食人鬼による殺人事件 02
中間テスト前の土曜日、天気は快晴なのにもかかわらずテスト勉強に励む。
姉が戻ってきたら外食しに行く約束なので頑張る。
高校のほうが中学より英語が理解しやすいのはどうしてなんだろうか。
件の食人鬼は二人目に手を出したようで、高校生さらったらしい。
次は大学生に移行してもらうと、襲われるリスクが軽減されていい。いたって市内で起きた事件だ。
んあ、メールだ。しかも2件。
『ごめん、急な依頼と部下から呼び出し。外食は夕飯になりそうです。夕方前には帰るからね。』
これは姉だな。お仕事頑張ってと返信。
『会田、数学がわからないんで教えてくれ。』
久星、私は同じクラスだから知っている。あなたが数学の時間気持ちよさそうに寝ていたことを。
どう返信しようかな。それなりの対価を貰いたいところだ。相手の授業態度的に。
『昼ごはんおごってくれるなら。ハンバーガー、てりやきドリンクコーラで。』
送信するとすぐ返事が返ってくる。
『了解。どこで勉強する?今、中央図書館混んでるぜ。』
図書館にいるのか。お茶ぐらいは家でもだせるな。
『家に来ればいいよ。西平高校の西口まで来たら連絡頂戴、迎えに行く。』
中央図書館とハンバーガーショップと西平高校なら店よっても30分もあれば来れるだろう。どうせ移動手段は自転車だろうし。
『わかった』
じゃあ部屋着から着替えておくか。面倒で寝巻きのままだったしね。
待ち合わせの高校につくと久星他大月と檜もいた。来るなら先に伝えておけよ久星。
「よ」
「よ、じゃない。来る時の人数はしっかり伝えてよね」
「いいかなってさ。お前んとこ、ここから近いの?」
「近いよ。川沿いだし」
大月と檜に目をやる。
二人とも目を合わせない。落ち度があるのは認めているようだ。
「いや、一緒に勉強してたんだよぅ。そしたらいきなりキュウちゃんがアイちゃんの家に行くぞって」
「僕はあなたの連絡先を知りませんでしたので」
別のクラスの二人とは確かにアドレス交換していない。後でしよう。
「……そういえば西平の女学生でしたね。行方不明なのは」
「そうね。十中八九、件の人でしょう」
4人で歩いて家に向かう。マスコミ各社がいっぱいだ。
土日なのに本当にお疲れ様としか言えない。野次馬根性には頭が下がる。
ハンバーガーを片付けて、床によけておいた教科書類をテーブルの上に置く。
ちなみに家の居間はソファーとクッションで床にも椅子にも座れる仕様になっている。
「んで、久星どこがわからない?ってか大月いるなら私いらなくない?」
「あまりの馬鹿さに教えるのが嫌になりまして」
大月はそういって参考書を開く。
どうやらテスト勉強ではなく、自分でこなしている勉強のほうらしい。
檜は檜で数学の問題集を開いて集中し始めた。
「先生の言ってた範囲、こっからここまでだから。ほら、先生作成対策プリント読んで」
「いつの間にこんなの配られてるんだよ」
あんたが寝ている間だよ。
「自分の授業態度を改めるのが一番かと思います」
「だって数字眠くなるし。会田も教えてくれたって」
「いつも会話する昼食時間3人でばっくれるのはどこのどいつだ」
ブーメランが当たって、しばし久星はプリントとにらみ合ってペンで式と格闘する。
そのプリント2枚出来上がったらお茶を出してあげよう。
別の対策プリントに目を落としてルーズリーフに数式を書き込んだ。
「会田」
「何」
「人肉食うのってどう思う?」
「前檜に話した。ほら、プリントに集中する」
タイムリーな話題なのか。
「でもさ、人が人を食うのってなんかやばくね?」
ペンが動いているのを確認して、その問いに答える。
「種の本能として同族食いは遺伝子的に嫌悪感を持つのは聞いたことあるけど。それに確かにやばいわよ、病気とか怖いし。豚や牛でさえ移るかもしれないのに、人だったら感染率格段にあがるだろうし」
大月がそれにつっこんでくる。
「会田さん、その発言はそれらの問題さえクリアすれば食人を許容する考えに聞こえて不穏ですね」
「だってさ、きっと食人する人って3パターンいると思うんだよ。1、飢餓の関係で仕方なく。2、可愛さ余って食べちゃった。3、牛と豚と人どれが好み?で人を選ぶ。私はパターン1を認めるなら他の2パターンも認めたいと思っている。そこには個人的な生理的嫌悪とか本能的な恐怖が混じっちゃうだろうけど」
私からしてみれば、他人の食人より自分の食事事情のほうが大事だから、お好きにどうぞと言ったとこか。
「危険思想ですよ。口にされないほうがいいかと」
「あんたらが聞いてきたから答えたまで」
しばらく沈黙が続く。勉強会だからこれでいいのだけど。
「あのさ、会田……」
「久星」
今まで黙っていた檜が、何かを言いかけた会田の言葉を止める。
「勉強に集中しないと駄目だよぅ。」
「……あぁ、悪い」
もう少しで1枚だ、頑張れ会田。
お茶と姉の焼いたシフォンケーキ。小休止をかねたお茶会。
……男の子って食べるのね。4人で全部食べきるとは。
いつもなら、姉と3日ぐらいかけて食べるシフォンケーキは主に3人の腹の中に消えた。
「ねーちゃん料理上手いんだな」
「うん、凄く上達していた。昔はね卵焼きが半熟じゃなくて生焼けでね、砂糖と塩を同量入れてた」
「妹さんに褒められるなら上達したんだねぇ史緒は」
居間から庭に続くガラス戸のから声がした。4人でそちらを振り向く。
立っていたのは、何度か見たあの全身黒のコーディネートに身を包んだ男性で。一目で姉の関係者だとわかった。
「史緒はいるかい?」
ガラス戸を開けてそう尋ねる彼は見た目は姉と同じぐらい。沙門さんより背は少し低いくらいで特徴は口元の黒子だろうかって問題はそこじゃない。
「悪いんだけどさ、とりあえず中に入れて?オレ、仕事してきたのに捕まっちゃう」
腕に抱えているものをちょっと持ち上げ、平然と彼はニコニコと笑う。
「行方不明の……」
大月がうめくように言葉を漏らす。
彼の腕の中には事切れた少女の上半身がジャケットに包まれて顔を覗かせていた。
下半身はないのだろう、背骨がジャケットの端からはみ出ている。
目のあったはずの眼孔は暗くて黒い。
姉さん。ちょっとこの状況は、今の仕事何をしているのか聞くギリギリのラインだ。
男の子が家に来たよ!って恋愛フラグっぽいのに見事に別の何かに切り替わる。
謎の(でも明らかに姉の関係者な)男性登場。




