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宇宙物々交換 ボウフラ航宙記  作者: 和子


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ダイレクト05 躍動する文明の宴


 宇宙。

そこは、星々がランナーとなって、定められた軌道というトラックの上を走る運動会のようなものである。

完全な個人プレー。バトンを渡す相手も無く。圧倒的なハンデ戦に不公平を唱えるものもいない。

それでも星々の営みは、予定調和のもとに粛々と執り行われる。


 公転運動などせず、一点に留まり、その場でバレリーナのように自転していれば、エネルギーを消耗せずに宇宙の均衡は保たれるはずだ。

それでも、星々は『公転』という契約をして、恒星の重力という鎖に自ら進んで繋がれ、その周囲に軌道を作って回り続けるのだ。


 宇宙の仕組みは最新研究で明らかになりつつあるも、なぜそうなるのかという問いには答えていない。

グラウンド星の文明は「運動会」という国家運営でひとつの答えを提示している。


 グラウンド星の競技人口は2億人ほど。

運動会に出ない一般人を含めると実際の人口はその100倍である。

人口もGDPも、ここ千年ぐらいは緩やかに上昇している。

人間は運動会を愛し、健康を維持している。


 利害の対立があっても、武力による戦争はしない。やるんなら、競争で決しようという。


 経済においても、「極めて成功した国家運営」が実現した。

「運動会」に費用がかかっても、税金、協賛金、配信料などが、それを上回る増収となった。


 現役の競技参加者でなくなっても、人々は生活の中に、自然に「走る・跳ぶ・投げる・蹴る」を取り入れる。


 昼食のため食堂に行列するときなど、お行儀良くまっすぐ並んで立っていることはない。自然にスクワットしたり、ラジオ体操したり、テーブルに着いたときはたまらなく空腹になっている。

当然、料理もおいしく食べられる。


 教会で祈りを捧げる人々は、敬虔に手を合わせ顔を伏せていることはない。

体を揺らして踊る。ジルバにマンボ、タンゴにあわせてペアダンス。

ブレイクダンスで独楽のように回ったり、まるで応援合戦のパフォーマンスが繰り広げられる。

司祭はDJのように、神の福音でフェスを盛り上げる。 


 グラウンド星の成功を見て、スポーツを中心に国家運営を再構築しようとする星も増えつつある。

文明の一つの正解は、生産や建設や発明だけではなく、人々のあふれる競争心、功名心、健康志向などを、全て「運動会」という手段で発散させることであったのだ。


 ボウフラとピトピト5号は、二人三脚のランナーとして、レースの中盤を走っていた。

「いいぞ、このまま行けば10位以内。うまくすれば8位入賞も狙えるかも!」

「二人で掴んだ最初の勝利ね!」


 スッスッハー、スーハッハー、風を味方にしてラストスパート。


 息を合わせて前のペアを抜き去る。抜け抜け進め。


 ボウフラ・ピトピトペアは4位入賞だ。あと少しでメダルだった。

「最高だね、運動会!みんなに声援もらって、入賞者は記念写真も撮るんだって」


 全員が整列して、指名手配の犯人のように正面から写真を撮ることもない。思い思いに決めた場所で、自由なポーズを披露する。笑顔でカメラのレンズを見続けるというのがルールだ。

3、2、1とカウントダウンする。その間にシャッターを切る。


「この星はみんな落ち着きがない。お互いに運動するスペースを尊重して自然に距離を取る。車で移動する人はいない。路面電車に飛び乗り、体を揺らしている。夕方になると疲れちゃうから、みんな早寝。早起きしてラジオ体操から一日が始まる」


 ボウフラの旅の日記に書き込まれた文字は、ページを閉じても飛び出して来そうだった。

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