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レジェンドオブアストラル  作者: ゆきみだいふく
プリンセスナイトと異能

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プリンセスナイトと頼み事

 櫻川丘市内に建てられた、異能組織『デウス・エクス・マキナ』の仮設支部。その一室では、モニター越しに報告を行う『感知』の異能者、ルチルの姿があった。


「申し訳ありません。ターコイズ様!!」


 ルチルの監督不行き届きがあり、ジェントルとサンゴは勝手な独断行動のせいで二人は捕まってしまった。


『ふむ。その報告から察するに、神原真白は『陰陽術師』である可能性が高いな。となると、白い烏と幼子は『式神』で白い猫は『妖』という存在やもしれん。それならジェントルとサンゴが敗れたというのも道理……。ランクBたる、彼らにはその存在は伏せられているからな』


 異能組織『デウス・エクス・マキナ』の創設者にして最高責任者であるターコイズは、すぐに答えへと辿り着く。ターコイズの言葉に、ベリルとトルマリンも納得し頷いた。


 彼らがすぐに理解を示した理由は、『陰陽術』の存在を知っていたためである。彼らだけでなく、『陰陽術』や『魔術』の存在は組織自体が認知していた。しかし、その事実を知らされているのは、ランクA以上の称号を持つ異能者と一部の構成員だけである。

 そのため、ランクBであるジェントルは、真白の陰陽術に最後まで気付くことができなかったのだ。


『『異能』よりも劣る……『術』によってランクBの異能者2人を倒すとは、神原という少年は相当な術師のようですな』

『ベリル、『術』は『異能』と違い、多彩な現象を引き起こせる。高ランク異能者がこうして幾度も敗れているのが現状だ。いい加減、古びた驕りを捨て目の前の現実を見て、判断すべきときではないのかね。』

『はっ、申し訳ありません』


 『異能』の優位性を知るが故に『術』を侮る発言をしたベリルを、ターコイズは叱責した。


『話を戻すとしよう。ルチルよ、彼らが陰陽術の使い手であると判明した以上、その地を護る術師らとも、何らかの繋がりがあると、見るのが妥当だろう」

『これ以上の深追いは、リスクが大きすぎるということ?』

『そうだ。気になることは多々あるが、あくまで我々の最優先すべきは、『結合』の確保……。今から目標を彼女一本に絞り、確保次第、仮説支部を放棄……対象を連れ、即刻離脱しろ。後のことは、本部の者が引き継ぐ。やれるな?』

「はっ! 必ずや、ご期待に応えてみせます!」


 頭を下げるルチルの姿に、ベリルとトルマリンは満足げに頷く。


「おおっ……すご〜い」


 昨日の戦いで習得した異能、『溶解』をさっそく試してみた。

 水瀬家に行っている間、雅はジェントルとサンゴを警察署まで連れていった。


「む、何をしておるのだ?」

「ちょっとリンゴジュース作ってみたんだ。昨日の戦いで『溶解』っていう異能を習得できたから、それ使ってみたんだよ。そうだ。アイ、変なメールを送ってきたノノミさんって人の件いいかな?」

