27話 竜の子との生活と不穏な会議
_古代聖竜の突然変異である白い竜の子 ハクタと過ごすようになって、あれから3日は経っていた。
相変わらずミノリは感情を表に出すのが下手くそだが、この間ハクタを叱りつけた時に本人は決死な表情でハクタをかばった。おそらくあれは自分がしてほしかった事を無自覚にやってたんじゃないかと、オレはそう思った。
これはミノリにとって良い傾向だと思う。
ミノリはハクタを過去の自分と重ねている。
自分がしてほしかったもの、やってほしかったことを無意識に与えて可愛がっているに違いないな。
オレは今この間ハクタによって壊された牧場の柵を修理している。
ふと横目で畑を見ると、ミノリはハクタと共に畑で育てている作物に水をあげているところだ。
「ミノリ、オレ、じょーずかな?」
「うん上手。明日には美味しい野菜が生りそうだ」
「美味しーの、作る?」
「うん、作る」
「ヤッター!楽しみ!!」
この光景を見て、オレは思わず微笑んだ。
だけど、ハクタは竜の子。
下手したらミノリが怪我する恐れがあるため、できるだけ接しない方がいいとオレは思うが、ミノリはそれをよく思ってはいない。
まぁ思ってくれる事は悪くはないだろうが…もしミノリに何かあったら、確実に創造神様による天罰が下される。
そうならないためにオレはできるだけミノリに言い聞かせ、あまりハクタとの接触をしないようお願いしてる。
ハクタも力加減できるよう、ミノリがいない所でその辺に落ちてる木々の枝を折らずに持つ練習をしてる事を知ってる。
するとハクタがオレの元へやって来た。
「どうしたハクタ?」
「ヤタ、これ見て!」
ハクタは地面に落ちてた枝一本掴み、オレに見せる。
「じゃん!枝、折れてない!すごい?」
ハクタの純粋な笑顔を見てオレも思わず微笑み、ハクタの頭を撫でた。
「あぁ、すごいな。この調子で力の加減をちゃんと覚えるんだ」
「うん!わかった!!」
そう言ってハクタはパタパタと飛んでいき、ミノリのところへ戻っていく。
にしても…いいなぁ。オレの翼はもう飛べねぇんだよな。
それもこれも全部…あいつらのせいで……。
いや、忘れよう。この島で穏やかに過ごすのも悪くはないだろう。
✽✽✽
人族が治める大国 キリキクォーノ王国
その国の王城にある大広間…大円卓会議室にて、各国の種族の王が集っていた。
人族代表の国王:アレクサンダー・ヴィ・リヒト
魚人族代表の国王:ヴァールハ・アクアルド
竜人族代表の国王:ライオス・ワイヴァーノ
妖精族代表の王は2人いる
エルフ属の女王:ティア・ルミエール
ドワーフ属の国王:ブレア・ノウル
獣人族の女王:レオリナ・ソルガ
翼人族の国王:ファンシュ・アドグローヴ
魔族の国王:シュン・クローノア
彼らこそがこの世界の守護王…
ユグドラシル・フュ・ヴァクトである。
今日国王達はある一つの議題を上げ、会議しているところである。
アレクサンダーはヴァールハにもう一度問いかける。
「…ヴァールハ殿、それは確かに?」
「はい〜そうですよ〜。リューハモニ王国の教会のシスターが見えたといいますよ〜。
それを確認しに我が部下がそこへ向かったのですが…どうにもそこ周辺の潮の流れが妙で危険を感じたため、すぐ引き返してきましたよ〜」
「おいおいヴァールハさんよ、お前らの部下共は泳ぎは大の得意じゃねーかよ?」
ヴァールハに突っかかってくるのはライオスであった。
しかしヴァールハは平然とのんびりとした口調で答える。
「危険を感じたら即引き返すのが良き判断だと思いますけどね〜?
無闇に突撃するのは獣以下同然かと思いますね〜。
貴方方竜人族は戦いにしか興味ないのですね〜?」
「あ"ぁ"っ!?」
腹立ったライオスは席から立ち上がり、ヴァールハにまた突っかかろうとした。
するとアレクサンダーが大きくため息をつく。
「お二方…お静まり下さい。
特にライオス殿、席についてくれませんか?
まだ会議は終わっておりませんよ」
「…ッチ」
アレクサンダーの言葉にライオスは黙って席につく。
改めて会議の続きを始める。
「では話を戻して…ヴァールハ殿、シスターから寄せられた情報の見知らぬ島が見えたというのは本当でしょうか?
