白鳥じゃなくても水面下で動いている
一方その頃……、な居残り組です。
PVが一万、ユニーク3000超えました!
皆様、読んで下さり、本当にありがとうございます!
一瞬ではありましたが、10/19日刊ランキング(コメディー)35位にも入ってて、戦慄が走りました。思わず友人に画像送りました。
ガライと仲間たちは、まだまだやらかして行きますので、どうか見守ってやって下さい。
王都でハーニッシュ(補佐官)が褒章云々言っているのを、ラーチュカ(国王)が必死で止めているみたいですよ。
その頃、屋敷の方では残された者たちが動き出そうとしていた。
「やはり、いましたか……」
「うん。いるよね、こういう手の輩って」
「嫌ですね、本当。いるとは理解はしているのですけれど」
「全く、人の命を何だと思っているんだい!」
キャロラインの執務室に集まった4人は、銘々の場所で情報を共有していた。
少し青醒めたビフレットが、執務机に姿勢良く座るキャロラインに言う。
「若様に報告した方がよかったのではないでしょうか……?」
それに首を振る彼女。
「恐らく、この件を知った時から承知しているでしょう。
……人攫いが発生しているという事は」
自称ただの執事は先刻、キャロラインの頼みによりステンを呼びに行くため町に出ていた。
見慣れたという程でもないが、それなりに通い慣れた町並み。
その中に見慣れない人物がいるのを見て違和感を覚えた。
ただでさえ田舎町であるプレートの町で、町人以外の人物がいたらすぐに耳に入る。けれども彼はそんな話を聞いていなかった。
王都で社交に揉まれていたビフレットは、この町に来てからも、勿論すぐに町の中にネットワークを拡げていた。
立ち話、井戸端会議、店先の他愛ない話までも。それに加えてレイニオの耳という情報元もある。
それを持ってしても聞いていないという事は、その人物はこの1~2日中に移動してきたという事だ。
こんな時に、こんな田舎に。
そして人を見る目が肥えている美中年は、こちらに気が付いて、何事もなかったようにその場から立ち去った男を見て、「まずい」と身の危険を感じた。
それは今までの経験から来る危機感知能力とでも言うべきだろうか。
あの視線は、人を人として見ていない、物として観察している視線だった。
そして自分を見て納得したように口元を吊り上げたのは……。
何度も見た事がある。
あれは、あれは……。
立ち尽くしていたそこに、見回りから帰ってきたジャガルドに声をかけられて、彼は我に返ったのだった。
そして一度屋敷に戻り、ガライたちが出掛けたのを確認した上でキャロラインに相談を持ち掛け、レイニオが見回りついでに確認に動き、今に至る。
何故、ガライたちがいる時に話を出さなかったのかというと「魔物退治は生半可な気持ちで対処出来るものでは無いですから」と当の本人の弁。
「それにしても『社交界の一輪華』を知らないとは、モグリですわね」
「あの、キャロライン嬢? その名前は止めて頂けますか?」
キャロラインのからかい交じりの言葉に、ビフレットが眉を下げる。キャロラインは王都の夜会に出る度にビフレットの噂を聞いていた。
「あら、ごめんなさい。好きでやっていたのではなかったのでしたわね」
「それにそんな呼び名、貴族じゃないと知らないと思う」
余り負の感情を見せないはずの美中年に、素直に謝る令嬢と冷静なツッコミを入れる執事見習い。
その言い分に、そりゃそうだ、と頷く大人3人。
社交界に出るのは大体貴族であって、それ以外には縁遠いものだからだ。
例え、そこ(夜会問わず、お茶会、ガーデンパーティ、果てには知人の結婚式まで)であらゆる女性を根こそぎ魅了していたとしても、貴族以外の人々にとって、まったく知るすべが無い事であるし関係の無い事だ。
そして、それを逆手にとって利用していた事もまた、預かり知らない事である。
「とにもかくにも、人攫いの事ですわ」
話の仕切り直しのため、キャロラインがそう言うとチヤが頷いた。
「そうだね。こんな時だから家の外に出る奴はいないと思うけどさ」
「しかし、何事にも例外があります。だからこそ、何かの拍子で町に出てきた方を目撃者も無く連れ拐える……」
顎に手を当て考えている様子のビフレット。不意にその腰をガッシリ掴まれ彼は「ひゃっ」と可愛らしい悲鳴を上げた。
「っていう事で、僕が行ってくるよ。義母さんには悪いけど」
掴んだ本人、レイニオがあっさりと早期解決に向けて動く事を口にする。チヤに一言断っているのは、ラジーの件があったからだろう。
「なななななんで、私を掴んで」
「はぁ、仕方無いねぇ。無茶するんじゃないよ」
