第27話 吐露
葛籠の箱の中身を広げてみると金や銀、大判小判、それにサンゴなどがあった。
事件調書にこれらのことも事細かく記載しなければならない。
「ひ、ふ、み、よ、いつ、む」
鴎がお宝の数などを調べている。
僕は大雑把にしかお宝の確認はしていない。
その脇で僕は奇術師を眼前にして聞き取りをする。
「これらはすべて本物ですか?」
「まさか。偽物だよ」
奇術師はもう観念したのか素直に聴取に応じている。
僕は、鴎が数え終えたお宝のひとつを手に取った。
偽物か……たしかに持ってみるとずいぶんと軽い作りだ。
でも、この宝物たちはとても精工に作られている。
これらを個人で作ったとは考えにくい……ん、これは?
「このはさみは?」
「あっ、ああ。なんかどっかの雀が持ってたから分不相応だと思って……」
奇術師は言葉を飲んだ。
「強奪したんですか?」
「いや、いや、違うよ。こ、交換、交換」
「交換?」
「そうそう。ほ、本当だよ。ほら、どっかであったでしょ? 貧しい若者が藁を交換して富豪になった話。御伽の国の夢物語」
たしか、その人は”わらしべ長者”さん。
この激動の世の中の成功者若者のたちの憧れでもある。
「はい、ありましたね」
「だからその話をして交換したんだよ。無理に奪ったわけじゃないよ」
「本当に素直に雀さんが渡したと?」
「そうだよ。あっちからくれたよ」
まさかチュン太さんが残した、あの文の――”はさみは、ある人にあげました誰かの幸せのために。”とはこの奇術師のことなのか。
それに僕が最後までその意味がわからなかった言葉があった。
”誰かの不幸も幸福に交換できる”
それはわらしべ長者さんが歩んだ道のことを示しているのでは?
わらしべ長者さんも不幸の生い立ちだったが、人のために物々交換をして長者になった。
「話すことのできない雀だったな」
話のできない雀?
それはチュン太さんに間違いないだろう。
じゃあ本当に黄金のはさみをさしだした、それが誰かの幸福に繋がると信じて。
「あの、あなたは黄金のハサミの対価になにを差しだしたのですか?」
「えっ、ああ、錆びたはさみだよ。それでいいってうなずいたから。不思議と笑顔に見えたな、その雀。それが逆に気味悪くもあったけど」
間違いない黄金のハサミと錆びたハサミは交換されている。
話の辻褄は合う。
「わかりました。はさみのことは抜きにしても、あなたが今回おこなったことはイカサマ。詐欺です」
「あっ、はい、すみません……」
奇術師は肩をがっくりと落として意気消沈した。
「生活が苦しくて……」
「それはあなただけではないですよ?」
「まあ、そだうだけどさ。葛籠の箱と宝一式を法外な値段で買っちまったからな~」
「誰からですか?」
奇術師は僕の目をチラリと見たあとに逸らした。
「いやいや防人なら知ってるでしょう?」
「僕らが知ってる人?」
「そうだよ。ほら興行につきものの、さ?」
「ま、まさか犯罪組織ですか?」
「まあ、早くいえばそうだな」
「じゃあ、あなたのうしろには組織犯罪が?」
「たぶんね。ただ俺がそれを買ったのは末端の末端の人からだし。どんな組織かは知らない」
「なるほど」
「このからくり箱を用意してもらった上に、みかじめ料もきつくてさ」
奇術師は溜息をつく。
「みかじめ料?」
「そうさ。俺だって最初はまっとうな見世物で人に喜んでもらおうって思ったんだよ。けどね逃れられなくなっちまってさ。組織の中にはえらく危険な人もいるっていうし斬り殺されでもしたら、たまったもんじゃねーよ。いつだったか隣町で瓦版売りが斬られた事件もあったし」
「その瓦版売りを斬ったのは組織の追っ手なのですか?」
「いや、関係ないけどそんな話を聞いただけで怖気づいちまって」
「常に怯えて生活していたということですか?」
「はい」
「それは末端だったとしても犯罪組織に関わってしまったからですよ?」
「まあ、それをいわれると返す言葉もありません……すみませんでした」
頭を深くさげる奇術師、反省の色は見える。
「これからきちんと罪を償ってください」
「はい」
3章【当たりなきからくり箱】……終わり。





