26話 ハクタの牧場での手伝い
ちょいと書けました
次の日の朝、私はいつもより遅く起きてしまい、急いで服を着替えて下の階のリビングへ行くとヤタとハクタが先に起きていた。
「ミノリーおはよ!」
「お、おはようミノリ」
「おはようハクタ、ヤタ。
遅くなってごめん、すぐに朝ご飯用意するな!」
この後に久々の牧場・畑作業があるため、私は急いで朝食の準備をした。
…今日の朝ご飯はハムエッグのせトーストとトマトサラダとナイトブドウヨーグルトとミルクといったシンプルかつ手の込んでいない朝ご飯メニューとなってしまった。
おっと、神棚にもお供えをしないとな。
シンプルで簡単な朝ご飯だけどヤタとハクタは美味しそうに食べてくれた。
「ごちそうさまでした、美味しかったよミノリ。
いつもありがとうな」
「ミノリ、ごちそうさま!
ご飯、美味しい!ありがとー!」
「…喜んでくれて何よりだ。
じゃあ食器の片付け終えたら畑やら牧場の仕事するか」
「あ、片付けはオレがやる。ミノリは食休みでもしてくれ。
その後に牧場の仕事をやろう」
私は別に片付けや食休みしなくてもいいっと言う前にヤタは持ち運ぼうとしていた食器をすぐに片付け、キッチンの洗い場に行った。そしてすぐに食器洗いを始めた。
手が空いた私は、とりあえずソファに座り、五分間休憩をとる。
するとハクタが私に近づき、服の裾を軽く引っ張る。どうかしたのか?
「ねぇー、牧場の仕事って?
オレ、やってみたい!」
んぅ~…ハクタに牧場の仕事かぁ。
まぁでも確かに幼いうちに家の仕事を覚えるのは良い教育だと聞いたからな。
「んじゃあ、一緒にやるか」
するとハクタの表情が満開の花が咲くかのように明るくなってきた。
「やった!ミノリ、ありがと!」
ハクタが私に抱き着こうとした瞬間、ヤタがすぐにハクタに駆け寄り、首根っこを掴む。
「どうしたんだヤタ?」
「ヤタ?」
「はぁはぁ…ハクタ…お前、力加減出来ねぇんだから、無闇にミノリへ抱き着こうとするな!
ケガしたらハクタだけじゃなくオレにまで天罰が下るぞ!!」
「天罰―?」
「神様の力でオレら死ぬんだよ」
するとハクタの顔色が蒼く染まり、泣きじゃくりそうになった。
「やだー!!天罰怖いー!」
「そこまで大げさに言わなくても…」
「…ミノリ、お前はまだ自覚ないと思うが、創造神様は絶対にやる御方だ。
ミノリは創造神様の愛し仔だというのを忘れないようにな」
愛し仔とかよくわからないが…しばらくハクタとの接触はあまりできない事は理解した。
まぁハクタは生まれたての子供とはいえ、竜だからな。
力加減ができるまでおあずけか。
なんか寂しいな…。
***
私とヤタ、ハクタは外へ出て、まず最初に動物達の世話をする事に。
「じゃあ私は動物達を放牧場に出して、小屋の掃除やるから。
ヤタはバモゥモとヘラゴートの乳しぼりを。
ハクタはそうだな…モコモの毛、そんなに長く伸びてないからブラッシングしてくれないか?」
「はーい!」
「わかった」
私は動物小屋の扉を開け、動物達を放牧した。
皆出て行ったらすぐに動物小屋の掃除を始める。
ん…どうしたんだ?何だか外が賑やかだな…。
あれ、まだ掃除終わってないのに、放牧して十分も経っていないのに、動物達が慌てながら小屋に帰って来た。
ん、よく見ればココドリ3羽とバモゥモ1頭いない…。
…モコモ1頭が何か怯えているような?
すると外からヤタの声が大きく響いてきた。
「何やってんだお前ぇぇぇ~~~!!?」
「ッ!?」
私はすぐに放牧場へ行き、柵がひどく破壊されているのを目にした。
壊れた柵の前でハクタがヤタに怒られている。
私は二人に近づき何かあったか確認する。
「ヤタ、ハクタ、どうしたんだ?
何か事故でもあったのか?」
するとヤタは片手で頭を抱え、深くため息つきながら説明し始めた。
「ハクタが…勢い余ってブラシで1頭のモコモの体を突いたんだよ。
それでモコモが暴れ出し、そのまま放牧場内で走り回って、勢いよく柵を壊しまくったんだ。
その騒ぎで動物達が驚いて、その中のココドリ3羽とバモゥモ1頭が柵の外へ逃げて行ったんだよ!!」
外が賑やかだったのはそれか。
ハクタ、ヤタに叱られて小さな体がますます小さくなっているかのように見える。
ここは見守った方がいいか……も…。
ふと私は前の世界の事を思い出した。
『金山ここ直せってあれほど言っただろが!!』
『…申し訳ございません課長。すぐにその資料を直してきます』
『1分で直せよな!ったく、本っ当に使えねーなお前』
怒られて少し落ち込んでいた私に、周りの人からお局様と呼ばれている先輩が話しかけてきた。
『金山ちゃん良かったわねぇ。貴女の失敗が上に報告される前に止められて、課長に感謝しなさいよ』
『はい…』
『叱られるって事は別に悪くない事よぉ。今後貴女が失敗を起こさないための勉強なんだからね!
