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この技は……
「ギヒッ!」
ファイスの見た方……やはりあの騎士がいた。
ライオネルは眼帯をしてこちらを睨んでいる。
「お前……ゲホッ……グハッ!」
まずい!もう一時間も?
毒を吸い込んだ……俺は急いで薬を飲み干した。
「なんでお前が……」
「お前を助けるのは私だって不本意だが、大臣からの依頼だ……それに私には確かめたい事がある」
「ゲギギギ!……ライジュウ……ライガー……ファルコ」
ファイスはレイピアを忙しく動かし、雷は虎と鷹を形取っていく。
「その技は……ファイスさん……本当にファイスさんなのか?」
技を繰り出されたら厄介だ!
「ウラァ!」
俺は渾身の力を込めて片手斧を投げた。
「待て!ブラッディ!サイクロン!」
「ギャギ!?」
「なんだと!」
ライオネルの繰り出した嵐が俺の斧とファイスの鷹を吹き消した。
何をやってるんだコイツは……だが!チャンスだ!近接なら俺に分がある!
俺はファイスに突撃し、ファイスは雷を放つ。
俺は横に飛び、雷を交わして更に近づいた。
「やめろ!」
《ドゴッ!》
目の前に風を纏ったライオネルが突っ込んできた。
「なんだ!邪魔すんじゃねぇ!」
《ガインッ!ドヒュ!》
ライオネルは俺の斧を受けると纏っていた風で突風を繰り出した。
俺は吹き飛ばされ、木で背を支えて着地する。
「離れろ!兎に角……」
「ギヒッ!」
《バババババッ!》
《ビュゥゥゥゥ!》
「くっ!」
風と雷が相殺し、ライオネルはファイスに組み付いた。
《ガロロロロロロ……》
雷の虎が喉を鳴らしてライオネルに襲いかかる。
「オラァ!」
俺が斧を振るとそれを避け、虎は身体をブルブル震わせて針を飛ばす。
俺は斧を振り、針を蹴散らした。
《ガロロロロロロ……》
「ギヒヒヒ!……ライニーザー……」
俺は咄嗟に斧を上空に投げた。
《ビシャ!ゴロゴロ!》
雷が斧に落ちた。
「それはもう見切った……そんな虎!」
ジャンプして斧を握りしめ、上空から虎に目掛けて両手斧を投げつけた。
《ギャアアアア!》
《ドンッ!》
虎は両断されて散っていった。
着地した俺は即座に走り、両手斧を回収した。
「ギャギ!」
「ファイスさん!正気に戻ってくれ!」
ライオネルはウダウダとファイスに話し掛けている……俺には!関係ないね!
「ウォラ!」
俺は気合いとともに踏み込み、ファイスに組み付いているライオネルごと両断しようとした。
「やめろ!」
《ビュゥゥゥゥ!》
俺は少し吹き飛ばされ、地面に斧を刺して暴風に耐えた。
「ギャギャギ!サンダーショック!……」
「ファイスさん……グアアアアア!」
《バババババッ!》
ファイスから発せられた雷がライオネルに襲いかかる。
「ウォォォォオォ!」
《ガインッ!》
俺はライオネルが痺れて手をついてる隙にファイスを斬りつける。
「ギャギ!」
《ボトッ!ピゥゥゥゥ》
ファイスの左手は切り落ち、黒い液体と変な音が聞こえてくる。
「う……嘘だろ……ファイスさん!私と母上を父の代わりに支えてくれたあんたが!何故!」
「ギヒヒヒ!……ぜんぎん!じななね!……エレクトロ……」
《ピシャッ……ピシャ……》
何度も雷がファイスの体に落ちて堪らず瞼を閉じる……くそ!見えねぇ!
「これは……一帯が……吹き飛んじまう!ファイスさんやめてくれ!嘘だと言ってくれ!」
「なんだと!」
「ぎゃひひひひひひピィー!」
手で遮って尚、眩くて何も見えない……どうすれば……
「クソォォォ!ウィング・オブ・デス!」
「ギャフ!」
《キュッ!》
肌で感じる……ファイスに目掛けて暴風が殺到した。
「ぐあ!」
《ドンッ!ゴゴゴゴゴゴ!》
突然ファイスが爆発し、無数の木と共に俺は吹き飛ばされた。
光が消え……目を開けるとファイスは粉々に吹き飛んでしまっていた。
ライオネルも吹き飛ばされたようだ……しかしこんな技があったなんてな……
《パキパキ》
立ち上がった時に鞄から嫌な音がした。
中身を確認すると薬は全て潰れてしまっている……急がなくては!
「くそ……楔が打ち付けられていた……くそ!やはり父上は……おい、待て!お前!」
「は?」
「これを持ってけ……」
ライオネルは一本の瓶を俺に投げた。
「大臣は私にも薬を渡してくれた……一本は入る時に飲み……先程の衝撃で他は割れた……その薬を姫に使え……父上達の……姫を救ってくれ……」
ライオネルは目を瞑って黙った。
俺は王女の元へ走った。
救う?……ライオネルは何か勘違いしているようだな……いや、大臣がそう言ったのか?
まぁいい……俺の目的はただ一つ!
暫くすると紫の霧に包まれた。
「ガハッ……グハッ!」
入った瞬間、なんだこれは!くそ!まだ一時間も経っていないぞ!
「ゴクッ……うっ!……グアッ!」
《ビシャシャシャシャ!》
薬はあまり効かなく……その殆どを吐いてしまった……喉が焼け付く…頭が痛い…苦しい!
辺りを見回すと霧の中に塔を見つけた……
急がなくては!
俺は急いで塔の中へと入り、螺旋階段を駆け上がった。




