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なんか捨て子の女の子に転生したらしい  作者: ダレイワス1世
第六章 アレクシア学園一年目序列戦編
92/92

なんか変わったところを確認されるらしい

朝。


起きた時には、もうルカがいた。


布団の横。


座っている。


じっと見ている。


「……おはようございます」


「ねえちゃ」


「はい」


「おきた」


どうやら確認は済んでいるらしい。


満足そうだった。


少し近い。


かなり近い。


「ルカ、顔が近いです」


「ねえちゃ」


返事になっていない。


でも、機嫌は良さそうだった。


襖の向こうから母さんの声が飛ぶ。


「ヨウカ起きたー? カリン来てるわよ」


思ったより早かった。



庭へ出ると、カリンがいた。


制服ではない。


村の服。


でも、盾と剣はある。


癖らしい。


カリンは俺を見る。


少しだけ視線が止まった。


「おはよう」


「おはようございます」


少し沈黙。


変な沈黙ではない。


昨日まで、同じ学園にいた。


でも、村で会うと少し違う。


距離感を測り直している感じがする。


「ちゃんと寝た?」


「かなり」


「よかった」


カリンは少し安心した顔をした。


それから、少し迷う。


珍しい。


「……少し、見たい」


「何をですか」


「今のヨウカ」


少し、言葉に詰まる。


順位戦の話はした。


でも、カリンは全部見ていたわけではない。


俺も、全部話していない。


「投げるのとか」


「ああ」


それなら分かる。


「でも、軽くです」


「うん」


「あと、危ないのはなしで」


「分かってる」


その返事が少し早かった。


たぶん、カリンも本気ではやる気がない。


確認だ。



そういう感じだった。



庭の端。


木剣。


鞘に入れた短剣。


地面には小石や小さな木片。


特別な準備は何もない。


村の庭だった。


「始める?」


カリンが盾を構える。


でも、重くない。


いつもの立ち方より少し柔らかい。


本気ではない。


ただ、見る姿勢だ。


俺も短剣を抜かない。


鞘のまま。


一歩。


カリンが前へ出る。


速くない。


でも、真っ直ぐ。


俺は地面の小石を一つ拾った。


投げる。


カリンに、ではない。


足元より少し外。


踏み込みたくなる場所。


カリンが止まった。


一瞬だけ。


盾が少し動く。


その隙に、横へ回る。


「……嫌」


カリンがぼそっと言った。


「何がですか」


「そこ」


足元を見る。


「踏みたくない」


少しだけ笑いそうになる。


効いている。


正面から崩せない相手には、こっちの方が早い。


今度は木片。


投げる。


今度は盾側。


当てるのではない。


見ないといけない場所へ。


カリンの視線が少し落ちる。


そこへ近づく。


短剣の距離。


でも、入る前に盾が来る。


重い。


押し切れない。


すぐ引く。


「前より、嫌」


カリンが言う。


「褒めていますか」


「かなり」


それは良かった。


でも。


次の瞬間。


盾が前に出る。


距離を潰される。


一歩。


もう一歩。


速い。


近い。


俺は短剣を置く。


止める。


腕。


足。


入り口。


でも。


「届かない」


カリンの木剣が、俺の肩口で止まっていた。


近距離はまだ上。


素直にそう思う。


「負けです」


「うん」


カリンは木剣を下ろした。


息は乱れていない。


俺もそこまで疲れていない。


試合ではない。


確認だった。


でも、分かったことはある。


「前と違う」


カリンが言う。


「どう違いますか」


「前は止まってた」


少しだけ考える。


たぶん、合っている。


前の俺は、見てから止まることが多かった。


今は少し違う。


見る。


置く。


動かす。


入る。


その順番になってきた。


「でも」


カリンが続ける。


「少し無茶する」


「しました?」


「する」


言い切られた。


否定できない。


順位戦でも、少し入りすぎた。


ディオン戦なんて特にそうだ。


「あと」


カリンが少しだけ視線を逸らす。


「前より、ちゃんと戦ってる」


その言い方が少し引っかかった。


「前は?」


「守られる側だった」


ああ。


そういう意味か。


少しだけ黙る。


嫌ではなかった。


むしろ、少し嬉しい。


「カリンは変わりました」


「そう?」


「強くなりました」


「ヨウカも」


短い会話だった。


でも、昨日より自然だった。


学園で、ちゃんと話せなかった分が少し埋まる。


その時。


「ねえちゃ!」


ルカの声が飛んだ。


振り向く。


走ってくる。


危ない。


俺とカリンが同時に動いた。


でも、先に動いたのはカリンだった。


すっと前へ出る。


止める。


抱き上げる。


自然だった。


あまりにも自然だった。


「危ない」


カリンが静かに言う。


怒ってはいない。


でも、真面目だった。


ルカは少しきょとんとしている。


それから、カリンを見る。


俺を見る。


「ねえちゃ」


「います」


「いた」


安心したらしい。


母さんが少し離れた場所で笑っている。


「カリン、もう完全にお姉ちゃんね」


カリンが少しだけ固まった。


「……違います」


「そう?」


「違います」


少し耳が赤い。


俺は少し笑った。


昨日から、帰ってきた感じが少しずつ増えている。


どうやら、変わったところを確認されるらしい。

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