アルセラとのデート 3
「へへっ、どうだ。アリスお母様、アルセラお姉ちゃん、そのピーマン、俺様が作ったんだぜ!!」
「その玉ねぎは私だよ!!」
「パスタは僕たちだからねー!!」
アルセラとアリスさんがナポリタンを口に運んでいると、ラースを中心に、次々と孤児院の子供達が切った野菜やパスタを嬉しそうに自慢する。
「ええ。とっても美味しいです!!」
「私がいない間に、みんな成長したのね!!」
そんな彼等の自慢に対して、アリスさんとアルセラは、ナポリタンを口に運びながら、嬉しそうに彼等を褒め称えていた。
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「ほらー!!ラース達、食べ終えたら片付けまでが料理だよー!!」
「ディア様にこれ以上、お手を煩わせるわけにはいきません…!!」
全員がナポリタンを食べ終えたのを確認したあたしが、ラース達の名前を読んで彼等を集めて、後片付けに入ろうとした時だった。しかし、アリスさんの言葉によって、止められる事となる。
「この後は私達がしておきますから。……………ディア様、目を背けたい気持ちは分かります。でも、過去を含めて『アルセラ』なんです。どうか、あの子の事をお願い致しますね?」
そんなアリスさんの提案に困惑していると、彼女があたしの耳元で小さな声で囁く。
「それってどう言う……」
「さっ、みんな、ディア様とアルセラはお客様です。だから、私達で片付けましょう!!」
「「「「「はーい」」」」」
あたしが彼女の言葉を聞いて聞き返そうとすると、既にアリスさんは孤児院の子供達を引き連れて調理場の方へ移動しており、残った食事場には、アルセラとあたしだけとなっていた。
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「きっと、あの美味しいナポリタンを作ったのは、ディア様ですよね??あの子達に料理を教えて頂き、ありがとうございます」
「別にあたしは……」
あたしが『ナポリタン』を作ったのは、アルセラの話に逃げた成り行きの行動である。つまり、感謝をされるような行動じゃない。
だから、アルセラの感謝に面と向かって返事ができずに、言葉を途中で切らしてしまう。
「その、ディア様さえ良ければ、お腹いっぱいですし、外へ少し涼みにいきませんか??」
「う、うん…」
この食事場にいても気まずい雰囲気になるだけだと判断したあたしは、アルセラの提案に同意て、食事場から移動する事となった。
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その後、孤児院を出て、アルセラの手に引かれて移動した先では、周囲に草木が生い茂り、落ちたら命を落とすかもしれないような崖だった。
「ここって、私の秘密基地なんです」
そんな危ない崖にもかかわらず、アルセラは落ちる手前まで移動した後、あたしの方へ振り返り、自慢するかのように話す。
「そんな場所、危ないよ!!」
「ディア様、騙されたと思って来てください」
だから、アルセラを注意すると、彼女は満面の笑みを浮かべ、首を横に振りながら、逆に遠くから見守るあたしに近づくよう提案してきた。
どう言う事だろう??と疑問に思いつつも、普段、素直なアルセラが言うならば…と思い、彼女の近くへと恐る恐る移動する。
「綺麗でしょう??」
「………そうだね」
そうすると、崖の先には、遠くに聳え立つ『セブンス王城』を中心とした『セブンス王都』にある建物全体が見下ろせる絶景が広がっていた。
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「………ディア様、今日はごめんなさい」
あたしが絶景に夢中になっていると、隣のアルセラが謝罪をする。
「アルセラがどうして謝るの??」
「…………それは、私の過去がディア様を傷つけてしまったからです。私はディア様に私の大切な人達に会って欲しかっただけだったんです」
あたしの質問に対して、彼女が瞳にたくさんの涙を溜め込みながら、消え入りそうな声で話す。
