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そして結婚

温かい日差しの中で、新緑の緑が青い空に映えて綺麗だった。

緑の輝きは命の息吹を感じさせてくれた。

今日、6月22日は長谷川さんと夏川さんの結婚式。

「由美ちゃんの事だからもの凄く綺麗だぞ……当然お前には負けるけど」

優介は私の手を握りながら優しく微笑むとそう言った。

最後の一言は別にあえて付け加えなくてもいいのではないと思ったりするんだけど……

私はそんな事を思いながら優介の顔を覗き込む。

すると優介の顔がおもむろに私の顔に近付いてくる。咄嗟に私は近付いて来る優介の顔と自分の顔の間に手を挟み込んだ。

「こんな沢山人のいる前で恥ずかしいじゃない」

私がそう言うと、優介は楽しそうに一人で笑っている。

また〜……私で遊んでるでしょう!もう!

「優介ちゃん!麻未ちゃん!」

そう叫びながら近付いてくるのは、この沢山の人の中でもひときわ目立っているリンさん。

今日の結婚式は、長谷川、夏川両家の親しい友人と身内の人達だけを呼んでの結婚式だった。業界関係の人たちを呼んでの盛大な結婚式は後日またやるらしい。

「あら、まあ!麻未ちゃん、そのドレス似合うわよ。優介ちゃんの見立てかしら?」

リンさんは香水の匂いをプンプンさせながら、そう言った。

「とうとう駿も結婚か……リンさん淋しいだろう?」

優介がリンさんをからかうようにそう言った。

「まだ黒崎ちゃんが余ってるもの」

そのリンさんの言葉に私は黒崎さんが可愛そうだと思った。

「そうそう、さっきね由美ちゃんに会ってきたんだけど、綺麗だったわよ。会ってくるといいわ!」

リンさんの言葉に私と優介は夏川さんの控え室へと向った。

女優さんだもん……綺麗なんだろうな……。

そう言えばね、今回の結婚式で使われるブーケは私が作ったものなの。昨日届けに行ったんだけど、とっても気に入ってくれて、嬉しかったなあ。

コンコン

私と優介は控え室のドアをノックする。そしてドアを開けた。

私は夏川さんの姿を見て、言葉を失う。

とっても綺麗だった。淡い白に近いピンクの下地に淡いレモン色のグラデーションの入った。とっても温かみのある色合いのドレス。とっても素敵だった。

「由美ちゃん、さすが!綺麗だね」

「あなたの麻未ちゃんには負けるわよ!」

夏川さんのその言葉にやられたとばかりに優介は笑っていた。

私はあまりの美しさに歩く事も忘れてその場に立ち尽くしていた。

「麻未、どうした?綺麗過ぎてビックリしたか?」

優介が私の顔の前で掌をヒラヒラさせている事にやっと気付いた。

本当に綺麗過ぎてビックリした。女優さんだからって事もあるのなかもしれないけど、結婚を眼の前にして女性ってゆうのはこんなに光輝いて綺麗なものなんだな〜とつくづく思った。

「そろそろ始まりますので、新婦以外は式場の方へ」

式場の人の声に促がされるように私たちは式場へと向かう。

教会の椅子に座った。とってもいい雰囲気の教会、私もこんな所で結婚式あげたいな……

へ!?今、私、何を思った!?……自分がそう思った事、思えた事……結婚したいって……私は思わず笑みがこぼれる。嬉しくて嬉しくて、笑えて仕方が無かった……優介が不思議そうな顔をしていた。またそれも可笑しくて笑えてくる……。

式はみんなの祝福のもと始まり、順調に流れる中で指輪の交換……

優介が胸ポケットから指輪を取り出す。私が優介からあのホテルで貰った指輪。失くしたりしたら大変だと思って普段は箱に入れてしまってある。

それを持ってきたのね……

長谷川さんが夏川さんに指輪をはめる瞬間、優介が私の手を取り私の指に指輪をはめる。

「優介……結婚しようか……」

私は優介の耳に口づけをするように、耳元で囁いた。

優介が私の方を驚いた顔をして一瞬見る。そしていきなり立ち上がって!

「やった〜!!!!」

って大声で叫んで両手を挙げた!みんなの視線を一斉に浴びたけれど、優介はそんなのおかまいなしに。

「ありがとう!みんなありがとう!俺結婚します!」

そう叫んでる……

もう!優介ったら……こんなに沢山の人がいる前で!しかも今日の主役は貴方じゃないのよ!

私がそう思ってると、長谷川さんがツカツカと優介に近付いてきて、一発軽くだったけど後頭部に平手打ち!アラララ……

優介は叩かれた所を触りながら席に着いた……もう恥ずかしいんだから。

周りから笑いがこぼれる……まあおめでたい席で笑いがこぼれるのはいい事よね……

優介は後頭部を撫でながら笑ってる。

その後は順調に式が進み、最後のメインイベント!ブーケを誰が受け取るか!?

