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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
0-1幕 ゲームスタート、王都への道のり
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20.にゃーんふたたび

今回もちょっと短め。にゃーん。

 夕飯や風呂などを終えて戻って来れば、ゲーム内は日が暮れてすっかり夜になっていました。

 ジュリアは《VRクラブハウス》に行って、紫音ちゃんから演技指導を受けています。出来上がりが楽しみですね。

 ということで、予定通り私一人で王都の探索開始です。何があるのやら。


「さて、と……」


 夜の王都はまた一風変わった雰囲気になっており、軒先に吊るされた無数の提灯が明かりを灯し、夜道を歩く人々も様々な提灯を手に歩いています。

 商店街の多い十番街の明かりは消えており、宿場が多いと聞く十二番街、遊郭など娯楽施設の多い一番街の方は活気に溢れているようですね。

 ルヴィアが昼に精霊のイベントをこなした祠があり、昼界各所の寺社などの分霊を祀っている神社街こと祭祀街である八番街は真っ暗ではあるのですが、何処となく神聖な空気に満たされていました。

 ここも何かしらのイベントが起きそうですが……と、歩いていて四つある住居街の一つである七番街を通り六番街。ここは港町になっているようです。

 《四方浜》で頑丈な船が欲しい、という話がありましたがここに関わって来るのでしょうか。とはいっても、まずはこの王都での問題を解決してからでしょうけれど。


「こちらは特に何もないようですね。強いて言えば……」


 港の波止場近くまで歩けば、昼に商店街で販売されていた釣り竿を購入した面々が夜釣りに励んでいますね。

 ……どうやら夜だとイカがよく釣れるみたいです。何人かが同時に釣り上げてました。

 イカを使った料理……乾燥させてスルメイカ……いかそうめん……スルメイカは傾向的にルプストが好みそうですが。

 レシピに載っていたら作ってみましょうか。もっとも、私が作るよりもクラフター組合の人たちに聞いた方が早そうですけれど。


「……ここから先は……まだ行けませんね。というより、夜だからでしょうね」


 五番街も住居街のようですね。夜なのもあってか入れなくなっているようです。

 《来訪者》達がここをうろうろするのもなんですからね……昼にまた機会があれば来てみましょうか。

 他のところに行くにはちょっと遠回りになりますが、一度この王都の中心である《天竜城》の方へと行ってみましょう。

 昼までであればもっと綺麗に見えたのでしょうけれど、それは仕方ないとして……それでも、灯篭による明かりが城内に灯っているのがわかります。

 仄かな明かりで照らされているのが、和城としての夜景を見ているようでとても綺麗で……あれ?

