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アルセラとのデート 4

「アルセラとシンリーとパタリーと遠くの地で何もかも忘れて暮らす……。うん…。すごく楽しそうだし、それもいいかもしれないね」


 アルセラの提案を聞くと同時に、あたしは自分の顎に手を当てて、頭の中で思い浮かべる。


 きっと、あたし達の信頼関係ならば、身分等を気にする事なく、今まで通りの楽しい関係を築ける未来が見えた。


「ええ。そうすれば、ディア様も私も楽になれます。さぁ、私と共に参りましょう」


 目の前に差し伸べられるアルセラの手を取れば、あたしも彼女も救われる。


 例え、魔王の復活が解けても、その時にあたし達が遠くの地にいれば、影響はないだろう。


 元アル中のあたしにしては頑張った方だよね……と心の中で、誰かに言い聞かせながら、無意識のうちにアルセラの手を握ろうとした。


 その瞬間、頭の中に『ディブロお父様』や『ステラお母様』、『サラ』や『ジーク』や『ベルンルック領のみんな』の顔が思い浮かびあがる。


「…………ごめん。あたしは行けない」


 そして、あたしは、みんなの顔が頭に思い浮かんだと同時に伸ばそうとした手を引っこめた後、アルセラの提案に首を横に振って拒絶した。


ーーーー


「残念です。……………それならば、ディア様、私と決闘してください」


 あたしがアルセラの提案を拒絶すると、彼女は残念そうな表情を浮かべた後、顔を俯かせる。


 しかし、それも束の間、今度は満面の笑みであたしへ決闘を申し込んできた。


「………え?」 


 そんなアルセラの急激な表情の変化とともに、彼女の口から出てきた『決闘』に理解が追いつかなくて、思わず聞き返してしまう。


「私が勝てば、遠くの地へディア様を連れ去ります。ディア様が勝てば、私はパタリー様と同じように、交際で手を打つとしましょう」


 しかし、目の前のアルセラは本気であたしと決闘するらしい。まるで、台本があるかのように、双方の条件をスラスラと述べている。


「えっと……」


 ただ、耳を傾けると『決闘』の条件について、ツッコミ所が満載だったため、あたしは条件について、割り込もうと口を開こうとした時だった。


「ディア様に今の私を相手に悠長な話し合いの隙を見せる時間はありますか??」


 目の前にいるアルセラの瞳から光が消え、虎視眈々と事実を述べているだけなのに、感じた事もない圧力があたしの全身に襲い掛かる。


 その結果、アルセラの圧力に屈したあたしは彼女の条件で決闘を受ける事となった。


ーーーーー


「本当にやるの…?」


 その後、アルセラに手を引かれて崖から少し離れた開けた場所へ移動する。


 当然、『サイコパス王子』のような相手ならまだしも『アルセラ』とは戦いたくない。


 だから、あたしは彼女に『決闘』を否定して欲しくて、質問した。

 

「ディア様が『未来』を変えようとするなら、最低でも『主人公』の私を超えてくれなきゃ信頼できませんからね。光魔法『ホーリースピア』」

 嘘、入学式の頃は1本だったのに…!?


 あたしの質問にアルセラは返事をしながら、彼女の頭上に複数の光で構成された弓が出現する。


 想定外だったアルセラの成長に心の中で動揺していると、彼女が繰り出した複数の光の弓があたしを目掛けて襲いかかった。


 カンッカンッカンッカンッカンッ

「闇魔法『ダークシールド』」

 

 あたしは光の弓が直撃する直前まで引きつけた後、いつものように漆黒の盾を出現させてアルセラの光魔法を高い音を奏でながら防ぎ切る。


「その攻撃じゃ、あたしの守りはって…」

 ———構えなさいっ!!来ますわよっ!!


 アルセラの初撃を完璧に防いだことで満足していたあたしが彼女に話しかけようとした時だった。その直後、『木葉』の焦り混じりの声により、決闘へ意識が引き戻されることとなった。


「光魔法『ホーリーソード』」

「闇魔法『ダークソード』」


 そして、『木葉』の指示通りに戦闘へ集中した結果、既に動いていたアルセラが純白の剣をあたしの真上から向かって振り下ろそうとしていた。


 その一方で、『木葉』のおかげで、なんとか間に合ったあたしは漆黒の剣を出現させて振り下ろしてきた純白の剣を受け止める。


 キィィンッッ


 刹那、あたしが握る漆黒の剣は光を呑み込もうするのに対して、純白の剣は、闇を浄化をしようと互いの存在を喰らい合う。


 その結果、どうやら魔法の効果はあたしの方が上のようで、漆黒の剣が純白の剣から全ての光を喰らおうとした。



 しかし、そう簡単に事が運ぶはずもなく、危機を察知したアルセラはあたしから後退する。


 キィィンッッ

 キィィンッッ

 キィィンッッ

 キィィンッッ


 

