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世界間大戦の予兆

「大導師!?」

セザールの声は掠れて聞き取りずらい、それは乾いた風が隙間を通る様な声。

『セザールよ幽界の眷属共に手間取っているようだな、さきほど大結界の異変を感じた』

大導師の声ははるかに聞き取りやすいが非人間的で虚ろだ、セザールの声のほうが感情の存在を感じさせる。

セザールの青白い鬼火の様な瞳が奈落の底の大導師の真紅の瞳を見つめる、おたがいにその瞳から感情を読み取る事などできない。


セザールはしばらく沈黙していたが言葉を紡ぐ。


「幽界の眷属共が集まりすぎてイる、手持の駒では奴らに対抗できない」

『それはわかっておる、すでに魔界の眷属を送り込んだ、さらに送り込む』

「大導師よ、闇妖精姫が明らかニ敵対的だ、これもまたやっかいだ、彼女を取り込むと言う話ではなかったのか?」

しばらく大導師の言葉が途切れた。


『闇妖精姫の異常に関しては、復活の儀式の失敗と考えられていたが、あの女の近くにある考古学者が近づいている事が判明した、学者は闇妖精姫の再誕に深くかかわる男だ、奴ならば何か知っているはずだ』

「大導師よ、コステロ会長がそれに関わっていた事は知っていたが・・・」

『真紅の淑女の名が表に出てきたのはせいぜい5年、それまであの女は存在が隠されていた、我らも幽界の眷属共が次々と現れるまでは時間をかける予定だった、だがすでに大戦は始まっている妨害は廃除せねばなるまい、だがまだ攻撃を加えるわけにはいかない』


「闇妖精姫ノ目的はさだかでないが、幽界の眷属共の目的は明白だすでに大結界への攻撃が始まっている、何かしらの手段で結界の構造を見破られた」

『セザールよ、それはお前の蔵書が奪略されたからであろう?ワレが知らぬと思うておったか』

セザールの鬼火の様な瞳がゆらぐと沈黙した。


『神々の眷属を送り込み対抗するが、同時に奴らの力を弱める手を打つ』

「そのような事ができルのですか?」

『神々の眷属は神々の元に魂の一部を残している、神々はそれを綱として幽界の門の向こう側と繋ぎ力を現実界に導く事ができる、現実界は異界の写し鏡だ、こちらの契約神の聖域を破壊すれば繋がりは大きく損なわれるだろう』


「眷属の一人はテレーゼの大地母神メンヤ、白銀の大蛇から推測される、だが残りの二人はまだ確定していない、一人はまったくの不明だが一人が変異した黒い豹の姿から魔豹ディオエラと推理したが確定まではいたらぬ」


『魔豹ディオエラならば、東方世界の守護神女神アグライアの眷属であろう?テレーゼは土地女神メンヤの管轄だそれ以外の神は介入せぬ、幽界の神々は縄張り意識が強く魔界の神々はそれ以上に強い、東方守護の女神ゆえに干渉できるのだ、もしくはメンヤが支援を依頼したか・・・』

「メンヤの地下神殿はすでに・・ならばアグライアの力を弱めるのですか?さてはあの御方が?」

『我らはエルニア公国を掌握しつつある、いずれアグライア山の聖域を破壊する予定だったが、その計画を前倒しにする事になった』

「では我の大結界は!?」

大導師はそれにかまわず話を続けた。

『アグライアの眷属はエルニアに呼ばれるであろう、それは運命の形として明らかになる、神々の意思とはそういうものだ、お前の負担は軽くなるであろう』

「すでに結界の1つが破壊された、計算デは一日三箇所のペースで破壊されてしまう!このままでは瘴気の蓄積が遅れる」

奈落の底の真紅の瞳がどこか嘲るように瞬く。


『ドルージュに蓄積された瘴気は十分だ、奴らは大結界の構造の一部に気付いたが、破壊できたとしても瘴気の蓄積効率が落ちるだけ、そして大結界の修復も比較的容易であろう?お前の部下共でもできた事だ』

「しかし!!」


『良いかセザーレよ、闇妖精姫の取り込みに失敗したがあの女が明確に敵にまわったとは言い切れぬ、しばらくは余計な手を出すな良いな?』

「では結界の破壊を妨害」

その言葉に被せるように大導師の声が被った。

『戦力の消耗は許さぬ奴らは我の手の者が止める、アグライアの眷属共はまもなくエルニア還るであろう、それはその後の事だ』


「しょうちしタ」

セザールの声は乾き掠れていたが無念さと怒りを滲ませていた。


『百年に一人しか現れぬ異界の神々の眷属がこれほど同時に現れる事などなかった、それは神々の大戦が近づいている事を示している、人同士の戦いもこれから激しくなろうそれもまた神界の戦いの影でしかない』

そこで大導師は言葉をくぎった。

『お前は結界の修復にそなえよ、大きな戦いで万余の死者が生まれる、その魂を捧げるのだ・・・長話は消耗するな一度接触を切る』

奈落の底の二つの真紅の瞳が消えると奈落の穴が閉じた、あとには何も残らなかった。


セザールは魔術道具で人を呼ぶ、すぐに黒いローブの魔術師が扉を開けると入ってきた。

その人物は主の冷気と瘴気に身震いする。


「よいか、バルタザールヲ呼べ話がある」

セザールがその朽木の様な腕をふる、それは早く行けと言う意味だ。


ローブの魔術師は一礼すると命令を実行するために足早に部屋から出ていく、そして扉が閉じられた。


「いまいましい、幽界の眷属どもメ!」

セザールは吐き捨てた。


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