↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
卑怯な温もり  作者: 久遠寺蒼
ユリ
PR
6/25

5:カフェテリアに一人で入ってきたのがユリだった

 ――実際のところ、どこから話したらいいのか、僕にも分からない。

 少し、複雑な事情が重なり合ってしまった。

 偶然から生まれた不幸……そう言ってもいいけれど、やはり最終的には自分に非があると思い直し、口には絶対出さない。


 桜井さんの本名は桜井(さくらい) 梨絵(りえ)という名前で、僕は彼女の名前を知ってからリエと呼んでいた。

 先ほどホタルが言っていた『ユリちゃん』は、的場(まとば) 友利子(ゆりこ)という名前で、バイト先で知り合った子とはまた違う子である。

 僕が先ほどふってきたのは、ユリではなくて、リエの方だった。


 まだリエと出会う前、僕はユリと出会った。

 ユリは、率直に言ってしまうと、僕がリエよりも惚れた人。

 同じ大学だった。

 僕は法学部、ユリは商学部だった。

 ある日、商学部の友人から飯に誘われて、大学のカフェテリアで食事をすることにした。

 僕はボンゴレ・ビアンコとシーフードサラダを、彼は茄子とベーコンのカルボナーラ大盛りを注文した。

 一息ついたところで、最近どうよって話を始めたところ、カフェテリアに一人で入ってきたのがユリだった。

 ユリは一度店内を眺め、彼の姿を見つけると、笑顔で近くまで寄ってきた。

 恋人同士なのかな、と思ったが違うらしく、語学で同じ授業をとっているとのことだった。

『初めまして。的場って言います』

 そう言って笑うユリが眩しかった。

『今日は何とるん? これから飯かい?』

『そうだよー。朝から何も食べてなくて』

『じゃあ一緒に食おうや。俺ら今ちょうど注文したところやし』

 彼女は大きく頷くと、彼の隣に座った。

『ああ、ちなみにこいつな、ワッカって名前やねん』

『ワッカ? 珍しい名前ですね』

『ライブネームだよ。ライブの時はワッカって名前を使っているんだ』

『へー、バンドマンなんですね』

 そこから音楽の話で会話が盛り上がった。

 僕も彼もロックが好きで仲良くなり、ユリもまたロック好きな女の子だった。

『うーん、僕は太陽族とかにはまっていたかな』

『インディーズが好きだったんだね。私もマイナーなのが好きだったかな』

『へえ、例えば?』

『こいつな、蜉蝣が好きやったんやて。バリバリのヴィジュアル系』

『あ、こらちょっと!!』

 そう言って、ユリは彼の肩をベシリと叩いた。

『へー、ヴィジュアル系が好きなんだ。僕も好きだよ』

『え、そうなの?』

 彼女はすぐに打ち解けて、はじめは敬語だったにも関わらず、いつのまにかタメ語で話すようになっていた。

『高校時代は他にThe Yellow MonkeyやDir en greyくらいしか聞いてなかったからね』

『そうなんかー。ヴィジュアル系だったら、俺はX JAPANにはまっとったで』

『hideいいよねー、かっこいい』

 あまりに話に熱中しすぎて、料理がきたのも分からなかったくらいだった。

 熱中しすぎたね、と三人で笑った。

 食事が終わり、授業に出るとユリは席を立ち、その際に連絡先を教えてくれた。

 また音楽の話しようね、と名残惜しそうに、彼女は去っていった。


 その日のうちに、僕は彼女にメールを送った。

 今日はありがとう、楽しかったよ、と。

 すぐに返信があった。

 こちらこそ楽しかったよ、音楽の趣味が似てる人がいてびっくりだったよー、と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。