 しかし、アルセラは『剣同士』の勝負を諦めていないのか、それ以降も漆黒の剣を持つあたしに対して、何度も衝突が続くこととなった。


ーーーー


 キィィンッ


「ディア様はどうして私の愛を拒絶しようとするんですかっ」


 互いの剣の刃が交わるたびに、激しい白い光と黒い光が互いの存在を喰らい合う剣戦の途中、アルセラがあたしの方に大きな声で問いかける。


「それはアルセラには、もっといい相手がいると知っているからだよっっ!!」


 そんな彼女に対して、あたしも負けじと大きな声で返事をした。


 キィィンッッ


「腐敗した貴族の圧政により親からも捨てられた私にとって、ディア様の存在は私にとって辛い現実を、生きる希望だったんですっっ!!!」

「………そんなの初耳だし!!本当のあたしはそんな聖人君子のような人じゃないっっ!!」


 キィィンッッ


「ええ、知ってますよ!!噂以上に優しくて、ポンコツで、いつも何かに怯えていて、誰にでも感謝をする私の愛しい人でしたっっ!!」

「アルセラ……!?」


 あたしと問答を繰り返しながら、互いの剣が衝突した瞬間、アルセラが握っていた純白の剣が文字通りに眩い光の粒子となって消滅した。


 それと同時に、彼女はフラフラの状態となり、前屈みの状態で地面へ倒れそうになったのを見て、あたしが倒れる寸前の所で抱き止める。


「………………決闘は私の魔力切れで敗北のようですね。………ディア様、私じゃだめですか?」


 魔力切れを起こす中、目にはたくさんの涙を溜めつつ、アルセラがあたしの方へ質問した。


「逆だよ…。アルセラは選び放題なんだよ??それなのに、あたしなんかでいいの……??」

「……………例え、何回生まれ変わっても、ディア様を見つけて、あなたを愛します」


 崖の先から夕陽が射し込む中、あたしの方からアルセラへ口付けを交わす。そうすると、アルセラが安心したかのように瞳を閉じたので、あたしは彼女をお姫様抱っこをする。


 ————わたくしはてっきり攻めが主人公だと思っていたのだけど……大穴でしたわ!!まさか、あそこからディアが差し切るなんて……!!

 ————-いや、そもそもあたし、馬じゃないから!!お願いだから、大人しく『◯ーラー◯ーン』の漫画を読んどいてよ!!

 

 毎度の如く、『木葉』が理解に苦しむ感想を伝えてきたため、彼女に『◯ーラー◯ーン』を押し付けた後、孤児院の方へ戻ることにした。

 

ーーーーー


「ディア様、遅くまでってアルセラ!?」

「アリスさん、アルセラが魔力切れを起こしてるので、寝る場所を貸していただけませんか??」

「え?ええ。それにしても魔力切れって………ディア様もボロボロじゃないですか」

「あ、あはは…少々事情がございまして…」


 あたしが孤児院へ戻ると、ちょうどいいタイミングで1人でいたアリスさんに遭遇し、彼女の厚意で寝室を貸して頂けることとなった。


ーーーー


「………すーっ……すーっ…」


 その後、アリスさんの案内の元、あたし達は寝室へ移動して、優しくアルセラをベッドへと寝かせた後、アリスさんの方へ振り返る。


「ディア様、差し支えなければ、あの子と何があったのか話していただけますか?」

「実は、アルセラの提案で決闘することになりまして……その……………………と言うわけです」


 振り返った後に、アリスさんの瞳を見て、生半可では誤魔化すことはできないと判断したあたしは、率直に今までのことを話した。


「む、娘のアルセラが大変なご迷惑を……」


 そうすると、額に手を当てながら、アリスさんが謝罪をしようとしたので、あたしは制止するために、彼女の唇へ人差し指を添える。


「いいえ。むしろ、逆です。ア(・)リ(・)ス(・)お(・)母(・)様(・)、アルセラが倒れていた時に、彼女を救っていただき、ありがとうございましたっっっ」


 そんなあたしの行動に首を傾げるアリスさんを傍目に、あたしは姿勢を正して、まるで地に頭を届かせるかのように深々と下げる。


 それと同時に、アリスさんへ倒れていたアルセラを助けてもらった感謝を大きな声で伝えた。


「名家のお嬢様にお母様なんて呼ばれると、なんだか、こそばゆいですね」

「いいえっ!!アリスお母様には心の底から感謝していますから!!」


 あたしが感謝を伝えるとアリスさんは頬を林檎のように紅く染めながら、視線を泳がしている。


 もちろん、あたしはふざけているわけではないため、再度、彼女へ感謝を伝えた。


「ええ。ディアの想いは受け取りました。後は、若い2人で仲良くしてください。…………アルセラ、狸寝入りは私に通用しませんよ??」


 そうすると、アリスお母様が縦にこくりと頷きながら、あたしの名前を呼びつつ、優しく微笑みかけてくれる。


 その後、アリスさんは自然な動作でアルセラに対して狸寝入りの釘を刺した後、呆れた表情をしながらあたし達のいる寝室から退場した。


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