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神官見習いの日常  作者: 伊代
二章
19/26

二ノ七.それぞれの気持ち

*絵美佳視点です

 ヴィエナ神殿で神子をすることにした。

 そうすれば、ずっとヴィエナちゃんと一緒に暮らせるらしい。


 ただ一緒にいるだけで、神様の力を後押しするブースターみたいな役割を果たすんだって。

 あとは、神官達にヴィエナちゃんの言葉を伝えるくらい?

 退屈そうだから、今いるウトゥヌ神殿でやってるような仕事もさせてもらえると良いんだけど。



 今はその手続きをあれこれしてもらっている最中で、数日後に神官長のミアーノたちとヴィエナ神殿に向かうことになった。


 日本と、成瀬のいる場所へはいつでも行き来できるゲートっていうワープ装置みたいなのも作ってくれるって。

 異世界で知り合いがいるっていうのは色々心強い。

 祭りの日に成瀬に会えなかったら、今頃どうなっていたか分からないからな~。


 そんなわけで、何も心配することなく楽しく異世界で暮らせていけそうだ―――と、思っていたんだけど。


 あの変態の王子も一緒にヴィエナ神殿についてくることになったんだ。

 可愛いヴィエナちゃんのお願いだから、聞くしかない。


 けど、ハッキリ言って王子の第一印象は最悪だ。

 いきなり手を握られたり、キモい事を言われて絶対無理だと思った。

 でも、その後は変な行動はみせないし、人当たりの良い王子様らしく接してくる。

 本人も「あの時はどうかしていた」と謝ってきたから、まぁ水に流してやっても良いんだけど……。


 けど―――。


 女性の見習い神官が「ファレス様、神官長がお呼びです」などと用を伝えに来るとする。

 王子は「そうですか、ありがとうございます」と胡散臭い笑顔で返事をする。

 するとヴィエナちゃんは「女人に微笑んではダメ」と頬を膨らます。


 王子が廊下ですれ違った書類を抱えた女性神官に「落としましたよ」と拾い上げた紙面を手渡すとする。

 女性神官は「ありがとうございます」と赤面しながら礼を言う。

 するとヴィエナちゃんは「あの者に気があるの?」と唇を尖らせる。


―――と言った具合に、独占欲ていうかヤキモチが行き過ぎてる気がするんだ。

 アタシと王子が話すのはあんまり気にならないみたいだけど、本当にいつもベッタリくっついてて、風呂や寝室も一緒にしようとする。

 いくらなんでもと、王子が根気よく説得してそれは防げたけれど。


 二人は昔、夫婦だったと聞いた。

 でも、今は違うわけだし、どうして昔の関係を今も引きずっているのか、アタシには分からない。

 生まれ変わって別人なんだし「昔は昔、今は今」じゃない?

 まー、神様だから人間とは感覚が違うのかもしれないけど、なんか納得いかない。

 これはアタシの嫉妬かもしれないから黙っておくけど。



 それに、もっと気に入らないことがある。

 王子の、成瀬への態度だ。

 王子は成瀬のことが好きって話だったはず。

 なのにヴィエナちゃんが現れてから、成瀬をガン無視している。

 可愛い奥さんが戻ってきたから、もう成瀬のことはどうでも良いのか?

 王子はいつも胡散臭い笑顔を貼り付けていて、何を考えているのかサッパリ分からない。



 だけど、成瀬が王子の行動を気にしているってことは分かる。

 どうでもいい奴に無視されたって気にしないだろうから、成瀬にとって王子はそこそこなポジションに居るってことだ。


 でも成瀬の性格からすれば、黙ってるしかないんだろうなぁ。

 付き合ってるわけでもない中途半端な状態に、元妻が現れたんだから成瀬の立場は弱い。



 ウトゥヌがどうにかしてくれたらいいのに。

 成瀬を溺愛しているのに、慰めたりはしない。

 弱っているところに付け込むのが嫌なのかもしれないし、何か王子に引け目でもあるのかもしれない。


 みんな、腹の中に気持ちを抑え込んでいる。

 それがアタシにはじれったくて仕方がなかった。

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