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44.恋心と幼い考え

炎が爆発して目の前に現れたが、防御した上で全てを氷で凍らせた。

憤り頭を蹴り潰してしまった。後で問題になるか?まぁ、いいか。

髪を掴み持ち上げ、顔を確認する


「私が誰かわかっていて魔術を使ったのか」


男、クルト・フェルディナントは口の端を上げて笑い出した。


「ふっ……ハハハッ!!」


「何がおかしい?」


「シオン殿下の顔を知らない奴はいないでしょう。もちろん、王太子殿下だと知った上ですよ」


「何故、エレナの腕を縛り付けた?」


「抵抗されては面倒ですから。折角、邸に連れ帰ろうと思ったのに、まさか、陣が発動するなんて思いませんでした」


「邸に連れ帰る?」


「綺麗な女性が好きなんですよ。どうしても欲しかった。滅茶苦茶にして私なしでは生きられないように部屋に閉じ込めておくつもりだった。それなのに、いつも貴方が近くにいるから邪魔で仕方がなかった」


クルト・フェルディナントは、僕と同じように入学式でエレナを見かけたらしい。

その後、王太子が気にかけている、寵愛していると噂が流れてから気になり始めたようだ。


僕と違うのはエレナ自身よりも侯爵家の娘で婚約者がおらず良い身体をしているから手篭めにしたいと考え、婚約して遊び相手にしたかったらしい。


王太子が寵愛しなければ気にならなかったかもしれない程度の興味だったと。


ウェスタリア侯爵に婚約の打診をしたが断られて余計に気になった。

ただ、自分は飽きっぽいから手篭めにした後は飽きたら弟の玩具にすればいいと思うくらいの軽さで興味を持っていると、悪気もなく愉快そうに話す。


目の前にいるのが王太子で睨みつけられているのを理解しながら愉快に話しているクルト・フェルディナントの様子は明らかにおかしい。


そもそもフェルディナント伯爵家は後ろ暗いことに手を出しているのが確認出来ているから、それもあって宰相は婚約の打診を断ったのだろう。


手に入らないと思うと余計欲しくなるタチのようで、なんとしてでも蜜を味わいたいと考え、邸に連れ帰るための計画を立てた。


誘拐を予定していたが、本人の意思でフェルディナント邸へ行ったと思わせるために脅して学園から一緒に帰宅する予定だった。


その計画をしている中、メッゼリッヒ公爵令嬢とマクリオ男爵令嬢の計画を知り便乗したと。


メッゼリッヒ公爵令嬢は僕とエレナの婚約を何としてでも阻止したかったのか、王家に嫁げない程の醜聞が広まるなら何をしてもいいと話していたらしい。


計画をペラペラと話すフェルディナント伯爵令息を苦々しい思いで見ているだろうメッゼリッヒ公爵令嬢は、視線を彷徨わせ逃げ道を探しているようだ。


マクリオ男爵令嬢は『自分は脅されていたから仕方がなかった』と言い逃れようとしている。


「メッゼリッヒ公爵令嬢、フェルディナント伯爵令息、マクリオ男爵令嬢」


溜息を吐きながら呼び掛けると、三人は僕を見た。表情は三者三様だ。


他にも捕らえた男達を集め、アレンが魔術で拘束する。


「エレナは侯爵令嬢ではない」


そう告げるも首を傾げたり、表情を変えずに次の言葉を待っている。


本当に何も知らないんだな。

告示されたことを知らされていない、知ろうとしない。

自分達の計画を遂行する事で精一杯だったのだろう。


「エレナは王太子妃だ」


そう告げて驚く者、絶望の表情に変わる者、理解出来ていない者、いや、理解を拒んでいる者。


「な、にを。シオン殿下、仮に婚約者に指名しても王太子妃だなんて、話が飛躍していますわ」


「メッゼリッヒ公爵令嬢、既に告示されている。先日、マクリオ男爵令嬢が紅茶を掛けられたと証言した日に、私とエレナは婚姻した」


「婚約ではなく?」


「何度も言わせるな。エレナは王太子妃だ。自分が何をしたか理解したか」


追加でアレンが説明を加えると顔を青ざめ身体を震わせ何度も謝罪の言葉を口にした。

その所々で『あの時にお父様の話をしっかりと聞いていればよかった』と繰り返していた。


公爵家にはエレナとの婚姻は早い段階で知らせていた。箝口令を強いた上で身内には話してもいいと伝えていたが、大方、公爵の話は上の空だったのだろう。


