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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅱ 白と黒

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性同一性障がい


「こんなところにやって来る人はいないのですか? 禁断の愛。禁断の果実。それをしたことがない人は逆に少ないんですよ。胸に秘めているだけで……みんなやりたいんです。だからもっといっぱい愛を語り合いましょう!」

 アキヤは手を広げ、空を仰ぐ。

 誰もいないので好き放題やっているのだ。

「虚しいです……」

 がっくりと項垂れるアキヤ。

 暇を持て余しすぎて、仕事をする気が起きないらしい。

 今日はもう来ないかと思われたその時、一人の男性がやって来た。

「エクスキューズミー」

「これはこれは……アメリカンな方ですね。日本語は話せますか?」

「オーケー。ニホンゴ、ハナセルゥ」

「テンションが微妙に高い方です。どうぞ、座ってください」

「センキュゥ」

 アキヤは洗礼の儀式を執り行う。

「今ここで汝の罪は洗い流されることになろう」

「ムツカッシイ……」

 古き良き日本語がわからないアメリカ人女性は、眉根を寄せた。

「そこは泣いて喜ぶ場面ですよ。ありがとうと」

 アキヤはそう言って、クスクスと笑った。

「ヒトワラウ。ヨクナイ」

「ふふ。日本語は難しいでしょう」

 アメリカ人に咎められても、アキヤは特に気に留めることなく笑い続けた。

 アメリカ人の話はさして長くもなく、意外にも簡潔にまとまっていた。

 言葉はいまいちだが、話し上手であったのだ。

「あなたのお名前、教えてください」

「マルク・シーザー」

「わかりました。私はアキヤです。では、マルクさん。また何かあれば来てくださいね」

「ワカタ。アリガァ、トゥ」

 マルクは両手をぶんぶん振って、投げキッスをしてから去っていった。アキヤは思わず苦笑い。


「……マルクって……女性の名前?」


 アキヤの疑問は正しかったようで、のちに連絡して話を聞いてみれば、マルクは元々男性だったようだ。

 自身のことを女性と信じて疑わなかったと言っていた。

 しかし恋愛対象は女性だそうだ。

 女装をして女性らしくしているだけで。

 それらの情報で、ぴんと来た。

「なるほど。性同一性障がい……ですね?」

 アキヤはそれから長々と持論を語る。

「しかし、障がいという言葉はおかしなものですね。現代では、受け入れる姿勢が増えてきましたよ? それでもまだ障がいという言葉が残っているとなると……。誰かに迷惑をかけているわけではないではありませんか。少なからず私はそう思いますけれどね」

 アキヤはそう言いながら自室に行った。

「今日のお話はちょっと危ないですね。昔ならば戦争になってしまうかもしれませんよ」

 ドアを開いて、アキヤは間を置いた。


「白人と呼ばれた人と……黒人と呼ばれた人の……愛なんですからね」

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