21.田園通り先駆けミミズ漁り
VR釣り勝負。
次回からいよいよ新章突入となります。よろしくどうぞ。
さて翌日です。朝食や身支度を終えてログイン。
昨日のジュリアですがログアウトした後に見に行ったのですが……結構なダメ出しをされてズタボロになっていましたね。
それでも素地は出来ているらしいので、細かく直していけばいいとのこと。現在の路線を維持し、お嬢様騎士でやっていくつもりのようです。
あとは実際に動きながらできるかどうか、ですね。昨夜ログアウトした地点である、《転移門》広場前で遅れてログインしてきたジュリアと合流。
後々関わりそうな場所をぐるっと回った後……八番街の商店で釣り竿を買いました。
「餌は無くても釣れますが、餌があれば対象を絞り込めるのと品質が上昇する、ですか」
「一般的な釣りと似たようなものですわね。となると、やっぱりまずは餌の調達から……」
「そうでなくても、クエストの条件的や説明的にも田園にある河川からいい魚、特に夜霧さんが好みそうなものが釣れると暗示してあるようなものですし」
「……行くしかなさそうですわね」
釣り竿の仕様を一通り確認してから、九番街側の王都関所を通って田園地帯へ。
道自体は三番道路にあるぼすうさぎのいた広場……うさぎ広場なんて呼ばれているところから一本道なのですが、横道に逸れるとまるで迷路のようになっています。
とはいえ、周囲を見渡せば王都の位置は掴めます。迷ったら王都を目印にして歩いていけば脱出できるあたり、初心者向けのダンジョンに近い雰囲気がありますね。
閉塞感がない……のはいいのですが、道がとても複雑なので迷いやすくなりすぎてますね。そして、田圃の中には……。
「……うわ、いますね。当然のように魔物化してますか」
「ゲンゴロウ、蛙、オタマジャクシ……ですわね。蜻蛉……もいそうですが、もう少し深いところでしょうか」
はい、当然の如くですが四月の田植え前で水だけ張られたその中には水棲の魔物がうじゃうじゃと蠢いています。
しかもカエルは時々陸に上がってきていますね。律儀に水属性と土属性の二種類、それぞれミドリカエルとウシガエルと色で判別できます。
通るだけであればカエルに注意すればいいだけですが……見回していると、私達を視認したゲンゴロウが何をとち狂ったのか水面を割って弾丸のように突っ込んできました。
「っととっ!?」
「危ないですわね!?」
刀を納めたままだったので勝手に居合が発動し、カウンターで叩き落しました。
一撃で落としたゲンゴロウは足下に転がりますが……多分、本当に特攻弾丸みたいなものなのでしょう。
あ、ついでに《解体》があれば釣り餌にできるようですね。ついでに拾っておきましょうか、釣り餌によって釣れるものが変わるのならぜひ。
「人を見つけると飛んでくるみたいですわね、このゲンゴロ……あいたっ!?」
「ちょっと慎重に進まないといけませんね、これ……私は小振りなので平気ですが……」
「私は魔術で撃ち落とすしかなさそうですわね……ああ、だから《フレイムスロア》が」
「あっ、それ便利そうですね」
ジュリアが《索敵》で飛んでくるゲンゴロウを察知してから広域放射の《フレイムスロア》を放ちます。
そうすれば放射される炎の壁で焼かれたゲンゴロウが届くことなくポトリと落ちていきました。ついでに私を視認していたゲンゴロウも一緒に。
こうして使えば確かに便利ですね……鑑定する間もない速度ですが、おそらく風属性なのでしょうか。
INTに一切振っていないジュリアの魔術で落ちますからね。脆いのと属性弱点があるからでしょう……脆くて対処方法さえわかれば弱い分、ウサギ達よりもちょっと多いくらいの経験値しかないですが。
ということは、道を間違えればこれが群れ単位で飛んでくる……? 蝗の群れではないですし、視覚的に酷い事になりそうですが。
「ですけれど、餌とは使えなくなりますわね。黒焦げですもの」
「餌分は私が集めましょう、自衛優先で」
「わかりましたわ、ではミドリカエルお願いしますわ」
「……丸呑み?」
「嫌な事を言わないでくださるお姉様!?」
