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兆兆発止  作者: ぱんろう
首都警察邁進編
5/150

5話:訓練の日々

警察学校の朝は早い。午前6時にはグラウンドで点呼がされる。全体でやる朝の体操が終われば、朝食まで自由時間になるが、各々体を動かしてトレーニングをしている。朝食が終われば、制服に着替えて、今度は授業が始まる。首都警察の制服は、紺色である警察の制服と違って、全身黒色なのが特徴的だ。授業においては、法律や警察に関連したことはもちろん、兆能力の種類や対策などを叩き込まれる。午前の授業が終われば昼食の時間だ。基本グループで固まって昼食をとる。これによってグループ内の結束を少しでも高めることができる。秀助たちもグループで固まって、主に秀助と善俊が談笑をとりつつ昼食をとっていた。

「午前中は眠かったな。」

「とはいえ、寝ると一発不合格だからね。実際何人か教室を追い出されていた。」

「…」

みつねがちらちらと2人を見ていた。会話に参加したかったのだろうか。秀助はそれを察してみつねに話しかけた。

「みっちゃんはどうだった?授業。」

「み、みっちゃん!?」

呼ばれ慣れないあだ名にみつねは困惑した。その反応を見て、秀助は謝りながら弁明した。

「い、いや、あだ名で呼ぶほうが親密になりやすいかなと思ってさ。雄康は…ヤスってのはどうだ?もちろん嫌なら普通に呼ぶけど…」

「…勝手にしろ…」

雄康は興味なさそうに答えた。そういえば、グループを組んでから雄康としっかりコミュニケーションをとれていなかった。しかし秀助は、雄康から「これ以上は話しかけるな」という圧を感じていた。そうしているうちにみつねが勇気を出して口を開いた。

「わ、私はみっちゃんでいいよ!しゅ、しゅう君!」

今度は秀助が困惑した。

「しゅ、しゅう君?なんか照れるな…」

「君があだ名で呼ぼうって言ったんだろ?いいじゃないか。しゅう君。」

グループは少し和やかな雰囲気になった。あだ名で呼び合うことは確かに効果があったようだ。そうしているうちに昼食の時間が終わり、午後の訓練が始まった。午後は、主に実技科目が実施される。逮捕術を始めとした武術の科目だ。それが終わる頃には皆へとへとになり、夕食は死んだ顔で食べている。そのような日がしばらく続く。


いつものように午後の訓練が終わり、秀助と善俊は部屋で談笑していた。

「試験官は首都警察官じゃないよな?そんなに人手不足なのか?」

「なんなら、この合宿は首都警察の管轄外で、警視庁の管轄だよ。それだけ首都警察って忙しいんだよね。」

「ふーん、そんなもんなのか。」

「…お前ら、そろそろ寝ろ。うるさくてかなわない…」

ベッドで横になっていた雄康が、覆いかぶさっていた布団から顔をだして2人を注意するように言った。

「ああ、すまないね。それじゃ、しゅう君、もう寝ようか。」

そう言って善俊はベッドにもぐりこんだ。

次の日、いつものように午前の授業を終え、昼食もとった合宿参加者たちは、グラウンドに集められた。そこには付き添いの警察官と、善信がいた。

「諸君、今日はパトロール訓練を実施する。君たちはこれから付き添いの警察官と一緒に町をパトロールする。もしかすると、本当の犯罪に対応することにもなるかもしれない。だが、それでも冷静に対応できるかどうかが重要だ。質問は?」

善俊が手を挙げた。

「兆能力犯罪が起きた場合どうするのでしょうか?」

「いい質問だ。兆能力犯罪については付き添いの警察官や首都警察官が対応するから何もしないように。だが、兆能力犯罪なんて白昼堂々と行われるものではない。むしろ影でばれないように行われる。だからこそ、君たちが目指す首都警察官が血眼で捜査するのだ。」

