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第十七話:とある夢物語は海へと

 私はいつかはお花屋さんになりたい。

 それは幼い頃にいった夢で、私はそれを実現させようと奮起していたことがあった。それは懐かしい記憶のようで、うたかたの泡よりも儚さがある。


 私はバスの中で座り、道路の凸凹に揺らされていた。窓側に座り、ゴツンと頭を打ったところでゆっくりと目をあける。

 空はあいにくの雨だ。その雨のせいで私の気持ちも雨模様ということを忘れないでほしい。

 はあとため息を漏らすと窓は冷えていて窓が白く曇るがそれはすぐに消えていった。


 バスの中には私一人、まるで夢の中にしているような孤立感。


 夢を見ることが嫌いだ。


 夢をみるといつも怖い夢と、一人だけの夢を見るから。

 ある時にはたくさん人がいる夢を見るけどそれは私が存在していないという独立というか隔離感があったのだ。


 「教室の私の机みたいだ」


 そうつぶやくとそれは空気に霧散していった。


 雨の中私はどこにも行く気はなかった。ただバスに乗ってバスを乗り継いで、そしてまたバスに乗って……。

 そんな果てしないことをしてもバスはどこにも行かない。


 私の乗るバスはすべてこの街運営のためどこにも行かないのだ。


 ここは監獄だ。どれだけ動くことを許されてもそれは外に行くことができない鳥かごのようなもの。

 たくさんの人々はそんな見えない鳥かごに買われているインコ見たいなモノ。


 泣きたくなった。そう思うと心が痛い。

 笑いたくなった。そう思うと心は死ぬ。

 怒りたくなった。そう思うと愚かに思う。


 すべてにおいて悪いのはこの雨だと決めたがるこの気持ちは、誰に向かわせればいいのだろうか?

 そうどうしようもないいたちごっこの末、結果は出なかった。





 バスから降りて、私はしょぼくれたバス停で、体操座りしていた。パンツとかそういうのが見えても関係ない。ただ小さくなってそこから消えたくなる。

 私は足の間に顔を挟み、外の世界を見ないようにした。


 おばあさんの銭湯から出てもう二日になる。さすがに股間の匂いとかも酷くなり始めていた。


 言いたくないが、自慰とかもここ最近していない。


 なんかそういう気分ではないのだ。


 溜息を洩らすとその吐息はすぐに消えていった。



 迎えに来ないかな……父さん。



 情けない私の姿を見て倒産はどう思うのだろうか? もしかすると頬を張り飛ばして私を家に連れて帰るかもしれない。そっちの方が一番楽だし、さらにうれしいかもしれない。


 だってまだ私を必要としてくれているから。そう思うとそれでもいいかもしれないとも思った。


 「……痛いなあ」


 ずり向けた足の皮は酷く、ずり向けていた。靴下が赤く染まり、疼痛が襲いかかる。


 「……はあ」


 溜息を洩らすのも疲れてきた。私はバス停の長椅子に寝転がり、ゆっくりと意識を飛ばした。






 かちりと時計の秒針と長針短針がそろうような音が聞こえた。

 私は目を覚まし、ゆっくりと起き上がる。


 堅い椅子のせいだろうか? 首が痛かった。


 朝の光が私を包み込み、気持ちを晴らしてくれていた。

 しょぼくれたバス停が雨のおかげでキラキラと光っているように見える。


 「……そういえばここ…」


 ここに来た覚えがある。少しだけ前、あの少年と会った浜辺。

 あの少年はどこで何をしているのだろうかと少しだけ思った。

 潮の匂いが鼻の中に入り、潮騒の音は耳に叩き込まれる。


 こんなところに来てしまったのか?


 私はゆっくりと堤防の階段へと向かった。





 足の皮が捲れているから裸足で中に入るのにためらった。砂とかが中に入ったら落とすのに苦痛を伴うに違いない。


 スニーカーで砂に入るとゆっくりと砂にめり込んだ。

 それと同時にきゅっとなる。


 あ、そういえばここって音の鳴る浜辺って言われてたような。


 そう思って私は歩きだす。


 さくさくと足がめり込む度にきゅっきゅっと砂が鳴り響いた。

 それが面白くてしばらく歩いていた。


 しかしそれがどれだけ続いたかは知らない。


 「あの」

 「!」


 私はスカートをあけて海に入ろうとしていた。裸足で、塩水が足に滲みる。


 「あ、わわ!」


 バランスを崩し、私は海の中へと落ちた。

 パンツとかが濡れて気持ち悪い。海藻とかも服に入ってうねうねとしている。


 敵意全開うなり声をあげてその方へと睨んだ。



 言葉を失った。


 「いや、あの久しぶり……ですよね?」

 「……え?」


 そこにいたのはあの時の少年だった。

い、イグニッション!!!!!!

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