあって香辛料はないのか!!!・・・はぁ・・・カナン様、中途半端だなぁ・・・まぁ、男の人だし、料理は作らなそうだもんねぇ・・・。
「えーと、ハーブとか・・・」
「ああ、ハーブのことを香辛料って言うのか?」
「ハーブだけじゃないですけど・・・まぁ、概ね?」
「ハーブなら楓の国だな。薬草園にたくさん生えてるぜ」
あー、そうか。香辛料じゃなくて、お薬扱いなのね・・・。
「桜の国にもいくつかハーブはありますよ」
霧矢さんがそう言って補足する。そうだよね。春だもんね!ハーブは春野菜にも含まれているはず!!
「どんなハーブがあるんですか?」
「パセリとバジルですね」
おお!いたりあーん・・・って違うわっ!――まぁ、お料理には使えそうだよね。
「ちなみに、どのように使ってますか?」
「パセリもバジルも神力・魔力疲労によく効きます」
くーすーりー・・・ですよねー。
「お、お料理にも使えるって知ってました?」
「いえ。そのままバリバリ食べると神力・魔力が回復するので・・・」
ワォ・・・豪快な食べ方~。やっぱり食に楽しみをとか工夫をっていうのはある程度余裕がないと無理かもしれない。
神力と魔力・・・神官と術師の違いかな?
「神力って神官の力で、魔力って術師の力ってことですか?」
「ええ、その通りです。ソレが無くなると術式が全く使えなくなります」
うーん、なるほど。
「倒れたりはしないんですか?」
「・・・生命力で補てんしない限りは」
あー・・・そういうのもできるのね・・・危ない。
「できる限り生命力での補てんはしないようにって国としてもふれを出してるがな。・・・まぁ、今のところ、重篤者は出てねぇよ」
海斗さんがフォローすれば、霧矢さんもコクコクと頷く。
「ならいいんですけど・・・そういうの創造主様は嫌うので、本気でやめてくださいね?」
カナン様が聞いたら激怒するかも。自分はバリバリやるのにね。―――まぁ、不死身みたいなものだし、生命力削ったところで全く心配はいらないんだろうけど。
「創造主様が・・・」
「そりゃ、更にふれを出した方が良いな・・・創造主様に嫌われるのはマズイだろ」
霧矢さんと海斗さんの顔色がサッと青ざめた。この世界の人々はカナン様との距離が近い。物理的じゃなくて精神的に。
カナン様のお気に入りっていうのもあると思うけど、この世界の人々が創造主という存在をしっかりと認識しているんだよね。
この世界を創った人~とかいうぼんやりとしたイメージじゃなくて、この世界を創って、見守り、導いてくれる存在だって感じている。
この世界の1人1人、自分がカナン様の創造した存在だって知っているっていうのは、本当にすごいことだと思う。
だからこそ、なんだろう。カナン様に見放されたら――生きていけないっていう考えに直結するのは。




