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ハイネの昏い悪夢

 白亜のゲストハウスのリビングに子供達があつめられる、生まれ変わったポーラのお披露目のためだ。

最後にリビングにドロシーが入ってきたが、彼女はコステロ商会の古風な高級使用人の制服に着替え済みだ。

「どうしたのドロシー?」

エルマがドロシーを見てから斜め後ろにいたポーラに目が釘付けになった、エルマの口から小さな声がもれた。

「えっ?」

ヨハン少年もマフダもポーラから目が離せない。


「さあポーラ」

ドロシーが促すと軽やかにポーラはドロシーの隣に立つ。

ドロシーが楽しそうに子供達を見廻した、ポーラは顔色が異様に白かったが明るく自信に満ちていた。

「ポーラは今日から私達の家族になった、お姉さんだけど今までどおり皆の世話をしてくれる」

「お嬢様方、わたくしは今日生まれかわりました、これで本当の家族になれました、永遠によろしくお願いいたします」


エルマがポーラに抱きつく。

「やった!!これで一緒に空を飛べるわ」

「ええっ!?そうなのですかお嬢様?でもできそうな気がしてきました!」

「ポーラ服を脱いでからするように、羽で服がボロボロになる」

ドロシーの忠告にポーラは驚いたがすぐに納得したようだ。

「ドロシーお嬢様はいつもそうしていましたね・・・」

ポーラは困ったような顔をしてため息をついた。


ヨハンとマフダもポーラの側にやってくる。

「もうヨハン様とかやめてくれ、いややめてください」

おずおずとしながらもマフダも勇気を出した。

「お嬢様じゃなくてマフダと呼んでほしいの」


「ポーラはあまり変えたくないみたい、だから今まで通り使用人をやってもらう、これは二人で相談して決めたこと」

ドロシーがそう宣告すると子供達はそれ以上何も言わなくなった。


さいしょに口を開いたのはヨハンだ。

「ポーラがそれでいいならそれでいいぞ」

ヨハンがエルマに視線を移す、エルマがあわてて応えた。

「え?それでいいわ」

マフダは深く頷いただけだ。


「エルマ様、ヨハン様、マフダ様、これからも生まれ変わったポーラと仲良くしてくださいませ!」

「うん」

ポーラは三人を一人一人抱きしめた後で一歩距離を置いた。


「さて仕事が溜まっていますので、これから片付けてまいります、ではこれにて」

ポーラは足取りも軽くリビングから出ていってしまった。




しばらくしてからエルマがつぶやく。

「ドロシー、ポーラに何があったの?」


「人には触れられたく無い事があるの、せんさくしない、いい?」

ドロシーの言葉は柔らかだ言葉には大きな力がある、その力に眷属が逆らう事はできない。


「そうね、眷属になりたいと思うような事があったのね、もう触れないわ」

「うん、それでいい」


ドロシーは沈黙した子供たちを見て小首をかしげた。

「そうだポーラの仕事が終わったら、皆であそびにいこう」

「ねえドロシー、空をとんで遠くにいきましょう!」

マフダが手を挙げた、普段の彼女らしくない態度にみんな驚く。


「服を着たままじゃ飛べない、裸で空をとぶ、わたしは平気だけど?」

「俺、いや僕は絶対いやだよ!裸でとぶなんて!」

ヨハンがしかめっ面をして反対する、彼の顔が気のせいか赤く染まって見える。

「やっぱりやめるわ・・・」

マフダが軽く頭を振るとつぶやいた、彼女は床を見ている。


「街に遊びにいこう、ちょっとポーラに言ってくる」

ドロシーはそのままリビングから出ていってしまった。


「ポーラといっしょに遊びにいけるなんて楽しいわ」

エルマはすこし楽しそうだ。

「ねえ羽をはやしても困らない服とかつくれないかしら?」

マフダがつぶやいたので、ヨハンは不思議そうな顔をする。

「そんなにも空を飛びたいのかマフダ?」


「ドロシーの家族になった時から空を飛びたくなったの・・・ドロシーの首を運んだ時は楽しかった・・・これはドロシーに秘密ね」

マフダがいたずら娘のように微笑むと、エルマもヨハンもうなずいた。



夜のハイネの町並みの上を、人ではありえない速度と跳躍力で黒い人影が幾つも乱舞する、その中から少女達の嬌声が上がる。

その声はただの声では無かった、闇妖精姫と高位眷属達の声は世界から僅かにずれた世界に浸透して行く。

それはハイネの人々に悪夢を見せる事になる。


「ああ楽しいですお嬢様、もっとはやくこうすればよかった!体が燃えるようです、あはは」

ポーラの陽気で欲望に爛れたような笑いがハイネの夜に渡ってゆく。





そのころ北のアラティアのダークグリュン公爵家の大邸宅で大きな騒ぎが起きていた、眠りから覚めたカミラ付きの使用人が異変に気づき床に倒れていたカミラを発見した。

だが目覚めたカミラに何が起きたのか記憶がなく、見事なエメラルドのブローチが近くの床に落ちていただけだった。

公爵家の総力で調査が行われ、それがニ年前に使用人に盗まれた宝石である事が判明する。


だがその夜に何が起きたのか解明される事は無かった。





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