13:朝
再び目を開けた時も、まだ夜は終わっていなかった。辺りは黒く、深く染まっている。けど、夜明けまでそれほど遠くないだろう。頭を起こす。
手足の筋肉が少しだるい。気だるさを振り落とそうとするように、腕を回してみた。さほど効果はない。昨夜の寝る前の時よりも、今の方が眠気が強い。だらしなく股を開いた右足の上に、力の入らない片腕を引っ掛ける。ジッと、無言で座り込んでいる。
やがて、いつとははっきり気付かぬうちに、闇が濃い藍色へと色を持ち始めてきた。天のまだら模様、あいにく曇りのようだ。幸いというべきか、雨は降っていない。腕時計を見やる。バスの始発までまだ数時間ある。
重みで凸凹に潰れたリュックを、上に引っ張って伸ばす。中からアンパンとジュースを取ると、案の定パンは生地が破れて、中身のアンがあちこちからはみ出ている。慎重に袋を破いて、零れ落ちそうなアンをすすり取りながら、あっという間に全て食べ終える。まだ胃袋には、もう少し入りそうなので、立ち上がり、リュックを右肩だけ引っ掛けて、また昨日のコンビニへと入っていった。
食べ物を買う前に、先に、雑誌コーナーで色々読んで時間潰しをした。特によく読んでいる漫画があるわけではない。これまで単行本でしか読んだことの無い、週刊誌、月刊誌を一つずつ目を通していく。ほとんどが連載作品となっている。意味は分からないことが多いが、勝手に物語の前後を補足して一気に読み進めていく。風に舞うページのようにめくっていく。
置いてあるもの全て読み切ってしまうと(けど内容はほとんど覚えていない)、またジュースのコーナーに行き、パンの棚に行き、同じような菓子パンを選んで、レジを済ませる。
再び駅舎前へ。コンビニの袋をベンチの右手に、リュックを左手に置いて、先にリュックの中を漁る。ポータブルプレーヤー、イヤホンを耳の中に入れ、そして再生させる。プレーヤーは、シャツの胸ポケットに入れてしまう。今日は……今日もずっと、聴き続けていよう。
本物の、海の香りがするまでは、もう遠くはないはずだ。
空気はひんやりと、湿っている。けど別に、雨が降っても構わない。