チヤはそんな息子に溜め息を付きつつ、許可を出す。レイニオは言い出したら聞かない事を知っているからだ。ラジーと違って引き際も心得ている、というところもある。
「いやいや、関係無いですよね、私!?」
「わたくしからもお願いします、レイニオ。援護は致します」
キャロラインはあくまでも事務的に、改めて要請する。この中で犯人を押さえられるとしたら、この執事見習いだけだからだ。
「援護どころじゃ無いですよ!?」
「囮」
その一言を聞いた瞬間、放置されていた自称執事は崩れ落ちた。
奴らに目を付けられているのなら当然だろうに。と一同は思った。
「モテる男性はツラいですわね、ビフレット」
「安心しな! アンタにゃ指一本触れさせはしないよ!」
女性陣のにべもないセリフに更に落ち込む美中年。
「精神的な何かが減ります……」
「ほら、さっさと立ちなよ。アニキたちが帰ってくるまでに終わらせたいんだから」
そこに弟子が容赦なく現実を突き付ける。主たちが帰ってくるまでに終わらせるのは同意だ。
しかし、
「囮の必要、ないんじゃないかな……!」
その言葉にキャロラインがニッコリ微笑んで、座り込む彼に視線を合わせる。
「参加する事に意義があるのですわ」
それは暗に囮の必要は全く無いという事を認めた言葉だった。
そんなこんなで現在、ビフレットは1人、町に来ていた。
町に行くのだから、とチヤからついでにお使いも頼まれている。
こんな時でも逞しい。店は開いているのだろうか。
当然、レイニオも付いてきているはずだが、屋敷を出た瞬間から「一緒だと仕掛けて来ないかもしれないから」と理由を付けて、さっさと姿を消した。ビフレットの見た感じ、いるようには思えない。
「本当、勘弁して下さいよ……」
チヤからもらった買い物メモを見ながら、自称執事は溜め息をついた。
『悪いのは便乗するアイツら。後で蹴るくらいは許されるんじゃない?』
何処からともなくレイニオの声が届く。魔法で声を拾ったようだ。
「余計な事はしない事にしているんです」
何とか澄まし顔をキープしつつ、苦手なものを然り気無く回避しようとするビフレット。
『で、泥沼に填まるんだね』
「止めて下さい、いつも填まっているように聞こえます」
『え?』
「え?って何ですか。信じていませんね!?」
そうビフレットが返した時、不意にレイニオの声が変わった。
『来るよ。いつも通りだからね』
「社交界での経験を舐めないで下さい」
来たか、と美中年は思った。
狙い通り過ぎて、つくづく嫌になる。自分の王子様然としたこの容姿が。
『ん?容姿? 関係無いだろ。だって、社交はお前の努力の成果じゃないか』
会ったばかりの頃のあの人が言った言葉が頭を過った。
その通りですよね、若様。
「すみません、場所をお聞きしたいのですが」
そんな思いも知らずに、その人物は話し掛けてきた。
振り返ると、冒険者よりも軽装で町人よりも草臥れた服装の、いかにも行商人です、といった風体の男が立っていた。その顔には物好きする微笑みが貼り付けられている。
「おや、旅人ですか? 今はちょっと止めた方がいいですよ」
ビフレットは少し困った風を装いながら、その言葉に返した。
「外から来られたから知らないかもしれませんが、近くに魔物の群れが来ているらしいのです。だから出掛けるなどせずに、宿泊場所に戻られた方がいいかもしれませんよ」
彼は来ている魔物がペリュトンとは知っているが、あえて町の人も知っている情報を伝えた。
「知っているけれど、どうしても急ぎでね」
そう言っても引き下がらない男。
考える素振りをして美中年はちらりと男を観察する。
剣などの装備は無し。でも体の重心が少し左に傾いている。よって利き腕は右。
服にナイフか何かを隠していそうだ。
それに今のところ、こちらを害する意思は無し。あくまでも商品、といったところだろうか。
「そうですね。私もこんな時に用事を言いつけられた身。さっさと終わらせた方が良さそうですね」
「助かるよ」
いそいそと手元の手書きであろう地図を広げる男。
それを自分のメモをしまいながら覗き込む美中年。
「町の端の方ですか。口頭で伝えても?」
「いや、貴方も言った通り、急いだ方が良さそうだから、迷わないように案内してくれると助かる」
一応、逃げ道を作ったビフレットだったが、やはり相手にその気はないようだ。
溜め息を飲み込み、にこりと微笑む。
「判りました。では行きましょう」
レイニオから『さっさと行ったらいいのに』等と愚痴が飛んで来ていたが、おくびにも出さずにビフレットは歩き出した。
まさかの主人公不在が続く事に。
がんばれ、ビフレット。君は弄られて輝くんだ……!
確かに囮一択だよなぁ……とか、チヤさん、オトコマエ!とか思った方は、ブックマークや評価、いいね!をポチッとお願いします。




