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第66話:イデンシゲートの外側には

 タンッ……!

 パシッ!


 足で蹴ってロング・スローラーを回転してキャッチ。

 慣れれば色々なアクションを覚えられそうな気がする。


「いいねぇ、マイ★ロング・スローラー。自由を手に入れられた気がする」

「実際、メルボルンを一周するっていうので使っている人もいるらしいし、自由度でいうなら本人の可能性と比例するよ」


 メルボルン一周は、時間があれば、是非とも挑戦したいところだ。

 だけど、私はまず最初にいっておきたいところがあるので、残念だけど、そのチャレンジはまた今度にしておきたい。


「じゃあ、私は行くよ。お小遣いを稼いだら、またカスタムでお願いしに行くかもしれない」

「うん、待ってるね。でも、行くって何処に……?」

「まぁ、うん。えへへ……」

「……?」


 行くべき場所。

 それは――


 ……

 ……


「……着いた」


 オーストラリア、メルボルンの北北西の最北端。

 イデンシゲートの境目の付近。


「……………………」

「……………………」

「……………………」

「……………………」


「わお、すごい。悪魔がイデンシゲートの外側で、メッチャ威嚇してくるんだけど」


 赤い瞳が太陽光に反射して、私に居場所を教えてくれる。


 ――早く出てこい。

 今すぐに殺してやるぞと言わんばかりに殺意にまみれた視線が私に集まる。


 煽りの一つでも入れようかと思ったけど、こりゃ顔を覚えられて永遠と追いかけ回られそうな気迫っぽいので、今回は控えておくことにする。


「新聞に書かれていたとおり、今日は悪魔が活発的な日なのはよく分かった。確かに近づきたくない」


 雑魚を相手にした場合でも、頭に血が上ってしまって、いつもよりも激しく投身してくるかもしれない。

 少なからず窮地に追い込まれる懸念があるということだ。

 常人なら、まず危険と判断するだろう。


「ま、そんなわけて、私自身がイデンシゲートの外に行くのはキケンだから、今回は特別ゲストに身代わりになってもらおうと思っています」


 鞄の中から、とある素材を取り出して、循環ポケットの中へと入れていく。

 数秒後、右手に生成された土色の力を小指に込めて、それを一気に私の前へと放出する。


 うにゅにゅにゅ……

 にゅ……にゅ……


 なんというか、とても気持ちの悪いSEが聞こえるのはご愛嬌。

 これでも一応、良い仕事はしているんだ。


「粘土モンタージュ。自身の知っている人物を思い浮かべると、その人そっくりの人形が生成される」


 私は知っていた。

 自分の身代わりを瞬時に生成できる、特殊な粘土が存在すると。


『私、その素材について教えたことありましたっけ?』


 数日前、唐突に私から質問したので、ルーミルには少し不思議がられたが、夢の中で体験したときに見た『あの素材』は、現実でも存在していたことを、そのとき確認できた。


「この間の夢は、本当に何だったんだろう?」


 夢は自分のボキャブラリーの範囲内で生成されるものだろうに、夢の中で体験したあれらの一部には、私の知らないものも多く存在した。

 現状、新たな知識を得られる要素としては不利益ではないので深く考えることもないが、やはり理屈が分からないというのは不気味な限りだ。


 ともあれ、私はその探求をするための手がかりを掴んでいるわけでもないので、今は見逃しておいている。

 今の特殊な保護生活の中に、更に不確定要素を入れるのは食欲に影響するからね。


 ……

 ……


 二分後


「よし、完成した。土の素材で作った偽物の人間」


 身体の造形は概ね本人にそっくりで、プロの彫刻家もビックリなクオリティといえる。

 着色が少々甘く、古いデッサンを見ているような風に見えるが、悪魔に見せる分には特に問題ないだろう。


「どうよ、私自身を(ほぼ)完ぺきに再現したモンタージュ。原寸大リヌリラちゃん人形は!」


 我ながら可愛らしさが滲み出ていてしょうがないとしか言いようがないな。

 そこら辺のモテない男に売りつければ大金を出してくれそうだ。

 ……おっと、今のは男女差別が過ぎた発言だった。


「この人形を、イデンシゲートの外側に移動させて、どれくらい危ない状況なのかを確かめなくては」


 粘土モンタージュで作った人形は、超循環を使えないながらも、本人の身体能力は真似することができるので、ある程度良い感じに戦ってくれる。

 つまり、超循環に依存しない戦いを得意とする人物ほど、人形としての脅威は高まる。


 私も運動神経には自信がある。

 目に見える攻撃なら、簡単に避けてやる。


「よし、実寸大リヌリラちゃん人形! 無双とはいかずとも、せめて数匹は始末して悪魔どもをビビらせておやりっ!!」

「…………」


 私の指示を聞いたと同時に、棒立ちだった実寸大リヌリラちゃん人形が、戦いの構えを見せてイデンシゲートの外側へと駆ける。


 だっだっと爽快に走るその姿は、無駄がなくスタイリッシュな動きをしている。

 うむ、これなら探索には十分役立ちそうだ。

 

 ファン……


「おっ、ゲートを抜けたね。さて、悪魔はどんなリアクションをするかな」


 木の上に上り、望遠鏡で実寸大リヌリラちゃん人形を追いかけながらチェックする。

 人形がゲートの外へと出るのと同時に、私に視線を送り続けていた赤い眼光が私から逸れる。

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