魔術で焼いたゲンゴロウは黒焦げで煙を上げていますからね。魚も寄り付かないでしょう、流石に。
さて、進んでいると本格的に私達の前に立ちはだかるようになり始めたミドリガエルとウシガエルですが、属性不利なジュリアなので私が対処に回ります。
大きさはそれぞれ前者が手のひらサイズ、後者はその1.5倍くらいでしょうか。現実のものと比べると流石に大きすぎますが。
あんまり大きすぎるとそれはそれで対処しづらいので、この辺は調整でしょう。
ミドリカエル Lv.16
属性:水
状態:汚染
ウシガエル Lv.16
属性:土
状態:汚染
……いえ、これ大きくなってるのは汚染と考えるのが妥当でしょうね。
汚染というのはクレイジーな兎や猪と違い、魔力的な要素で身体を汚染されたもの……らしいです。水質汚染とかそういうのではなく、そもそも魔力的に汚染されているからとか。
長い水棲の後に出てくるのであれば、水に宿る魔力的な要素に影響されたと考えれば特に違和感はないですね。これも仮説ではありますが。
とりあえず近寄ってきたミドリガエルへと手早く斬撃を二度。大きいとは言え的が小さいので最初は苦戦しそうですね。
……いえ、私はまあ……慣れているので。振り子の先に付いたボールに木の棒を当てるとかもしてましたし。
「っ、と。ほっ……」
さすがにレベルが高いだけあって簡単には沈んでくれませんか。飛び掛かりというか頭突きのようなモーションを避けてからもう二度、三度と切りつければようやく。
真っ二つになりましたが、これでも《解体》は働くようです。とりあえず……取れたのは蛙肉ですか。
鶏肉のような味がするとかなんとか。ある程度数を集めたらクラフター組合の調理師さんのところにでも持って行ってみましょう。
とりあえず先にウシガエル……こちらは体力が高いですね。ミドリカエルよりは動きは鈍いのですが、私が二度斬り付けるとおもむろに口を開けました。
「ジュリア、ちょっと横っ跳び」
「と、なんです―――っわぁ!?」
「なるほど、ウシガエルは固定砲台のようなものと……」
「ここ、意外と難度高くありません?」
「そっ、よっ、と。ですね、遠距離攻撃に特攻弾丸と格段に厄介です」
口に含んでいたであろう泥の塊をジュリアがいた場所に向けて吐き出してきました。横飛びの指示を聞いたジュリアは難なく回避し、どちゃ、と鈍い音をさせて泥の塊が着弾しました。
どこから飛んでくるかわからない特攻ゲンゴロウに泥弾砲台でタフなウシガエル。そして前衛にミドリガエルと。中々に手堅いラインナップですね。
ダンジョン化したらどれだけ厄介な事になるのでしょうか。とりあえず一通り始末して、できるだけゲンゴロウに視認されないように道の真ん中へ。
ちなみにウシガエルからも蛙肉でした。もちろん、ウシガエルの、ですが。
「……あっ、ミミズですわ」
「ああ、ここに……私からは確認しづらい辺り、《採取》の面目躍如でしょうか」
「そのようですわね、あちこちに採れるポイントが見えますもの」
「それではしばらくミミズ集めを。私が警護しますので」
「《採取》がうなぎ上りに上がっていきますわぁー!」
「……ずっと上げられませんでしたもんね」
ここにきてこの田園地帯に来た目的のものを確認。道の上とはいえ、ちょっと田圃寄りの位置なのでゲンゴロウに警戒……あっ、案の定突っ込んできたので居合で撃退しておきます。
普通はミミズは嫌がるもの……と思うでしょうが、私達は田舎育ちですからね。この手の土いじりや釣りなど大自然相手の遊びなんてお手の物です。
さくさくと手慣れた様子でミミズ集めもとい《採取》のスキルレベル上げに没頭するジュリアを余所に、私は寄って来るカエルやゲンゴロウの対処を続けていきます。
……ずっと上げる方法を模索し続けては空振りになっていましたからね。ジュリアは結構夢中でミミズ掘りしてます。
あまりに多く取れ過ぎたら、港で釣りをしていた面々にも配ってあげましょうか。海釣りでも餌の基本になりますからね。
「……ふふ、豊作ですわぁ」
「ミミズは40匹程ですか。《採取》はいくつほどに?」
