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ゼロ
寒い、と感じた。
それまでの私は胎動するゆりかごの中に浮かび、暖かさのみを与えられながらたゆたっていた。
急にその場所を追い出された。
肌に触れる外気は冷たく、その直後に浸された液体は熱い。
私は地獄という概念を知った。
そして同時に、独り、という概念を知った。
自己と他者を分ける境界面を知り、そのどうしようもない隔絶に絶望した。
ここは暖かくない。帰してください。私を、今までの場所に帰してください。
私は泣きわめいたが、願いは聞き届けられなかった。
これが、私のもっとも古い記憶である。
御読了いただき有り難う御座います。