 王城を囲む深いお堀の向こう、塀の上に小さな影が乗っているのに気づきました。しかも、あれは……


「あの時の黒猫……?」


 一番道路の夜で遭遇した、二尾の黒猫がちょこんと座っていました。

 黒猫は私の姿を見つけるなり、にゃあ、と一鳴きして門の方へと走っていきました。

 ……デバフは……確認しましたが、付いていない。ひょっとしてですが私を呼んでいるのでしょうか、とりあえず追い掛けるようにして門の方へと向かっていきます。

 門はわかりやいように王都西門のある九番街側にあります。ここにだけ丁寧に作られた、城内へと通じる橋と門があります。

 このお堀も結構深くて広いんですよね、何か釣れたりしないでしょうか。


「にゃーん」

「ここにいましたか」


 ……鳴かれるたびにステータスチェック。いえほんと、警戒しないとあんなデバフ乗せられると困りますからね。

 門前の橋にちょこんと座っていました。時間が時間、または、まだ王都までそこまで到達していない人も多いのでしょう、他に人目はありません。

 しゃがんで、そっと黒猫へと目線を合わせて声を掛けます。ちんまりとした子猫で、デバフを掛けなければ本当に可愛いんですけれど……

 頭を撫でようと手を伸ばそうとすると……


「にゃふ、やあっと到着したにゃあね」

「喋っ……た!?」

「そりゃあ、にゃあ達もちゃあんと……見てるにゃし、こういう風に化けているのもいるにゃ」


 唐突に猫が人語を話したと思えば。にやーっと笑みを浮かべつつ立ち上がり、私の顔を見つめながら近づいてきます。

 二本の尻尾がゆらゆら、と目の前で揺らしていて。ぴょこん、と跳ねて中で一回転したと思えば。

 その一回転の内に一気に大きくなり、人の大きさにまでなったと思えば……そこには、衣装は昼に見た時はまるで違う恰好をした紗那様と瓜二つの少女が居ました。


「えっ、紗那様だったんですか!?」

「にゃっははは、最初はみんなそーいうにゃーよねぇ」


 思わず私が声を上げれば。一見すればチャイナドレスをレオタードにしたようなデザイン、その上に薄手のスカートを穿き、フリルの付いた大袖を付けたデザインの衣装を纏い。

 それでいて紗那様と一緒の顔であり、とは言っても頬にネコ髭のような赤の線模様が付いており、よく見れば紗那様とはほんの少し違う顔つきをしているのがわかります。

 少女はゆっくりと背伸びをしますが、ちょっと衣装がところどころ際どい……。雰囲気も昼に見た紗那様とは全く違い、かといって応龍だったサクさんとも違う印象を持ちます。


「……さて、良く来た《来訪者》。にゃあは紗那の影と言ってもいい存在の《夜霧(よぎり)》と言うにゃ。まあ表向きとしては紗那の使いで通るにゃあね」

「夜霧さん、ですか。ええと、《来訪者》としての代表であればルヴィアが―――」

「にゃーにゃー、あれは表向きに紗那が挨拶してたにゃ。にゃあは《世束》で逢ったおまえに言ってるのにゃよ」

「……私に、ですか?」


 びしっ、と私に向けて指を立てて夜霧さんが制しました……この様子だと、どうやら私に用があるみたいですね。

 丁寧で礼節のあった紗那様とは大違いで、かなりフランクに接してくる方です。言う通りの影どころか、全く正反対という感想が浮かびます。


「にゃ? あの時見た片割れの槍術士はいないのにゃあね?」

「ジュリアでしたら、今はいないのですが……」

「そうなのにゃーね。ま、それはさておき、ひとつお願いがあるにゃ」

「私で出来る範囲で、でしたらお受けしますが……」

「ま、簡単にゃ。にゃあにとっては死活問題なのにゃが、魚を持ってきてほしいにゃ」

「……魚、ですか」

「魚にゃ。できれば川魚とかおいしいものを頼むにゃ」


 魚。魚というか猫の好物ですね? お腹を空かしている、ということ……?

 とりあえず理由を聞いてみましょうか……それくらいであれば、明日に釣竿を手に入れて、釣りをするのですが……。


「あの、どうしてまた?」

「紗那も忙しいのはわかるにゃあが、にゃーをあちこちに視察やら斥候にやら使うにゃあからくたくたにゃ。だから《来訪者》ににゃーのおやつを請求するにゃ」

「は、はぁ……わかりました」

「にゃう! それじゃあよろしく頼むにゃ」


 ……ひどく個人的な理由のお使いのような気がします。それでも言い分を聞く限りは私達が来た事によって、夜霧さんの仕事量も増えているのでしょう。

 《来訪者(プレイヤー)》が、何の手違いでもこの世界の住民に対して何かしないとも限らないので、その見廻りだとも思いますから。

 そんな一見頑張り屋さんのようにも思える夜霧さんのためにも、魚釣りを頑張るとしますか。


「ああ、それとにゃ」

「まだ何か……?」

「明日くらいに紗那からお願いがありそうにゃ。今日はもう遅いにゃーが、釣りをするなら田園の方で餌を取るといいにゃ」

「……それで釣れる、なるべく品質の高いお魚が欲しいということですね?」

「大当たりにゃ。特に田園の方で採れる魚はとってもおいしいのにゃー」


 うん? ……さらっと重要な情報を言いましたね?

 つまり、クロニクルミッションの進展が明日にあるということです。それに備えて準備するついで、田園の方で釣りをしてきなさい、と。

 ……そういうことですよね、たぶん。


〔ダイレクトクエストが発生しました:おやつを要求するにゃ!〕


○おやつを要求するにゃ!

 区分:ダイレクトクエスト

 種別:イベント


・夜霧がおやつを欲しがっている。良質な魚をできるだけ多く届けよう。

 報酬:夜霧の好感度(小)


「よし、それじゃあ頼んだにゃ。いっぱい持ってくるにゃーよー!」

「はい、できるだけ沢山持ってきますね……」


 それだけ言うと、サクさんと同じく私へのフレンド申請と専用チャットの招待が来ました。集まって届ける時はこれで連絡が欲しい、ということでしょうか。

 言葉通りならあちこちを飛び回っていますし、私達がここに来てもいないのなら空振りにもなるので……


 夜霧さんは私への申請が通ったのを確認すると、再び子猫の姿になるなり塀の上へと昇ってどこかへと走っていきました。

 見送ってから一息。騒がしい子です……明日やることはまず釣りの準備と餌探し、そして夜霧さんの言う釣りのできる場所を探す事、ですね。


 少し早いですが、今日はここまでにしておきましょう。

 昼にボス戦もやっているわけですし、ちょっとジュリアのレッスン風景でも見に行ってみるとしましょう。

紗那と夜霧の関係についてもおいおい……にゃーん。


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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜
相方、杜若スイセン氏によるDualChronicleOnlineのルヴィア側のストーリーです。よろしければこちらもどうぞ。
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