しかも船も魚人族もその島に近づく事ができないのですか?」
「はい〜本当ですよ〜。
報告通りです〜」
するとレオリナが話に入ってきた。
「ヴァールハさん直々にその島に行っても無理だったのは本当なのかい?」
「本当ですよ〜。我でも無理でした〜」
その報告を聞いて各王は少しざわめいた。
魚人族代表の国王 ヴァールハ・アクアルドはジンベイサメの魚人。
そのため体格は人族の成人男性の3倍も大きい。
泳ぎは早くはないが、潮の流れや天候、波の揺れを察する能力が極めて高い。
そんな彼でさえ辿り着けない島があるのかと周りの人達はひどく驚いた。
ざわめく空気を静めようとアレクサンダーは手を叩く。
「皆様落ち着いて下さいませ。
しかし…ヴァールハ殿でも行けない島ですか…そのシスター以外の人は見えなかったとの報告があったらしいですよね?」
「えぇ〜そうですよ〜」
「…その島が見えてるシスターには何か特殊なスキルとかあるのですか?」
「ん~と…報告書によりますと、そのシスターは特にスキルとか持っていませんでしたねぇ。
ただ…あの教会の中ではとても信仰心の強いシスターであったとは聞いております〜」
「強い信仰心のあるシスターにしか見えなかった…つまりあの島はまさか!?」
「そうですね…おそらく高名な神の加護のある島かと」
ヴァールハの言葉に再びざわめく。
「マジかよ…神が創った島となると…こりゃあ本物の宝島っつー事じゃないか」
「へぇーそれが本当なら…ますます欲しくなるぜ」
「神の島で生み出した自然…気になりますね」
「珍しい鉱物とやらもたんまりとありそうだな!」
「……神が生み出した島か」
「お静かに。皆様の気持ちはよーく理解しています。
…それでヴァールハ殿、その島はまだリューハモニ王国の近くに?」
そう問いかけるとヴァールハは首を横に振る。
「いいえ〜。シスターに島を再び確認しに見てもらいましたところ…島は消えてましたねぇ~。
たぶんですけど、その島は動く島かと思いますね〜」
それを聞いてやる気を出したのはライオスとレオリナであった。
「ほほぅー。つまり、もしその島がオレらの領地の海にあったらさ…その島は確実にオレらのもんになるんじゃねーか?」
「ふーん…つまりその島は早いもの勝ちって事かい?
いいねー。見つけたもん勝ち。悪くないじゃないかい。
その島について調べるのは見つけた種族が最優先って事でいいかな?」
アレクサンダーは宝で目が狂っている竜人族の国王 ライオスと獣人族の女王 レオリナに思わず呆れた。
仕方なくアレクサンダーは頭を抱えながら2人のその提案に乗る事にした。
「…いいだろう。ただし、条件として、もしその幻の島に住人がいた際にはくれぐれも礼儀をわきまえるように。
もしかしたらその住人が神の使いの可能性が…」
「神からの天罰が下される恐れがあると…」
「それはさぞ恐ろしい事だな」
「ティア殿、ブレア殿、察して下さり感謝いたします。
それと…もし領海の境界線の真ん中に見つけた場合、争いはしないようお願い申します。
また争いを起こすような事は……」
「…ッチ、わかったっつーの」
「…了解しました。さすがに再び争い事を起こすのはもうごめんだね」
「…感謝します。
ではその神の島…各種族に幻の島の調査を、そして見つけ、島に接近し上手く上陸した際には、その島の調査は見つけた種族が優先となります。
そしてその島の情報を決して独り占めせず、共有するように。
以上」
これにて各種族の国王による円卓大会議が終了した。
✽✽✽
世界に今そんな事が起きている事にミノリ達は気づいてない。
この世界の人々から、創造神様より授かった島が虎視眈々と各種族から狙われている事に。
ミノリはのんびりとヤタとハクタと共に野菜の収穫を楽しんでいた。
「ミノリ、これ、何ー?」
「それは大根だ。これで煮物でも作るか」
「煮物か…いいなそれ。
丁度温かいもの食いたかったんだ。
…何故か急に寒気がしてたから」
「風邪ひいたのかヤタ?大丈夫か?
休んでても構わないぞ」
「いや大丈夫。もう少し野菜の収穫手伝うからな」
「ミノリ…ヤタ…、大根…折れた」
泣きそうになりながら折れた大根を持つハクタ。
ミノリは折れた大根を見ても気にせずに無限収納に入れた。
「大丈夫だハクタ。
折れた大根も料理するから安心しろ。
じゃ、そろそろ夕飯の支度するか」
「じゃあオレとハクタがここの片付けするよ」
「オレ、片付け、頑張る!」
やる気満々なハクタを見てミノリは申し訳なさそうにヤタとハクタにお願いした。
「じゃ…じゃあ、お願いするよ。
今日はとびきり美味い大根料理作るからな」
そう言ってミノリは先に自宅に帰った。
そんなミノリにヤタは思わず呟いた。
「まだ…人に頼るのを躊躇しているなミノリ」
「どーしたのヤタ?」
「…いや何でもねぇ。片付けするぞ」
「おー!」
畑や牧場の片付けをし終えたヤタ達は自宅に帰り、シャワーを浴びた後にミノリ特製の大根料理を堪能した。




