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その伯爵令嬢、〝替え玉〟につき ~替え玉のわたし(妹)が侯爵に溺愛されるなんてあり得ません  作者: とんこつ毬藻
<Ⅱ.南の領主編~Scene Southolive>

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第57話 その悪役令嬢、英雄の行動に衝撃を受ける

 い、いったい何が起きているのか……説明して欲しいですわー!

 お茶会でわたくし役を務めている替え玉アリーシェのハーブティーに毒を混入した犯人がどこぞの伯爵夫人だとあの子へ告げたところまではよかったのですわ。顔面蒼白したアリーシェの顔は傑作でしたもの。


 でも何ですの? せっかくあとはマリーナリゾートで余暇を楽しもうと思っていた矢先、マリーナ港で火災が発生して公爵家へ宿泊しろですって? 


 一瞬、沸騰しかけたわたくしでしたが、そこは淑女な侍女を演じているわたくし。その場に西の英雄の執事、スミスとやらが居たものですから、尋ねたのですわ。『ソルファ様は泊っているのか?』と。ソルファ様は公務中との事でしたけど、夜には帰って来るでしょうから、ソルファ様を疲れを労うように部屋を訪れ、夜這いでもしようかと考えたのですわ。侍女だろうと可愛い女性に手を出す侯爵なんて無数に居ますから。偽物のアリーシェなんかに本物のわたくしが負ける訳がないですもの。


 しかし、部屋についていたお風呂へ入ろうかとひと息ついていたところに事件が起きたのです。突然、遠くで聞こえた爆発音と共に、お屋敷が揺れたんですの。そして、揺れが収まったあとお母様が『アリー、今すぐ侍女服へ着替えなさい!』とわたくしへ指示し、こう告げたのですわ。


「外で何が起きているのか、今すぐパール婦人の下へ向かいますわよ」



 こうして、わたくしとお母様はパール婦人の下へ向かい、そこには何故かわたくしローズへ扮したアリーシェも居て……。キャサリーナがパール婦人へ詰問している間に、あの御方……西の英雄ソルファ様が帰って来たのですわ!


 そしていま、そう今……わたくしの目の前で! わたくしローズの姿に扮したアリーシェと、ソルファ様が! だ、だだだ、抱き合っているのですわーーー!


「ローズ。人前でお熱いのは結構ですが。場を弁えなさい」


 わたくしがあわわわわと口元に手を当てている間に、わたくしの横に居たお母様キャサリーナが動きましたわ。そう、そうよ。あんな偽物、いつものお母様の手腕でぶちのめしてやって……え? 扇子で口元を隠しているけれど……お母様が、笑っている?


「……ソ、ソルファ様」

「……ああ、そうだな」


 周囲の様子に気づいたのか、変装中のアリーシェがソルファ様の横へ飛んで距離を取りましたわ。ちょっと両頬を林檎みたく赤くしている場合? わたくしの変装姿でそんな恥を晒さないでちょうだい。


「キャサリーナ殿。失礼致しました。今しがた、公爵家外にてルモーリア王国で悪事を働く組織、ワイルドウルフの幹部らしき女と交戦して来たところです。先刻の火事もワイルドウルフが仕切る盗賊団の仕業です。アジトは既に我々騎士団で制圧。もう危険はないと判断しますので、ご安心下さい」

「な、なんですって!? では、あなた達騎士団が動いていたというのですか!? パール婦人、町で盗賊団が悪さをしていると分かって、あなたはお茶会を開催したのですか? ま、まさか!? 娘に仕込まれた毒も関係があるのですか?」


「はい。お茶会へ出席していたロジータ夫人は偽物です。本物のロジータ夫人は盗賊団のアジトに囚われていました。先刻のお茶会へは、ワイルドウルフ幹部――(ルージュ)のリンダという者がロジータ夫人に変装して潜入していた模様です」

「なっ……パール婦人! そんな危険な状況を分かっていて、ワタクシ達を招待したというのですか!?」


 お母様が怒るのも無理はありませんわ。扇子を閉じ、ソルファ様とパール婦人を交互に睨み付けるお母様。怒りのオーラが身体中から溢れ出ていますわね。今のキャサリーナは紫宝石(アメジスト)色の闇を纏った神話の魔法使いですわ。


