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第35話:メルボルン開拓戦・終演

「なんというか、予想通りに締められたとは思うんだけど、なんかエグくて気持ち悪いというか」

「しかし、素晴らしかったです。タコ壺を破壊しようとする悪魔を殺すことができましたからね」


 ルーミルはニッコリとした表情で、私に小さく拍手を送る。

 流石にこのような惨状だったとしても、ルーミルにとっては慣れた光景なのだろうか、特に気にすることもなく私の勝利をたたえてくれる。


「そういえば、壺ってどうなったの?」

「壺は無事に守られました。あの悪魔が死滅したと同時に三十分が経過し、エリアはセーフゾーンへと変化したのです」


 辺りをぐるっと見渡すと、水色の薄い壁がある。

 それはイデンシゲートの境目の証拠で、外側にいた私たちではあるが、現在は内側に立っている。

 つまり、イデンシのタコ壺で新たに生成されたセーフゾーンにいるということになる。


「まあ、私がキチンと守っていなければ、戦いの衝撃でタコ壺は簡単に壊れてしまっていたでしょうが」

「ま、まあ……いいじゃない。ルーミルが言ったとおり、四分以内に悪魔を倒したんだから」

「二分二十秒、想定よりも素早い討伐ですね。七面鳥にポテトを付けてもいいかもしれません」

「やった、カリカリの好きなんだよね」


 動けばやはりお腹がすく。

 任務が終わり、無事に生き残れたことに安堵している。

 だが一つ、気になることがある。


「あの悪魔ってさ、全体的に見たらどれくらい強いんだろうね」

「……ああ、やはり気になります?」


 なんせ初めての強敵という部類と戦ったのだから、今回の苦戦具合から自分がどの位置にいるのかは知っておきたい。

 ハナとルーミルを現状の頂点とするなら、私は今、どこにいるのだろうか?


「まあ……十段階評価をするなら、三くらいでしょうね」

「……どっちの意味での三?」

「低い意味での三です。雑魚の中では強敵と表現すれば良いでしょうか?」

「うわ、なんか喜んで損した」


 意外と強い部類が唐突にやってきて、でも私覚醒でいい感じに倒せちゃった系の物語を期待していたんだけど。

 残念ながら、コツコツと強くなっていくしかなさそうだ。


「しかしながら、叩かれれば一瞬でミンチになる強敵を相手に無傷で倒しきれたのは相当の才能の持ち主と言えます。筋がとても良いですし、今後を期待するという意味では、喜んでいいとは思いますよ」

「……つまり、更に上の悪魔には、もっとえげつない攻撃を仕掛けてくるやつが?」

「そりゃあもう、エグエグ祭りですよ。エグエグ」


 うわぁ、なんか来ないほうが良い世界に来ちゃったような気がする。

 というか、過去よ。こんなにエグい世界だったのか。

 どうやって戦争が終わったのか、歴史に興味が無い私でも知りたくなってきたぞ。


「さて、ひとまず帰りますか。無事に初悪魔殺しに成功しましたし」

「そうだね、ちょっとだけだけと疲れた。家に帰ってゆっくりしたい」


 慣れぬ環境で過ごす精神の疲弊は、思いの外、大きいようだ。

 しばらくは悪魔殺しに慣れること、環境に慣れること。

 自分のポテンシャルを最大限に活かせるように、十分にチューニングをしていくことが最優先だ。


 私は決意し、頑張ることを誓った。

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