リンさんが鼻の穴を大きく広げて殺気立っていた。可笑しいな……

私は後ろの方で傍観者に徹する。

「お前は参加しないのか?」

横にいた優介がそう言う。

「自分で作ったブーケだし。私には優介がいるから必要ないもの」

私のその言葉に優介は私の頭を撫で、肩を抱いて自分の方に引き寄せた。

夏川さんが教会を出た所で後ろ向きになって。ブーケを投げようとした瞬間、くるりと私達の方を見て歩き出す。

え!?私の方に近付いてくる!?夏川さんは私の目の前に立ち、私の手を取ってブーケを私の手に握らせる。

「麻未ちゃん、おめでとう。次は貴女ね」

夏川さんはそう言った。綺麗な笑顔で私にそう言った。

周りからの拍手の音が渦を巻いて私と優介を温かく包む。

温かい春の日差しが私達を包み込み幸せを届けてくれているような気がした。


     〜〜〜〜 6ヵ月後 〜〜〜〜


隣から泣き声が聞こえてくる……もう鬱陶しいな……

場内が明るくなって、周りに座っている人たちからもすすり泣く声が聞こえた。

でも男でそんな人はいないわよ……

私の隣に座っている優介を除いてはね

隣で鼻をかむ音が聞こえる。

「いい映画だったな……神楽優介は本当に最高だわ!なあそう思うだろ?」

そう言って優介が私の顔を覗き込む。

すっごい自信過剰……自画自賛も程ほどにしないとね。

「また……泣くなよ〜……」

優介はそう言って、私の瞳から次から次に流れてくる涙をハンカチで拭う。

「泣いてる優介に言われたくないもん」

そう言った私を優介は真っ赤な目をして見つめていた。

確かにいい作品だった。いい作品にしてねって言う私の約束守ってくれた。

途中から夏川さん演じる恵美子と私の中の記憶がダブって、涙が止まらなくなってしまった。

夏川さんと優介の映画が封切りになる。

今日は封切り前日…会館を貸しきって関係者だけの上映会だった。

元木監督がマイクを持って舞台に上がる。

「さあ、今日主役のお二人を紹介します。神楽優介さんと羽生麻未さん!」

元木監督の言葉に私は驚いた。だって今私の名前を呼んだでしょう?

私じゃなくて夏川さんじゃないのかな……

するといきなり後ろから私の髪の毛を触る人がいる!?私は慌てて後ろを振り返るとそこには永井がいた!

え!?ちょっと待って?なんでいるのよ!あんたはアメリカにいるんじゃなかったっけ?

何?何なのよ……

私は状況がよくわからなくて、頭の中で軽くパニックを起こしていた。

永井はブラシで私の髪の毛を梳かして、あっとゆうまにセットして頭に白いベールを付ける。

優介は私の手を握って立ち上がる。

私はその手に引っ張られるように立ち上がって。階段を下りて舞台の上に上がる。

優介と私は舞台の上に上がる。

「この二人には紆余曲折、今まで色々な事がありました。人生で一番喜ばしい事実がこの二人のとっては一番の辛い記憶として残りました。しかしその辛く苦しい日々を乗り越え、気持ちも新たに二人で歩んで行こうとしている二人です。どうか二人の行く末をみんなで祝福し見守って行こうではありませんか!」

元木監督のその挨拶に沢山の拍手が巻き起こる。そしてその挨拶が終るのを合図に舞台の袖から長谷川さんが花束を黒崎さんがケーキを持って現れた。

私はここにきてやっと状況を把握する事ができた。

これは優介と私の結婚式だ。みんなで私に隠してセッティングしてくれたのね。

そう自分の中で状況を把握したと同時に感極まって、涙が頬を伝う。

そして会場内にあの人の姿を見つけてた。母の姿……白髪混じりの髪の毛をセットして上の方の席に一人で座っていた。きっと優介が呼んだのね……

義父は先月他界した。母は今一人で暮らしている。

今なら言える。お母さん、私を生んでくれてありがとう……貴女がいてくれたから私を産んでくれたから、この優介とも出会うことが出来た……本当にありがとう

私は心の中で深く深く感謝した。

一番前の席にリンさんが座っている……そして手に握られていた紙……

……これも優介ね。リンさんの手にはカルテのコピーが握られていた。

私がお医者さんに我がままを言ってあの時の子宮外妊娠した時のカルテをコピーして貰った。

優介の子供が少しの間だけでも私の中に宿っていた事の証明が欲しくて。私にはあの子が存在していた証明はそれしかなかったから……。

引き出しの奥に閉まっておいたのに、優介がこっそり持ち出したのね……。

私がリンさんの姿に気づいた事を、優介が気付いたのか私の耳元で囁いた。

「俺達の子供にも見てもらいたかったからさ…ごめんな勝手に持ち出して」

優介の声は優しい……私は首を横に振る……。

もう顔は涙でボロボロだった。

「麻未……大丈夫か?」

優介がそう言って、私の涙を拭う。

そうゆう優介も泣いていた。

私は無理矢理笑顔を浮かべても、またすぐに涙顔になってしまう。

「ほら、そこで二人で泣いてないで、ケーキ入刀して」

長谷川さんの声に促がされるように私達は一緒にナイフを握り。ケーキにナイフを入れた。

拍手が波のように押し寄せてくる。

「おめでとう!って言っても実質結婚してるようなもんなんんだから、あまり変わらないよな?」

長谷川さんがそう言いながら優介の肩を叩く。

「これからも変わらず仲良くしていって下さい」

黒崎さんがそう言って、はにかんだ笑顔を浮かべていた。

長谷川さんが元木監督からマイクを譲り受ける。

「さあ、それではお二人にこれからの幸せを願って、誓いの口づけをしてもらいましょう!」

長谷川さんのその言葉に私は恥ずかしくなって俯く。だってこんな大勢の前でキスなんてした事がない……。

そんな事を思ってると、優介の手が私の顎に伸びてきて私の顔を上げる。

「麻未、これからも変わらず愛してる」

そう言って優介の唇が私の唇に重ねられた。

しょっぱい味がした……。


ずいぶん遠回りをした……二人で沢山辛い思いもした……

でもその分お互いの弱さや強さを知ることが出来た。

そしてお互いにその部分を補い、助け合う事を学んだ……


私達にこの愛を授けてくれてありがとう         

       完                   





ついに完結です。

二人がこれからも変わらず幸せでありますように。

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