「うーん、なかなか上がり辛いようですわね。とりあえず6くらいには」
「採掘を上げる時も苦労しそうですね。道すがらでも集めながら目的の河川を探しますか」
「肝心なのはそちらでしたわね……ああ、あちらでは?」
「外れの雑木林ですか、行ってみましょう」
十数分程ミミズ掘りを楽しんだジュリアが戻ってきました。では、次はそのミミズを使う良質の魚が釣れる河川を探さないと。
一応現在の方角的には、王都西の門を出てからおおよそ北西に向けて進んでいます。その北東の先には雑木林があり、遠目にそこから迂回するように王都へと川が伸びている様子。
これ、水源はおそらく西の方……世界樹のある小山近くの方でしょうか。汚染的な意味で大丈夫なのかちょっと気になりますね。
ただでさえ田圃に流れ込んだ水の影響を受けてカエルが大きくなったりしていますから……。
「ちょっと駆け足で行きましょうか。昨夜の話の通りであれば今日のどこかでクロニクルミッションが進行するみたいですし」
「そうですわね、釣りって意外と時間掛かりますし……夜になるとそもそも釣れるかどうか」
「夜はグランドクエストに取り掛かりたいですからね。できるだけ進めておきたいですし……明日は学校ですから、昼もどれだけできるか」
「できるだけ早く持って行った方が機嫌も損ねなくて済みそうですし、急ぎましょう」
というわけで、走りやすいように刀の鞘を軽く握ったままに駆け足。
そう、先の会話はとりあえずの建前。いえ、実際にそういう釣りに要する時間というところはあるのですが、それはそれ。
これがやりたかっただけ、とも言えますが……これだけ広い景色の中でやりたかったのが、このあぜ道を思い切り走るという行為でした。
昨日の内にカエデさんとルナさんはやったのでしょうが、私もやります。ゲーム内でのVITの補正もあるので、風を切って走ることが、これほど心地よいこともありません。
「現実よりも早く走れるって気持ちいいですわねぇ!」
「あっはは、現実でもここまで広くて走りたくなる場所ってなかなかないですからねー!」
「そうですわねー! っとと、取り敢えず田圃に落下だけは避けてくださいましよー!」
「わかってますってばー!」
二人して大声で話しながら全力で走り、雑木林の方へと進んでいけば……ああ、ありました。この川でしょうね。
澄んだ水がせせらぎの音を静かに立てながら、遥か果ての王都の水門へと向けて流れていっています。
川の中には魚の姿も視認できます。陽の光を照り返し、銀色に光るものがいくらか目に付きました。
走った疲労感もそこそこに息を整えて、釣りの準備を始めましょう。ああ、気持ち良かった。
「餌が無くなったら取りに行きましょう。《索敵》では……えぇ、鹿と兎がいるようですわね」
「寄ってきたら対処するくらいでいいでしょう。今回の本題はこちらですからね」
「それではお互いに……」
「ええ、わかっていますとも」
準備として《釣り》スキルを取得。釣り竿を取り出して、ジュリアからミミズを、こちらからは一応ゲンゴロウを交換してミミズを釣り餌としてセット。
この時点でお互い目が本気になるので、双方察するようにしつつ、釣り具のセットにあった折り畳みの椅子を展開して座り、釣りやすい姿勢になります。
細かな配慮でしょうね。立ったままでも釣りは出来ますが、VRでも気分的にも足が疲れてしまうので。
できるだけ川の深い場所へと目線を合わせ、力加減を確かめるようにしつつしっかりと釣り竿を握ります。
「「釣り勝負といきましょうか」」
竿を振り、餌が刺さった釣り針を目的のポイントへと投げ込みます。
どちらが良質の魚を多く釣るか。そんな簡単なルールでの張り合いが始まりました。
あちら側で示唆された通りですが、昼世界はバックグラウンドや時代的なところもあって朧○正が大元のイメージになっています。
なので執筆中は大抵は外伝込みでサントラを再生しながらぼちぼちと書き進めています。
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