自分のことを真に理解してくれる相手はあの子だけ
「ワタシ、ドスレバイイ?」
「……カンタン。ジブンノヤリタイヨウ、スレバイイ」
アリエスはマルクの悩みをぶった切った。
悩みすぎるマルクには、楽観的な考えを持つアリエスはとても魅力的に映った。
ニコニコと笑うアリエスの顔を見ていたら、マルクは悩んでいたことが馬鹿らしくなり、綺麗さっぱりと女性であることを選んだのだ。
性転換手術は受けずに、心だけが女性のままでもいいとマルクは思った。
「マルクラシクアレバ……ソレイイ」
アリエスの言葉は、マルクをどんどん変えていく。
自分を変えてくれたアリエスに、マルクはその場で告白した。
「ワタシト、ツキアテクダサァイ」
「ラバーズ?」
「イエス」
「……ウゥ……」
マルクのことを嫌いではないアリエスは、突然の告白に嬉しがりながらも戸惑っていて、悩んでいた。マルクは彼女らしくないと言う。
すると、アリエスは怒って、
「ワタシノ、ナニワカル! シッタフナ、クチキクナ!」
姿を消してしまったのだ。
それ以来、小学校生活は一転して地に落ちてしまい、マルクは学校を転校した。
大好きな親友、アリエスと離れ離れになった。
それからというもの、マルクは男らしくあることを決め、中学校からは女装もやめ、女性の言葉遣いもやめた。
全ては、初恋の相手であるアリエスを忘れるために。
顔立ちがいい方で、頭も良かったマルクは、かなりちやほやされた。
友人にも恵まれ、快活でリーダーシップを発揮していった。
しかしそれも長くは続かない。
マルクの昔のことを知っていたクラスメイトが、マルクの噂を流し始めた。
モテモテだったのに、女子からは蔑視され、友人もいなくなり、独りぼっちになった。
またどん底に落ちてしまったのだ。
その時、マルクは悟る。
友達なんて、所詮赤の他人なのだと。
「ワタシノコト、ワカテクレルヤツ、イナイ……」
男らしくすることに嫌気が差したマルクは、男子トイレで泣いていた。
そこでふと思い出す。
自分のことを真に理解してくれているのが誰かを。
「……アリエス……」
黒人と呼ばれるアフリカ系の少女。
アリエス・ボングに会いたいと、マルクは思ったのだ。
あの子ならば、自分のことを受け止めてくれる。
だが、アリエスとは喧嘩別れしたまま、一度も連絡を取っていない。
もう呆れられて、嫌われているだろう。