「あたしね、アルセラの事が好きなんだ。でも、好きなのに、アルセラの事をもっと知ろうとしなかった自分に自己嫌悪していただけなの」
アルセラが何をそんなに心配しているのか、分からない。でも、ここで嘘を吐くのは違うと思ったあたしは、正直な自分の想いを彼女に伝える。
「………じゃあ、私もパタリー様のように」
「ストーップ!!その前に質問タイムだよ!!」
そうすると、あたしの想いを聞いたアルセラが自然に交際の話の流れへ持っていこうとしたため、大きな声を被せて、彼女の言葉を制止した。
「……これら例え話だからね??もし、この世界が作られた世界だとして、主人公役が『アルセラ』、あたしが『悪役令嬢』役で、その他に用意されたイケメンの攻略対象達がいたとします」
「…………はい」
自分でも無理矢理だと思うが、アルセラとパタリーでは事情が異なるため、不服そうに返事をするアルセラを視界に入れつつ、話を続ける。
「アルセラはイケメンの攻略対象を選べば、『ハッピーエンド』、あたしを選べば、『バッドエンド』だとしたら、アルセラはどちらを選ぶ?」
その理由は、彼女が『セブン⭐︎プリンセス』の主人公であり、今ならば、他の攻略対象を選び『ハッピーエンド』を掴み取れるからだ。
それに加え、アルセラの過去の話を聞いて、尚更、彼女には、『ハッピーエンド』を掴んで欲しいと思ったからこそ、意地悪な質問をする。
「………愚問ですね。ディア様が悪役令嬢ならば、悪役令嬢、攻略対象なら攻略対象、モブならモブ、結末は私とこれから描いていくだけです」
「ま、待って!!『バッドエンド』って確定してるんだよ??そんな未来を変えるなんて………!!」
その結果、あたしの意地悪な質問に対して、アルセラは満面の笑みを浮かべながら、あたしが想定していた答えとは、真反対の答えを即答する。
そんなアルセラの答えを聞いた瞬間、あたしは彼女に大きな声で反論した。
「なるほど、先ほどの例え話といい、やっぱり、そう言う事だったんですね…!!」
「な、何がかな」
あたしの反論に対してアルセラは、まるで解けなかった問題が解けたかのような嬉しそうな表情を浮かべた。そんな彼女を見て、あたしは、嫌な予感が過り、身体中から冷や汗が噴き出る。
「前から違和感は幾つもありました。なぜ、ディア様が私の用意していた回答を知っていたのか。なぜ、私だけが光魔法を操れて特別だったのか」
「っ!?」
「他にも『感謝の公爵令嬢』と呼ばれているのに、会ったことのない私を入学式で避けていた理由や死亡率等も分かっている事を含めてです」
その直後、あたしの嫌な予感通りに、アルセラが今までの矛盾点を挙げていく。
「俄には信じれませんが、私が主人公、ディア様は自分の死が確定している事等を全て知っている悪役令嬢ならば、全部の辻褄が合うんです」
———ち、ちょっとバレてますわよ!!
———ゲンザイ、コノツウワバンゴウハツカワレテオリマセン。ピーットイウハッシンオンヲ……
———ふざけてる場合じゃありませんわよ!!
———トウトツナエラーガハッセイシマシタ…
「ディア様、あくまでシラを切るつもりですか」
———こうなれば、『ディア』の高校生時代の黒歴史を語るしか方法がありませんわ!!
———タンマッッ!!!起きたから!!
———それなら、さっさと行くことですわ!!
あたしがアルセラの的確な推理に衝撃を受けて気絶していると、『木葉』による理不尽な黒歴史暴露の脅しで正気を取り戻す。
「………もし、そうだとしたら??」
正気に戻ったあたしは、アルセラの質問に対して正解とも不正解とも捉えないよう、慎重になりながら逆に彼女へ聞き返す。
「私に提案できることは1つだけです」
「提案って……何かな」
あたしは、表情に出ないように気を配りながら、アルセラの言う提案を尋ねる。
「ディア様、私とどこかの遠くの地へ逃げませんか??そうすれば、全てが楽になります。もちろん、お望みならパタリー様達もいいですよ??」
その瞬間、アルセラから提案されたのは、疲弊したあたしにとって、藁にもすがりたくなるような、魅力的かつ蕩けるように甘い提案だった。




