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春に奏でる  作者: よっち
18/18

ゆき 5(終)


 日野さんのお母さんが落ち着いた頃、学年主任の先生が戻って来た。

二人で玄関まで見送ると、日野さんのお母さんは深々と頭を下げて帰っていった。



「………。」

「…………。」

「…聞いてましたよね…?」

「……俺は悪くないぞ。俺はすぐに戻るって言ってたからな。」

「まぁ…、なかなか時間かかりましたもんね。」

「あぁ…。誰か来たら責任問題になるかと思って、ヒヤヒヤした。」

「廊下で待機していてくれて助かりました。」

ペコリと頭を下げる。

「あぁ…。でも良かったのか?お前と繋がる神社の名前教えちゃって。」

「大丈夫ですよ。うちの宮司は優秀な方なので。」


上手く対処してくれるだろう。

どうしょうもならない時は俺が祓うかあの子の性格を封じれば良いからな。これは最終手段だけど。


「先生、さっきも言ったけどこれは俺の秘密です。よろしくお願いしますね。」

先生は顔を引き攣らせて、

「分かってる。生徒を守るのは俺の仕事だ。」

じっと見つめると、

「だからそんなに圧をかけるな…。」


圧をかけたつもりはなくて、そんな事を言う先生に会ったことがなくてびっくりして見てたんだけど、まぁ、いいか…。


「それより、隠したかったらあれ、どうにかしろよ…。」

「あれ、ですか…?」

「お前動画が上がってただろ。」

「あぁ…、びっくりしてます。先生よく知ってますね。」

「うちの孫がな…。カッコいい人見つけたとか言って見せてきた……。」

「………すみません…。」

「…調子乗んなよ…。うちの孫はやらねぇぞ…。」

「いりませんけど…、ちなみに何歳ですか?」

「…5歳だ…。」

「……爺バカですか…。その件ですが、関係者に動いてもらっているので……、どうにかなるでしょう……?」

「なら良いが、ああいうのは消えないからな…。無許可で乗せられたのか?」

「いや…、そこの神社のホームページにあげる話は聞いてましたけど…。」

「そうか…、難しいな…。気を付けろよ。今の世の中何があるか分からないからな。」

「はい。ありがとうございます。」

「…ところで…、あの…、あの子は何なんだ…?」

「あの子ですか?」

誰の事だ?

「ほら…、あの子だよ…。ほら。」

「?」

「ほら、分かってるんだろ?ほら!」

「誰の事ですか?」

「……〜ほら!あの!可愛い!」

「ゆきの事〜?」

ポンッとゆきが足元に現れる。

「…………」

先生はまじまじとゆきを見て、

「…そう…、君の事だ。」

デレッとしながら言った。


強面の先生なのに猫が好きなのか…。


「なんかねぇ、ゆきを呼んでるのかなぁって思ってたんだ。もう、ご主人ってば!勘が悪いよ!」

ゆきを抱き上げて謝った。

「その子は何だ?猫か?消えたり現れたり…。」

「ゆきはねぇ、ご主人の相棒だよ!ねぇ、相棒って知ってる?知らないなら教えてあげようか?」

ゆきは相棒を気に入ったようで使いたくて仕方がないみたいだ。しかし、先生はデレッとしながら、

「そうだな、教えてくれるかい?」

「相棒ってねぇ、ご主人を助ける立派なゆきの事だよ!」

「「…………」」


どうよ、うちのゆきの可愛さは!





「授業中なんですがねぇ…。聞いてます…?」

「…あぁ、まぁ待て…。」

「何の為に此処に来たんでしたっけ?」

「…あぁ、まぁ、待て…。」

「…………。」



現在、俺は進路指導室にいる。目の前には人目も気にせずゆきを撫で続けている男がいる。

何かあった時対処出来るように詳しく話せと言われ連れて来られたが、本当の目的はゆきだったんじゃないかと、俺は疑っている。

「…猫…好きなんですね。」

「……あぁ、だが怖がって近寄ってもらえん…。」

「………。」

「孫と猫カフェにも行ってみたが猫が怯えてパニックになった…。孫からはもうじいじとは行かないと泣かれた。」

「………。」

「長年の夢が叶ったんだ。もう少し待ってくれ。」



「ふぅ…良いぞ。話を聞こう。」

「……ありがとうございます…。」

俺は改めて、俺の事、動画の事、日野さんとの関係に、神社としての対応の話した。

「あぁ、分かった。ならば学校としては学校にかかってきた電話には知らぬ存ぜぬで対処する。生徒達にもさり気なく個人情報の流出は裁判沙汰にもなり得るから控えるように周知させる。」