メッゼリッヒ公爵令嬢が王太子妃に相応しい、未来の王妃に相応しいと言われていたのは自分の取り巻き達に、そう言わせて噂を流していたからだ。


取り繕うのは上手いが、少々、短絡的な所と影で権力を振り翳し弱い者を虐げるとろこが目に余り、婚約者候補止まりだった。


王宮の勤め人を脅して婚約者に使われる公費がいくらか調べ、王太子妃として使用できる額、王妃で使用できる額を調べ、使用の計画まで立てていた。


その殆どは自分の欲求を満たすため。


勤め人を脅し、王太子の情報を流させようとした時は慌てた公爵がと目に入ったが、あのまま続けさせても今と結果はそう変わらなかっただろう。


上手く隠して動いていたようだが、完璧に見えて穴がありすぎて影を使えば直ぐに調べがついた。


メッゼリッヒ公爵は、僕が上手くフォローすることを願っていたようだが、アレは婚姻したら我儘が助長するだけだ。


「貴方のそういったところが、婚約者候補止まりにさせた。自身を変えるのではなく周りを変えようとしていた、そのような女性は私の隣に相応しくない」


メッゼリッヒ公爵令嬢はエレナを慰み者にして婚約者候補にすらなれないようにし、傷心の僕に付け入り、いや、ヤケになるだろうから、その隙に婚約者になろうと考えていた。


王太子妃という立場に固執している。

愛されなくても構わない。それは、高位の貴族令嬢としてはよく教育されているとも言えるが、虚しくないのだろうか。


その計画と並行して元平民の男爵令嬢を学園に編入させ王太子に取り入られるようにしろと唆した。


珍しい女が好みなら純粋に見える元平民の男爵令嬢なら都合が良いと考えた。

僕が手篭めにするか、好意を寄せればいい、エレナから引き離し僕と男爵令嬢が通じ合った所で、男爵令嬢では正妃になれないと解らせ、自分が正妃となり側妃に男爵令嬢を召し上げさせるか、公爵家の養女にして結婚式の日に入れ替わることを考えたいたらしい。


どの計画も馬鹿馬鹿しく成功させるのは難しかっただろう。


それも、僕の行動ありきの計画だ。

数年、婚約者候補としてお茶会で会ってはいたが、僕のことは見ていなかったから、そんな雑な計画が成功すると思ったのか。


「ふっ、ハハハ!お前馬鹿じゃねぇの?それでよく婚約者候補になれたな。公爵に泣いて頼んで入れてもらったのか?さっさと足開いて手篭めにしてもらえば今頃は側妃になれたのにな」


いや、足開かれたら普通に引くだろ。

つうかフェルディナント伯爵令息は黙ってろ。


マクリオ男爵令嬢は小説のように元平民の男爵令嬢が王子様に見染められ王妃になる物語を夢見ていた。


商家などの裕福な平民や学園へ通う資金の調達が難しい下位貴族が通う学園にいたところをメッゼリッヒ公爵家からの支援でノブル学園へ編入することができ、夢を叶える良い機会だと考えていた。


最初は上手くいった。

練習がてら、子爵家や伯爵家の令息までは簡単に籠絡できた。

侯爵家の令息は難しかったが、次男だとコロッと靡いた。


それなのに王子には想い女がいて何をしても近寄れない。


メッゼリッヒ公爵令嬢に相談すると、存在を知ってもらうために、もう少し大胆に行動した方が良いと言われ、その通りにすると王太子に存在を知ってもらえたから相談するようになった。


それでも最近は、自分を踏み台に王太子に取り入ろうとしているメッゼリッヒ公爵令嬢に嫌気がさし、今回の計画も自分が責任を負わされると考えて計画外のことを実行に移した。


それが、薬の混入。


公爵家の令嬢が主催したガーデンパーティーで問題が起これば顔に泥を塗ることができる。


二人きりで会う時は上から目線で命令ばかりし、協力もしてくれなくなったから陥れようと考えていたらしい。


互いに足を引っ張り合い、堕ちていくなんて馬鹿しかいないみたいだな。



いつの間にか来ていた学園長には近衛騎士のカイから説明が済んでいて、顔を青ざめ今にも倒れそうになっている。


その場は近衛騎士のネイトに任せエレナの所へと向かう。


氷の壁、想定以上の威力で陣が発動したようだ。

中のエレナは怖がっていないだろうか。

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