「質問に答えていただきありがとうございます。」

「他にはなさそうだな。それでは、各自付き添いの警察官とパトロール訓練を開始してくれ。君たちが問題なく帰還できることを願っている。」

そう言って善信はグラウンドを去った。

「よし、お前ら揃っているな。」

中原がいつの間にかきていた。大きめの地図を所持して。

「早速行こうか。俺たちがパトロールするのはこの地区だ。」

そう言って、地図を広げながらこれからパトロールする場所を指さした。

「ここまではパトカーで向かって30分だ。当該地区に着いたら、パトカーを降りてパトロールする。あそこに停めてあるから、先に乗っててくれ。後で向かう。」

そう言って、小走りでどこかへ行った。

「それじゃ、言われた通り僕たちはパトカーに向かおうか。」

4人はパトカーへ向かおうとした。そのとき、善俊は靴紐がほどけているのに気が付き、結び直そうとした。

「すまない。靴紐を結ぶ。先に向かっててくれ。」

3人は言われた通りパトカーへ向かった。善俊は靴紐を結んでいる。善俊の前に、一人の警察官が立ちはだかった。


「おやおや、出来損ないの弟君?そんなところでしゃがんで、落ち込んでいるのかい?」


嫌味ったらしく話しかけたのは善俊の兄だったらしい。

「お兄様…!なぜここに?」

「おい。川路善治警部補だろ?身の程をわきまえろ。お前はまだ警察官ですらないんだ。」

「す、すみません。善治警部補。靴紐を結んでいました。」

「今日はお父様に用事があって来ていたんだ。そうすると、見覚えのある顔がいるじゃないか!東京大学にさえ合格できなかった出来損ないがな。」

「…」

善俊は唇をかみしめたが、何も言い返せなかった。

「川路一族は代々、国家公務員総合試験に合格し、華のエリート街道を進んできた。なかには警視総監まで昇りつめたのもいる。それなのにたった一人、前座でくじいた奴がいたんだよぉ。」

善治は続けて言った。

「お前だよ。お前!ふざけやがって!お前は一族の恥さらしだ!それなのにまだ警察の道に進もうというのか!?恥に恥を重ねやがって!」

どれだけ侮辱されても、善俊は言い返すことができなかった。そのとき、善治を止める人物がいた。

「おい、お前。とっしーとどういう関係か知らないが、その辺にしておけ。」

秀助であった。

「ああ?なんだお前。上官に向かってその態度は感心しないぜ?」

「それは失礼しました。ですが、友人が侮辱されているのを見て、そのまま見過ごすわけにはいきません。」

空気がピリピリし始めた。と、そのとき、

「おい、お前ら何してるんだ?って善治じゃないか。ここで何しているんだ?川路警視正はすでにお待ちだぞ。」

中原がやって来た。どうやら、善治とは顔見知りらしい。

「ああ、そうですか。すみません。少し生意気なガキに絡まれてしまいまして。」

「そうか。後で注意しておくから、早く行け。」

「はい。ていうか不合格にしてくだざい。」

吐き捨てるように去っていった。最後まで秀助を睨みながら。中原は秀助の方を見ながら言った。

「お前何やったんだ?」

「いえ、何も。ただ、友人を守ろうとしただけです。」

「そうなのか?善俊。」

「余計なお世話です。早くパトロールに行きましょう。」

善俊はかなり立腹しているようである。

「…あー。お前、兄弟のやり取りに口をはさんだな?」

「それの何が問題なのですか?」

「説明していると時間がねぇよ。とりあえずパトカーに乗れ。」

秀助らのグループは、首都警察学校を離れた最後のグループであった。

パトカーは町を走っている。車内は静かであった。秀助は善俊を見ていた。秀助にはどうしてもわからなかったのだ。善俊が不機嫌になる理由が。

すると中原が、

「おい。お前ら。窓の外を見ろ。いいか。川路警視正も言っていたが、兆能力犯罪ってのは堂々となされるもんじゃない。その捜査には注意深い観察力が必要だ。日頃から相手を観察する癖をつけるんだ。」

秀助はそう言われて窓の外を見た。人々が町をいきかっている。講義を終えた学生の集団、カップル、そして子どもを連れた一人の女性。秀助はとりわけその女性に、何か思うところでもあるかのように見ていた。

しばらく走った後、秀助らのグループがパトロールする地区に到着した。きれいに整備された町で、銀行や宝石商などが見える。中間階級向けの町だ。とてもじゃないが犯罪が起きるとは思えない。

「パトロールのチュートリアルにはうってつけの町だ。まず何も起きないから安心しろ。」

そう言って中原はパトカーから降りた。4人もそれに続く。それからは、しばらく無言でパトロールの訓練がなされる。もちろん、私語をしてもよいものでもない。それでも、先ほどの件があってか、気まずそうな無言が続く。そのとき、

「やあ、」

「おまわりさん、」

「お勤めご苦労様です。」

3人組の男性が話しかけてきた。話をなぜか3人で分担し、さらに奇妙なことに同じ服装をしている。

「ああ、どうも。お散歩ですか。」

「はい、」

「まあ、」

「そんなところです。」


(なんなんだこいつら…)

5人全員同じことを思った。それほど奇妙だった。

「それでは、」

「私たちはこれで。」

「お仕事頑張ってください。」

そう言うとどこかへ歩き去っていった。また奇妙なのが、3人は同じペース、歩幅で歩くのである。5人たちはその男性たちが見えなくなるまで最後まで見送った、というよりかは気になってずっと見ていた。そして何事もなかったかのように再びパトロールを続けた。しかし再び無言の状態になり、ついには巡回ルートを一周するまで続いた。

「まあ、こんなもんだろ。特に異変もなかった。このままもう一周して、今日のパトロール訓練は終わりだ。」

中原が巡回路のほうを指さしながら歩き始めようとしたそのとき、

「きゃーーーー!!」

女性の黄色い声が聞こえた。皆がそっちの方を向くと、銀行で2人組の男が拳銃を手にして銀行員を脅していた。銀行強盗である。


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