「ありがとうございます。」

「お前、あの親御さんへの対応が慣れてると思ったら既に神官として働いてたのか……。」

「見習いです。」

「この先は神官の資格取るために大学行くのか?」

「まだ決めてないんです。このまま叔父さんに甘えて良いのか、別の世界に行くのか…。」

「そうか…。お前には神官としての素質があると思うよ。ゆきの事だけじゃなくて対面した相手を落ち着かせる雰囲気があるからな。良い神官になると思う。でも違う世界が見たかったらそこに飛び込んで行っても良いと思うぞ。その後でも神官の資格は取れるからな。もうすぐ二年生になる。選択授業が始まると進路の幅が狭くなるから、考えておけよ。」


最後本当に進路相談になった…。


「ありがとうございました。」

「おぅ。まぁ…あれだ…。何かあったら相談に乗るからゆきを連れてまた来い。」

「……ありがとうございます…。」

「おう。必ず来いよ。」





 あれから俺は大人しい男子、改め、キレたら怖い男子と認識されたようで、距離を取られるようになった。


でも今までと特に変わらないかな……。


仲良くしてくれる子はいるし、味方になってくれる子もいるから概ね順調だ。 

あれから日野さんは大人しい。俺とは絶対視線が合う事がない。日野さんの周りの子達ともだ。


平和になって良かった。


ただ偶に何かに怯えるような仕草を見せる。

今も姿を消したゆきとこっそり遊んでいて、ゆきが鳴き声をあげると…。日野さんのお祖母さん何したのかな……?





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ご主人、寝た?」

返事がない。寝たようだ。


よし!


僕は偶にご主人を虐めた女の子を見に行っている。


女の子の魂は汚い色をしていてちょっと気持ち悪い。それに比べてゆきのご主人は青色の澄んだ綺麗な魂なんだ!流石ご主人!


僕を作ってくれた神様も青色のとても綺麗な色をしている。だからご主人の側はとっても落ち着く。

そんなご主人を虐めたあの子を見に行くと、あの子のお祖母さんのトメばあとよく会う。

トメばあはしょっちゅうあの子に罰を与えている。今日も罰を与えられて、お母さんに八つ当たりしたみたいだ。


もう呪っちゃっていいんじゃないかと思う。


呪うのはもうちょっと待てとトメばあに言われたから待ってあげるけど、この子のご主人に対する執着が気持ち悪い。


だから今日はこのゆきがトメばあに協力してあげようと思ったんだ!



夢の中に入ってみると、夢の中でゆきのご主人を叩いて虐めてる!


な、なんて、嫌なやつなんだ!!ゆきの大切なご主人を!ご主人を…!じわっと目が潤んじゃったけど

僕は無我夢中で戦った。

大切なご主人を守る為に頑張った。

まずは”フシャー!“と一鳴きして飛びかかってやった!

顔をめちゃくちゃに引っ掻いてやって、ご主人を叩いてた手を思いっきり噛んでやった!


「痛い」とか「止めてよ」とか言ってるけどご主人にやった事をゆきがやり返してるだけだもん!

ご主人の事を笑いながら叩いてたもん!

だからゆきも止めてやんないんだからな!!


女の子が泣き出した辺りでトメばあが笑ってゆきを抱っこした。”もう良いよ“って…。


トメばあが、「私がやるより反省するかもね。偶に手伝っておくれ。」と言うのでまた来る約束をして今日は帰った。


その日は帰ってからご主人の布団に入り込んで寝た。ちょっと嫌な気持ちが軽くなった気がした。



そんな感じに偶に見に行って”フシャー“ってして帰ってきてご主人に甘えて、また”フシャー“ってして…を繰り返している。


偶に夢じゃないのに女の子がご主人を嫌な目で見てる時があるからご主人に内緒で”フシャー“ってしてやる。

ビクッて青い顔をするけど、ゆきは知ってる。


こいつはまた同じ事をやる……と。



ご主人、大丈夫だよ!ゆきが守ってあげるからね!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




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