ま、貴女みたいな不愛想で未だに仕事に慣れない子にはいいお灸だね。課長に後でお礼言いなさいね』
そう言って先輩は愛嬌のある表情で課長へ報告しにいった。
私もあんな風に愛嬌あれば良かったかなぁ…?
…そう前の世界を思い出しながら私は、何故かハクタを自分の背中に回し、ヤタの前に出ていた。
これにはヤタも少し驚いていた。正直私も何故こんな事しているのか…よくわからない。
「ミノリ、どうしたんだ?」
「ミノリ?」
「ちゃんとやらないと叱られる。それは大事な事なのはわかっている…はずなのに、ハクタがヤタに叱られて、ビクビクしているところを見ていたら…何故か体が勝手に動いた。
自分でも…わからないんだ?」
―わからない。
叱られているハクタを見ていたら、何故か前の世界の自分と重なって見えた。
するとヤタが私に手を伸ばした。
あ、これは…叱られるな。
だけど、ヤタは優しく私の頭を撫で回した。
ヤタの行動に私は戸惑った。
「ヤタ?何で…?」
「…ミノリ、お前は、無意識にハクタを守ろうとしたんだよ」
「え…」
「ミノリ、守ってくれてたの?」
守ろうとしてた?
どうして?叱られる事はとても大切な事。
それなのに守ろうと?
私がやってる事はダメな事なのに…何故なんだ?
「ヤタ、私を叱らないのか?」
「何でだよ?」
「だって…ヤタはハクタのためと思って叱っていただろ?
叱る事は今後失敗しないための勉強…教育の一貫なんだろ。
だけど、それを私は邪魔をしてしまった…これは良くない事だろ?
…私ダメな事してしまった。叱ってくれても構わない…」
するとヤタは私の頭を軽くコツンと一発ぶつけた。
何で?
ヤタはため息しながら話し出す。
「ミノリ…叱られる事が全て自分のため、教育のためだと思ってるのか?」
「そうじゃないのか?」
そう答えるとヤタはさっきより深いため息をついた。
「あのさぁ…叱るって事は全て正しいわけねーんだよ。
時には理不尽に叱られる事だってある。
叱るにはちゃんとした理由がいるんだよ。
ミノリ、前の世界にはそれがあったか?」
それは…私が不愛想で要領がないから。
仕事に慣れなくてよくミスばかりしていたから色んな人達から叱られた。
何も言わなくなった私にヤタが話しかける。
「…叱った後に教えてくれた事あったか?
これはダメだとか、こうすると良いよとかさ?」
「それは……ない。皆忙しかったし、一人前の社会人として一人で仕事をやるんだって言われてて…」
「じゃあそれはただの一方的で理不尽な叱責じゃねーか」
そう…なのか?一方的で理不尽な叱り…だったのか?
未だ理解していない私にヤタは話し続ける。
「ミノリ…お前から見てオレがどうしてハクタを叱ったかわかるか?」
「それは…ハクタが誤ってモコモをブラシで突いてしまって、暴れたその拍子に柵が壊れ、動物たちが外へ逃げ出してしまったんだよな」
「そう、それでオレはハクタを叱った。
その後に教えるつもりでいたんだ。力加減をするようにとか、ブラシは突くもんじゃねぇとか、一番は優しく世話をするようにと諭すつもりだった」
「そうか…邪魔してすまなかったヤタ」
叱られた後にどう直せばいいか、注意すればいいかと教わった事なかった…。
そういうのも込めての行為なのか。
するとハクタが私の肩に乗っかってきた。
「ミノリ、オレのために、ありがと!」
「ハクタ…」
「ミノリ、お前はハクタを前の自分みたくなってほしくねぇっと思ってたんじゃねーか?」
「それは…わからない」
「庇う事は悪くはねぇ。けどちゃんと叱って教えないと世の中わからない事だらけになって、そいつのためにならない事を覚えておいてほしい」
「そう…だな。ハクタ、次から気をつけるんだよ」
「はい…ごめんなさい」
「話は済んだところで、さっさと逃げ出した動物を探しに行くぞ」
あ、忘れてた。
私も手伝おうとしたが、ヤタは自分とハクタだけで探すから大丈夫だと言われ、私を置いて動物達を探しに行ってしまった。
前の世界の教えか…ヤタから忘れた方がいいと言われたが、中々消えないものだ。
それが私が生きた教えだったからなぁ。
ん~~…。
「難しいものだな…。ヤタ達が戻ってくる前に小屋の掃除の続きと柵の修復しないとな。
あともうすぐお昼だからご飯の用意しないとな!」
その後仕事の後始末をしお昼ご飯の準備をしている最中にヤタとハクタが帰って来た。
無事に逃げ出した動物を回収し、放牧場に戻した2人はくたくたになっていた。
大変だったんだな…今日のお昼ご飯、ガッツリした豚肉料理…カツ丼にしといて良かった。
2人は勢いよくお昼ご飯を食べる姿を見て、何故か私はくすっと笑ってしまった。