「……」

「あれ? アイ……アイ?」

「……」


 返事がない、ただのスマホのようだ。


 少し前。


「キョウヤくんキョウヤくん」

「ん? ノノミ、どうした?」

「昨日、神原真白くんにメール送ったんです」

「例の高校生か、それで?」

「返信こないので、気になって調べてみました」

「ああ、それで?」

「そしたらですね。メールを読まれてはいたのですが、スルーされていました」

「……さてと、どうする?もう一度メールを送るか?」

「やめときます、また勘違いされちゃいそうです」

「そしたら、どうするんだ?」

「スマホハッキングして、画面いっぱいにメッセージ映し出します!」

「ノノミ……」


 キョウヤがあきれた直後、ノノミはものすごい勢いでキーボードを叩き始めた。


「ちょっ、ノノミ待っ……」

「ハッキング、せいこー!……あれ?」


 キョウヤが止める間も無くハッキングを仕掛けたノノミは、気の抜けた声を漏らす。

 アドレスを確認するためにハッキングを仕掛けた際とは、異なる違和感を感じたためだ。


「あれ? おかしいです。侵入したというより、招かれたような気がします……」


 次の瞬間、ノノミが操作していたPC画面いっぱいにメッセージが映し出される。


『コンニチハ。オ邪魔、シマス』

「!!??」


 そのメッセージを見たノノミは、戦慄を覚えた。


 ノノミの持つ『電脳』は、意識を電脳空間へと接続し、オンライン状態のあらゆる機器へ侵入、操作できるという異能である。

 しかし、同じ異能を所有している者は、『デウス・エクス・マキナ』にも多く存在する。ランクAの『電脳』を持つノノミには遠く及ばないが、彼らも意識を電脳空間へと接続できるのだ。

 そんな彼らの侵入を阻む対策を、ノノミはPCに施している。自らの異能とプログラム技術を駆使した特別製の防壁を、PCに張り巡らせているのだ。

 たとえランクBにハッキングを仕掛けられようとも、数時間は持ちこたえられるほど強固な防壁である。


 だが、画面いっぱいにメッセージが映し出された事実は、その防壁が破られた事を意味していた。


「防壁が、一瞬で突破されました! キョウヤくん、手伝ってください!ハッキングされてます!」

「なんだと!?」


 ノノミと同じく『電脳』を使用できるキョウヤは、PCに張られた防壁の性能を理解している。そのため、「一瞬で突破された」というノノミの言葉の意味を、考える間も無く理解したのである。


(あっちにも、ランクAの『電脳』がいるのか!?)