「その点についてはぼくから説明します」

「サウスオリーブ公爵」


 サウスオリーブ公爵がキャサリーナとわたくし達へ一礼し、事情を説明し始めましたわ。ワイルドウルフという組織はルモーリア王国で昔から悪さをしている組織で今に始まった事ではないという事。昨今サウスオリーブ領で窃盗などの事件が多く発生しており、警戒を強めている中、その悪さをしている盗賊団の調査を極秘で騎士団へ依頼していたという事。お茶会開催が決まった後で、盗賊団がワイルドウルフの一味であると分かった事。お茶会開催中も厳戒態勢を強め、被害がないよう準備をしていたということみたいですわ。


「リンダという幹部の女がロジータ夫人へ変装し、紛れ込んでいた点についてはぼくからも謝罪させてください。今後は、親しい相手であっても、公爵家の敷地を跨ぐ際は、本物(・・)偽物(・・)か判断してから招く事にします」

「……それは結構ですわ」

「え?」


 再び扇子を開いたキャサリーナがサウスオリーブ公爵に背を向け、わたくしとセバス、キャサリンが待つ場へと下がります。


「パール婦人」

「何です? キャサリーナ」


「毒の件も含め、今回の件、不問とします。あなたも各方面の根回しを考えると今更中止は出来なかったのでしょう」

「あら、珍しいですわね。私の苦労を労うだなんて」


 パール婦人が微笑み、キャサリーナは双眸(ひとみ)を細めたままニ、三秒静止しますわ。そして、ひと言。


「西の英雄が守ってくれたのなら、ローズも本望でしょう」

「そうね、ローズさんとソルファ様。良好な関係だと思いますわよ」


 な、なんですの……良好な関係ですって!? わたくしではなく……あの偽物ローズとソルファ様が!?


「そ、そんなの……」

「アリー!」


 わたくしの両肩が跳ねましたわ。全く視線はこっちに向いていないのにキャサリーナは後ろに耳でもついているっていうの? 思わず口から漏れ出していたそんなのありえませんわに反応したキャサリーナは流石としか言いようがありませんわね。


「皆疲れていますので、今日はこの変で失礼させていただきますわ。ご機嫌よう」


 豪華なスカートの裾を翻し、キャサリーナは滞在先の部屋へと戻りましたわ。わたくしとセバス、キャサリンも慌てて一礼し、その場を後にしたのですわ。


 部屋の鍵を閉め、周囲に密偵などが警戒していないかをセバスへ確認させ、盗聴などの恐れがないと判断してから、キャサリーナは椅子へ深く腰掛けるのですわ。


「どうやらあの子。西の英雄の懐へうまく入り込んでいるみたいじゃないの。偽宝石(イミテーション)にしては及第点ですわね」

「お母……じゃなかった。ご主人様。あのままで宜しいのですか?」


「構いませんことよ。むしろこのまま今晩、感動の再会で腰でも振って貰い、既成事実でも作ってしまえば後はこちらのものでしょう?」

「なっ……こ、腰でもって……」


 お母様が何を言っているのか想像したわたくしは顔を真っ赤にするのですわ。


「あら、アリー? 夏には社交界が始まります。あなたもあのソルファ卿のようないい男でも捕まえなさい。男なんて甘い吐息で上目遣いに近づいて、胸元でも見せればイチコロよ? 偽宝石(イミテーション)でも出来ているんだから、あなたにも機会を与えましょう」

「なっ……」

 

 ま、まさか……いや、でも、ソルファ様は西の暴君と言われている男ですもの。紳士的な態度は表の顔で、夜な夜なあのアリーシェとあんなことやこんなことをやっているかもしれないって事ですの……。そんなの信じたくない……信じたくありません。


「そ、そんなの……ありえませんわーー!」

「アリー!」


 溜まりに溜まった『そんなのありえませんわー』がこの日、宿泊先の部屋に響き渡ったのですわ。


 密偵は盗賊団の残党が潜入していないか、爆発現場の現場検証など、各所で忙しくしていましたので、このときのローズの叫びはお部屋と外の廊下へ響き渡っただけで終わったようです。アリーシェは別に自然体でソルファ様と接していただけなのに、キャサリーナとローズは一体アリーシェが何をどうやってソルファ様と距離を縮めていったのか、分かっていないようですね。


 第2幕南の領主編もようやく残すところ数話というところまで来ました。此処までお読みいただきありがとうございます。


 これから物語がどう進んでいくのか? 見守っていって貰えると嬉しいです。

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