第11話
レント軍とグロール軍が熾烈な戦いを繰り広げる中、ディーン達も戦いの日々を送っている。
……訳ではなく。
「はいよ、一本な」
「ありがとよ」
ディーンは露店で鳩肉を串に刺して焼き、それを売っていた。
ここはかつてグロール城と呼ばれていた城の近くにある城下町。
かつてはただの平原だったそこは今や人々でにぎわう街になっていた。
街の周囲はぐるりと壁に囲まれ、兵士達も常駐し守りは万全、ここならば誰もが安心して生活できる。
「どうしたよディーンの旦那」
「いや、ちょっとな……」
街から逃げてきた男は露店を手伝いながら聞いてきた。
安息を手に入れたディーンだったが、その心中は複雑だった。
ここグロリアは元々はグロール王国だった場所。
だが今やかつての面影を残すものは見慣れない旗が掲げられたグロール城のみ。
平原だったそこはレント王国の意匠が見受けられる赤い煉瓦の建物が立ち並びレント人が住んで笑顔を振り撒いている。
少し悲しくもなった。
「そういやアンタはここの出身とか言ってたな」
「まぁな、ずっとここには来ないようにしてたんだが……随分と変わっちまった」
「変わらねぇもんなんかないさ。物も人も、国も土地もな」
肉を焼きながら、男はそう言った。
確かにそうかもしれない。
「変わらないもんがあるって信じたいのさ。さておしゃべりは終わりだ稼ごう。領主様に土地から物から全部借りてるんだからな。このままじゃ尻に火がつく」
大笑いしながら男と2人で店を回していく。
このまま平和な時間がずっと続けばいいのにと思っていた。
だが災いの火は全く消えてはいない、グロール軍は逃げたまま、襲われた街の住民は帰ってこない。
そしてグロール人とレント人の間に産まれた疑心も残ったままだ。
──さりとて良い案もなし、如何とするかな。
肉の焦げる匂いを嗅ぎながら、ディーンは思考する。
「ん? なぁディーンの旦那、アンタにお客さんだぞ」
「目の前にも客がいるだろ? 早く売れよ。……おいそれは生焼けだ」
「いやあっちあっち」
生焼けを売ろうとする男をたしなめながら、彼が指差したほうへと視線を向けるディーン。
少し離れた場所からこちらを監視している鎧姿の男が見える。
──あれは確か……領主様の護衛をしてた兵士か。
「……ちょっと行ってくる」
「ああ、すぐに戻ってこいよ」
兵士の方へと向かうとそこには変装した領主、ベネディクトの姿があった。
「なにをしているんです?」
「君を呼びに来たんだ。少し秘密の話がしたくてね。一緒に城まで来てほしい」
ご丁寧に庶民が着るような服に着替えたベネディクトだったが、悩ましい腹がぼっこりと出ていて服がはち切れそうだった。
「領主様の頼みとあらば構いませんが、なぜ貴方自らが?」
「秘密にしときたかったからね。今のところこの秘密は私とこの兵士しか知らない」
ぽんぽんと鎧姿の兵士を叩くベネディクト。
「……その兵士の方に使いを頼めば良かったのでは?」
「…………あっ」