不思議な雛を拾っちゃった!
雛鳥のピッピちゃんを抱いて言い張るルナちゃんに、僕は疑問を投げ掛けたんだけど。
「本当に連れて帰って大丈夫? この子の親が近くで探してるかもよ?」
そう、鳥の雛が迷子になってるときは親鳥が近くにいるから拾っちゃダメだって、以前街角のポスターで見たことがある。
「ですけど……」
だけどルナちゃんはピッピちゃんを抱きしめて放したがらない。
「それでははなちゃん、この子の親は本当に近くにいるか分かりますか?」
「ブロロロロ……」
ルナちゃんの問いかけにはなちゃんは首を横に振る。
「もう、はなちゃん……。とにかく、この子は置いていった方がいいとおも……」
「ピィ……」
僕がルナちゃんからピッピちゃんを引き離そうとしたんだけど、ピッピちゃんのうるうるなあどけない目にやられてしまった。
「――やっぱりこの子を放っておくわけにはいかないよね!」
「ユウキくん……分かってくれたんですね!」
こうして僕たちはピッピちゃんをおうちに連れて帰ることにしたんだ。
はなちゃんの背中に揺られながら、僕の背後でルナちゃんがピッピちゃんと戯れている。
「いないいない~~ばぁ!」
「ピギョっ!? ――ピィ~!」
ルナちゃんのいないいないばあで、ピッピちゃんも楽しそうに声をあげた。
ピッピちゃんの相手をしているルナちゃんは、まだ小さいけどまるで本当のお母さんみたいで。
「ピッピちゃん本当に可愛いです~!」
「ピィ~!」
きゃははと快活に笑うルナちゃんに、ピッピちゃんもとても懐いているように見える。
「ねえねえルナちゃん、僕にもピッピちゃんを抱かせてよ~」
「ダメですっ、ピッピちゃんはルナがいいんですよね~?」
「ピィ!」
ルナちゃんに抱き寄せられて、ピッピちゃんも嬉しそうに鳴いた。
「それじゃあなでなでするくらいならいいよね?」
僕が手を近づけると、ピッピちゃんがいきなり噛みつく。
「痛っ!?」
「ピギャア!」
「ダメでしょピッピちゃん、いきなり噛んだら! ――どうやらユウキくんはこの子に嫌われてるみたいですね……」
ルナちゃんの言うとおり、ピッピちゃんは全身の羽を膨らませて威嚇モード。
ここまで露骨に嫌われると、僕も落ち込んじゃうな……。
そんな僕にはなちゃんが鼻を添えてくれる。
「ブロロロロ……」
「あはは、ありがとうはなちゃん。大丈夫、僕には君がいるから」
「パオ」
その頭をなでてあげると、はなちゃんは気にするなと言いたげにこっちを目を向けた。
そんなこんなではなちゃんの背中に揺られることしばらく、僕のお腹が鳴り出す。
「あ……ぅ」
「ユウキくんってば、お腹が空いたのですね」
そう言ったルナちゃんのお腹からも直後にキュルルル~と可愛い音が鳴った。
「はぅ~~!」
「あはは、そういえば僕たちまだ朝ごはん食べてなかったもんね。はなちゃんもお腹空いたよね?」
「パオ」
ここに来る間もちょくちょく木の葉をつまんでいたはなちゃんだけど、それだけじゃ足りないはずだもんね。
「それじゃあ早くおうちに帰ろう! はなちゃんっ」
「パオン!」
僕の指示ではなちゃんが歩みを速める。
そうして僕たちがおうちについたのは、すっかりお昼になった頃だった。
家の前で腰に手を当てて待っていたのは、ルナちゃんのお母さんであるユノさん。
「ルナ、ユウキ君。今までどこ行ってたの、なかなか戻ってこないから心配してたのよ?」
「ごめんなさい、お母さん……」
「ユノさんごめんなさい」
はなちゃんから降りた僕たちが揃って頭をペコリと下げると、続いてユノさんの目がルナちゃんの抱えるピッピちゃんにいく。
「あら、その子は?」
「お母さん、この子はピッピちゃんって名前なんですけど、森の中で迷子になってたみたいだから拾ってきたんです」
「拾ったですって!?」
ルナちゃんの報告にビックリ仰天するユノさん。
そりゃ驚くよね……。
そういえば僕も昔、拾った子猫を勝手に連れて帰ってママにこんな反応されたことあったっけ。
そのときは結局許してもらえなくて、元の場所に戻すしかなかったけど……。
「お願いお母さん! ルナにこの子の面倒を見させてください! 森の中に戻したらこの子、また怖い目に遭っちゃう!」
「だけどその子は野生の鳥でしょ? 犬とか猫を拾うのとは訳が違うのよ?」
「それは分かってます! だけどルナ、この子を放っておけないんです!!」
ルナちゃんの確固たる目に、ユノさんは深く息を吐いて折れた。
「しょうがないわね……。だけどその子のお世話をするからにはちゃんと責任を持つのよ? それが命を預かるって意味なんだからね、ルナ」
「はい! ありがとうございます、お母さん!」
ユノさんからも許可がもらえたところで、僕とルナちゃんは改めて雛鳥のピッピちゃんをお世話することになったんだ。




