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兆兆発止  作者: ぱんろう
首都警察邁進編
3/150

3話:合宿初日

秀助は十兵衛に教えられた通りの集合場所に来ていた。手続きのもろもろは十兵衛がしてくれたらしい。秀助は特にこれといったことをせず、ただ都内某所に位置する集合場所に訪れたのである。高層ビルがあり、そこには多くの人が三々五々に集まっていた。少なくとも1000人は超えている。

「こんなに首都警察志願者がいるんだな…そうなると、頑張らなくてはいけないな。」

志願者の人数に驚いた秀助は、改めて身を引き締めた。そこに優しく声をかけてきた男がいた。


「やあ、君も志願者なのかい?」


男は身だしなみがきっちりとしている。髪型は七三分け、服に一つのしわもない。その目はとても澄んでいて、嘘をついたことがなさそうなイメージを抱くほどだ。

「お前だれだよ。」

そんな男に対して口の悪い返事をする秀助。まるで対照的である。しかし、そんな返事でも嫌な気を見せず、素直に答える。

「僕は川路善俊。僕の一族は代々警察官でね。その中でも僕は首都警察官になりたいと思ったんだ。」

聞いてもいないことまで話し始めた。少し鬱陶しいところもあるが、誠実な点に秀助は惹かれたようだ。秀助も名乗る。

「俺は五味川秀助だ。お互い頑張ろう。」

秀助は握手を求めて手を差し出した。善俊はその手を握り返した。

「ああ、できれば両方合格したいところだね。」

そうしているうちに、一人の男がメガホンでアナウンスを始めた。

「首都警察合宿に参加する予定の方々、合宿の説明をしますので、建物に入ってください!」

そういうと、高層ビルの中に入っていった。多くいた志願者はその男に続いて、ビルの中に入っていく。こんなに多くの人々を、驚くべきことに収容することができるエントランスで合宿の説明が始まった。

「それでは、首都警察志願者の諸君、これから説明会を始めよう。」

先ほどアナウンスしていた男とは別の男であった。壮年で風格がある。若い志願者はその男を、目をきらきらさせながら見ていた。

「かっけぇ!」

「すごいな!首都警察になれたら、俺もあんな風になれるのかな?」

少しざわめき始めたが、その男はそれを諌めようとした。

「こらこら。首都警察官に限らず、警察官たる者、品行方正でなければならない。人の話は黙って聞きなさい。」

それは決して厳しいものではなく、むしろ優しいものであった。そして、その発言を聞いてその場にいた人々は皆静まり返った。その中で一人だけ男の発言に感嘆し、思わず一言こぼした者がいた。

「さすがです。お父様。」

「え!?お前の親父かよ!?」

善俊であった。どうやら、男は善俊の父であったらしい。

「そうだ。名前を名乗らなければな。私の名は川路善信警視正だ。よっしーとでも呼んでくれ。」

先ほどの静けさがより深まった。続けて説明を始めた。

「この合宿は、君たちが立派な首都警察官になるため行われるもので、試験のみならず研修も兼ねている。一か月間と短い期間だが、この合宿を終えることができれば、君たちははれて首都警察官だ。試験官の警察官が一か月間、君たちをふるいにかける。少しでも落第点が見られればその場で不合格だ。」

それを聞いて人々はざわめき始めた。

「おい、思った以上に厳しそうじゃないか?」

「いや、失敗しなければいいだけの話だろ?なら大丈夫だろ。」

すると善信は無慈悲に言い放った。


「今ざわざわした奴、不合格だ。」


「!!」

再び静まり返った。先ほどの注意とは異なりあまりにも厳しさの感じられる発言であった。

「言っただろう?品行方正でなければならないと。一度注意されたならば、一度で理解しなさい。試験はもう始まっているんだ。」

(なるほどな。どうやらこの一か月間一筋縄ではいかないらしい。)

秀助はそう思いつつ黙って姿勢を正した。その間に数人が不合格者としてその場を去っていた。

「では、話を元に戻そう。これから、君たちはこの建物で生活や訓練、勉強をする。この建物は警視庁があらゆる技術を寄せ集めて建てた警察学校というわけだ。この一週間、この場所で将来の首都警察官としてふさわしい行動をとるように。」

「それでは、まず3人1組のグループを作ってもらおうか。一か月間そのグループで生活してもらう。1グループにつき一人の現職警察官が付き添うことになる。」

そのとき、別に誰に言われたわけでもなく、人々は動き始めた。皆真面目に振る舞おうとしているのである。この間にも試験官でもある警察官が目を光らせ、不合格者をあぶりだしていった。

「まずは俺たちで組もうじゃないか。よっしー。」

「おいおい、それはお父様のあだ名だよ。僕のことはとっしーとでも呼んでくれたまえ。」

これで2人は決まった。あと一人を探そうとしていたら、

「あ、あの…」

声をかけてきた人物がいた。それは女性であった。髪で目が隠れていて、おどおどしている。

「わ、私でよければ一緒にグループを組んでくれませんか。」

二人は驚いた。急に女性に声をかけられたからである。善俊はおびただしい量の汗をかいていた。そして告白を受けた男性のように返事をした。

「あ、ああ。僕たちでよければぜひ。」

秀助は辺りを見回した。男性のみのグループ、女性のみのグループが多い中、彼らは明らかに異色であった。

「俺たちはこれから一か月間共に行動するんだ。おそらくトイレも風呂もな。そりゃ別々なんだろうが、性別が一緒の方がいろいろやりやすいんじゃないか?」

秀助は遠回しに断ろうとしている。照れの裏返しでもあった。

「でも、もう他にいなさそうだし…」

確かにそうであった。もともと女性の数が少ないのだ。おそらく集合前からある程度グループが形成されていたのだろう。彼女は人見知りゆえかあぶれていたのである。

「どうやらそうらしいな…それなら仕方ないな。」

「本当はちょっと嬉しいんじゃないか?」

善俊の小言に、秀助は必死に否定した。

「違ぇよ!」

秀助は顔を赤らめてそっぽを向いていた。そのとき、善信が再び話し始めた。

「どうやら、だいたい決まったらしいな…おや?一人まだ決まっていないようだ。」

一人がぽつんと立っていた。周りはその男に目をやる。常に無表情で少し不気味であった。

「2人組のグループはなさそうだし…余ってしまったか。ならば、4人組のグループでやってもらおうか。どこか受け入れてくれるグループはないか?」

しかし、その男の周りにいるグループを始め、どのグループも手を挙げようとしない。そんな中、真っ直ぐに手を挙げた男がいた。

そう、善俊である。

「はい!」

「な!?」

秀助は思わぬ不意打ちをくらった。

「では君、あのグループに入ってくれ。」

無表情男は頷いて秀助らのグループに向かって歩いた。秀助はひそひそ声で話しかけた。

「おい!なんで手を挙げたんだよ!」

「そりゃ君、彼が可哀そうだと思ったからじゃないか。」

「まあ、そうだがよ…4人ってなると大変そうだな…」

「賑やかでいいじゃないか。一か月間皆で頑張ろう!」

こうして、秀助、善俊、人見知りの女、無表情男のグループが結成された!波乱万丈の一か月間が本格的に始まるのである!


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