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異世界ヤンキー道 ~召喚されたヤンキー、理不尽だらけの異世界を「気合」と「漢気」で突き破る~  作者: いしころの問題
三章

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53/53

53話

 馬車に揺られる事数十分、川沿いの森に差し掛かった辺りで木々が編み物の様に複雑に折り重なり、壁の様になった場所へ到達した。


「これが例の壊しても勝手に修復する木のバリケードか?随分でけぇな…」


 その大きさは川から森を通過し、街道を完全に封鎖しており、撤去するのも並大抵ではないことが伺えた。


「とりあえず燃やす?」


「やめておきましょう…山火事が怖いですから、フェリスさんはこれに心当たりはありますか?」


 物騒な物言いのテトラを止め、セシルがフェリスに聞く。


「わからんが…何やら獣の臭いがするな。これは何かの巣なんじゃないか?」


 クンクンと鼻をならすフェリスがそう答える。


「まぁ、とりあえず目につく場所からぶっ壊してみるか。いくぞ!」


 そう言うとアバラは【鬼纏】を発動させ、全力の【ド根性頭突き】を手近な頑丈そうな木に叩き込んだ。


 ズゥゥゥゥンと大きな音が森中に響き渡り、ベキベキと木が折れ木のバリケードが崩れ始める。


「す、すげぇ!アバラさんの頭突き!なんて威力なんだ!」


 初めてアバラの【ド根性頭突き】を見たカインが興奮していると、倒れたバリケードの隙間から1m程の巨大なネズミの様な魔物が何匹も飛び出してきた。


「こ、こいつはカストロビーバーです!本来は臆病な魔物ですが、群れになると気が大きくなって襲ってきます!気を付けて!」


 カインはそう叫ぶと「ひえー!」とアバラ達の後ろに下がってしまう。


「こいつが元凶か!カインは馬車の護衛に回ってくれ!俺様はアバラだ!夜露死苦!」


 アバラが【名乗り】を発動させると木の隙間から新たなカストロビーバーが飛び出しアバラに殺到する。

 あまりの数の多さに捌き切れなかった個体がテトラやセシルに向かうが、フェリスが猫系獣人特有の俊敏さで切りつけ倒していく。


「【フレイムスピリット】!」


 誤射による山火事を恐れテトラは火精の魔法を辺りに展開する。小さな火の玉がカストロビーバーの周りを漂い、敵の動きをけん制し、身動きの取れなくなった者から引火させ倒していく。

 セシルは【ライトアロー】で動き回る個体を素早く排除し、確実に数を減らしていく。


「す、すげぇ…」


 手際よくカストロビーバーを倒していくアバラ達に見惚れていたカインは、すぐ背後まで迫っていたカストロビーバーに気づいていなかった。


「…!カイン!あぶねぇ!!」


 前線からアバラが叫んだ。ハッと我に返ったカインだったが、後ろからタックルを受けてしまい倒れこんだ。


「う、うわぁ!!」


「落ち着け!大した相手じゃねぇ!立ってよく相手を見ろ!」


 アバラに檄を飛ばされ、小剣を片手に相手と向き合うカイン。


「そうだ…アバラさんは武器も持てないのにあんなにたくさんの魔物と戦ってるんだ…お、俺だって、やれるんだ!」


 そう叫ぶと剣を投げ捨て両手の甲に貝殻の籠手を生み出した。

 目の前で大きな前歯をカチカチと鳴らしながら威嚇するカストロビーバーに殴りかかるカイン。


「うわああああ!!!」


 無我夢中で殴りつけ、ハッと我に返るとそこにはすでに沈黙したカストロビーバーがいた。


「やれるじゃないか、後ろは任せたぞ」


 いつの間にかすぐ横まで来ていたフェリスが短く告げるとまた前線に戻って行く。素気無い言い方だったが、カインにはそれが心地良かった。


「や、やれる!僕にもやれるんだ!!」


 そうしてカインはこの戦いを終えるまでの間に10匹を超えるカストロビーバーを殴り倒し、人生で類を見ない大戦果を挙げたのだった。



 三桁に届こうかという数のカストロビーバーを倒した所で残った個体は逃げ出してしまい、戦いは終了した。疲れ果てて倒れてしまったカインを一旦馬車に寝かせ、今後の展開を話し合うアバラ達。


「これを作ったのはビーバー達だったんだよな?なんでこんなことになったんだろうな」


「恐らくですが、カストロビーバーは基本的には臆病で襲ってこない魔物なので放置された結果数が増えてしまったのではいかと…過去に木のバリケードを壊しても襲われなかったのはまだその巣にあまりカストロビーバーが住んでいなかったのではないでしょうか?」


「あーだから壊しても壊してもいつの間にか復活してたのか。それで壊さなくなって数が膨れ上がったから気が大きくなって襲ってきたと…」


 アバラが納得すると、カストロビーバーの魔石を集めていたフェリスが手を止めて話に加わる。


「あれだけ減らしたならしばらくは大人しいだろう。ギルドに説明して定期的に討伐依頼を出してもらうことだな…問題はこの木の山だが…」


 フェリスが見上げる先には未だに残り続ける木のバリケードがあった。


「…とりあえず、壊すだけ壊しといてあとはギルドやハナコ先生に任せるか…」


 帰りの馬車では拾った雪で氷嚢を作ったアバラがデコを冷やす姿が見られたそうな。


 結局グラトニアまで旅を共にしたカインは「俺はこの街で一旗あげてみせますよ!!」と生まれ変わった様に生き生きとした表情でアバラ達と別れた。アバラ達との短い旅は彼にとっていい刺激になったようだ。

 そしてアバラのサブ職業に【貝】が追加され、カインのサブ職業には【ヤンキー】が追加されているのだが、互いにそれに気づいたのはもう少し先の事だった。


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