 キョウヤはPCに触れ、ノノミと共に電脳空間へアクセスする。


『キョウヤくんは防壁を修復してください!』

『わかった。周囲の警戒は中断して、ランクB相当の『電脳』でサポートする』


 現実との体感時間のズレに体を慣らしつつ、侵入者が潜んでいる空間へと2人はたどり着いた。

 そして、その場にいる人型の電脳体を目にし、ノノミは確信する。


『やっぱり……『電脳』の異能者みたいですね』


 2人の目の前には、三頭身の人型電脳体が立っていたのだ。全身が真っ白で、黒い点のような目が2つだけついた姿をしている。

 そんな電脳体をキョウヤが睨みつける中、ノノミはある疑問を感じたのだった。


『あなたの、目的はなんですか?』


 ノノミは、白い電脳体へと問いかける。

 その疑問を真っ先に感じた理由は、白い電脳体がPC内で何もしていなかったためである。

 ノノミ達がいる位置情報を探るわけでも、何かを探しているわけでもなく、ただ周囲のアイコンを眺めているだけなのだ。


『目的ハマスターニ合ワセルコトデス』

『マスターって神原真白くんのことですか?』

『ハイ、ソウデス』

『あなたの名前は?』

『ボクハアイデス』


 相手の目的はわかったが電脳体相手に警戒は緩めない。


『あなたは、組織の異能者ではないんですね?』

『ハイ、ボクハ『デウス・エクス・マキナ』ノ組織ジャアリマセン』

『ノノミ、どうする?』

『神原真白くんに合わせると言っていましたが、キョウヤ、念のため防壁はお願いします』

『まかせろ』


 ノノミとキョウヤはいつでも対応できるようにしておく。


『メールヲ送ッタノノミサンデスカ?』

『私がメールを送ったノノミです』

「マスターをヲ読ンデクルノデ少シ待ッテイテクダサイ』


 そういうとアイは一旦現実の方へと戻った。


「ノノミどう思う?」

「意図が読めませんが向こうは私達に会いたがっているみたいですね。ですが、何があるかわからないので引き続き警戒はしましょう」

「……ああ、そうだな」


 アイは現実に戻ってきた。


『マスター、少シイイデスカ?』

「アイ、戻ってきたんだね。どうしたの?」

『昨日、メールヲ送ッテキタノノミサンヲ覚エテイマスカ?』

「いたね。昨日のドタバタですっかり忘れてた」

『ソノ、ノノミサンカラハッキングヲ受ケマシタ』

「ええ……それって大丈夫なの?」

「『問題アリマセン。ソレヨリノノミサンにオ会イシマスカ?』

「うん、そうだね。僕はどうすればいい?」

『デハ横ニナッテ僕ニ触レテクダサイ』


 ハッキングのことは気になるがアイに言われるまま、横になってアイに触れた。


『デハ行キマス』


 一瞬意識を失ったが目を覚めた時には電脳空間のような世界に来ていた。

 アイコンがあるだけで不思議な空間だった。

 電脳空間にはアイらしき三頭身の人型電脳体が立っていた。全身が真っ白で、黒い点のような目が2つだけついた姿をしている。

 それと眼鏡をかけた女の人と少し怖そうな男の人がいる。

 妙にピリついた雰囲気を感じながら真白は緊張しつつ恐る恐る話しかける。


「あのー……すみません。僕にメールを送ってきたノノミさんですか……?」

「はい……そうです。貴方が神原真白くんですね?」

「あっ、はい。そうです、隣にいるお兄さんは……?」

「俺はキョウヤだ」


 二人は名乗ってくれるが、警戒を緩めない。


「私は組織が櫻川丘に潜伏していると情報を聞いて、組織内部にハッキングを行いました。そしたら、報告書にあなたと宇宙人の存在を知りました。そこでその強さを見込んでお願いがあります」

「……お願いですか?」

「はい、一葉くんと叶魅ちゃんと皐月ちゃんの三人を組織から守ってほしいんです」

「もちろんです。任せてください」

「即答ですか……。本当に引き受けてくれるんですか? まだお願いしかしてないですよ。お礼もなしに」

「はい、だって叶魅さんとは友達ですから。それにそんな話を聞かされちゃ見過ごすってわけにもいかないですし、組織に狙われているなら、三人共捕らわれると大変なんですよね?」

「ああ、そうだ。どこまで知っているんだ?」

「『デウス・エクス・マキナ』って組織は神になって世界を支配するんですよね。ジェントルさんって人を捕まえて聞きました」


 真白は組織の目的を聞いてしまった以上、一葉と叶魅と皐月を守るつもりでいた。


「話が早くて助かります。一葉、叶魅、佳織の三人が組織に捕まると最悪なことになります。ですので、神原くんどうかお願いします。三人を守ってください」

「この通りだ頼む!」

「はい、必ず三人を守ってみせます」


「ノノミとキョウヤが頭を下げて頼み込んでくるので真白は力強く頷き、必ず守ると宣言した。


「ありがとうございます。お礼は必ずしますので」

「別にお礼なんていいですよ。組織には色々と借りがあるので」

「いいや、お礼はさせてくれ。神原には全てを任せることになる。もちろん、もしも何かあったら、俺も出る」


 真白はノノミが持つ異能がどういうものなのか観察してみた。『電脳』。意識を電脳空間へと接続し、オンライン状態のあらゆる機器へ侵入、操作できるという異能みたいだ。

 なんだかVRに似ている。


「神原くん、三人のこと頼みます」

「よろしく頼んだ」

「任せてください」


 真白は引き受けて、アイにより現実へと戻ってきた。


「真白くん、大丈夫?」

「ん、大丈夫」

「ご無事で何よりです」

「それでハッキングを行った者達は?」

「ノノミさんとキョウヤさんっていうんだけど、一葉さんと叶魅さんと佳織ちゃんを『デウス・エクス・マキナ』から守ってほしいってさ」

「引き受けたのか?」

「うん、一葉さんと皐月さんは知らないけど叶魅さんは知ってるからね」

「引き受けてよかったの? 真白くんが危険なんじゃ……」

「世界の危機と聞いた以上、見過ごすわけにはいかないしね」


 一葉と叶魅と皐月が組織に捕まって見過ごすのは後味が悪いのは嫌だった。


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