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なんか捨て子の女の子に転生したらしい  作者: ダレイワス1世
第六章 アレクシア学園一年目序列戦編
81/166

なんか今年の序列が決まったらしい

最終日の掲示板には、もう名前が少なかった。

 

五位決定戦。

三位決定戦。

そして、決勝。

 

そこに俺の名前はない。

 

カイルの名前もない。

 

カリンの名前もない。

 

けれど、見覚えのある名前はいくつも残っていた。

 

トルシエ・ユング。

ソルベ・トーレス。

ヤパ。

ロデュウ・フリードリヒ。

エルナ。

 

昨日まで、試合場を別物にしていた人たちだ。

 

「ここまで来ると、名前だけで重いですね」

 

俺が言うと、マリベルが掲示板を見たまま頷いた。

 

「ええ。誰が勝っても、変な納得があるわ」

 

リーナは少しだけ首を傾げた。

 

「でも、全員勝つわけではないんですよね」

 

「はい」

 

強い人が負ける。

 

もっと強い人に。

 

順位戦は、それを最後まで見せるらしい。

 

⸻

 

最初に呼ばれたのは、五位を決める試合だった。

 

トルシエ・ユングは、大槌を肩に担いで試合場に入った。

 

相手は五年生の剣士だった。

 

背が高く、剣も長い。

 

真正面から大槌を受ける気はないのだろう。

 

足を細かく動かし、最初から横へ回る構えを見せている。

 

トルシエは、それを見ても大きく構えを変えなかった。

 

大槌を下ろす。

 

地面に、重い音が落ちる。

 

「始め」

 

剣士が先に動いた。

 

速い。

 

大槌の正面には入らない。

 

斜めへ走り、トルシエの外側を取ろうとする。

 

大槌は重い。

 

振り向きが遅れれば、背中を取れる。

 

たぶん、そういう狙いだった。

 

トルシエが大槌を持ち上げる。

 

遅い。

 

だが、剣士の踏み込みが止まった。

 

大槌の先ではない。

 

地面。

 

トルシエの足元から、嫌な圧が広がっている。

 

「大震撼!」

 

大槌が地面を叩いた。

 

試合場が跳ねる。

 

剣士の足が、わずかに浮いた。

 

転ぶほどではない。

 

けれど、踏み込みの足がずれた。

 

剣の線がぶれる。

 

そこへ、トルシエが大槌を横へ振った。

 

直撃を狙ったものではない。

 

風圧と間合いで、剣士を外へ弾く振り。

 

剣士は後ろへ跳んだ。

 

きれいに避けた。

 

そう見えた瞬間、着地の場所がまた揺れた。

 

二撃目。

 

トルシエは、大槌を振り抜いた勢いのまま石突き側を地面に打ち込んでいた。

 

小さい大震撼。

 

一撃目ほど大きくない。

 

だが、着地に合わせるには十分だった。

 

剣士の膝が沈む。

 

トルシエが前へ出る。

 

大槌を振り上げる。

 

剣士は転がるように横へ逃げた。

 

逃げた先に、三撃目の振動が来る。

 

大槌が地面を擦った。

 

土が波のように横へ走る。

 

剣士の足がまた止まる。

 

トルシエは、ただ力任せに振っているわけではなかった。

 

一撃目で足を浮かせる。

 

二撃目で着地を潰す。

 

三撃目で逃げ道を削る。

 

大槌の重さで、試合場そのものを武器にしている。

 

剣士も粘った。

 

大震撼の揺れが来る前に、小さく跳ぶ。

 

着地をずらす。

 

トルシエの懐へ、一度だけ鋭く入った。

 

剣が胴前へ伸びる。

 

届く。

 

だが、トルシエは大槌を戻さなかった。

 

柄を縦に立てる。

 

剣が柄に当たる。

 

高い音。

 

剣士の手首が跳ねた。

 

その瞬間、トルシエの肩が入る。

 

大槌ではない。

 

体で押す。

 

剣士の体勢が崩れた。

 

トルシエが大槌を持ち替える。

 

今度は振り下ろさない。

 

柄の先を、相手の胸元の手前に置く。

 

「そこまで!」

 

教師の声が飛んだ。

 

勝者、トルシエ・ユング。

 

五位。

 

大槌は、当たれば終わり。

 

でも、それだけではなかった。

 

揺らして、止めて、逃げ道を潰す。

 

大きな武器なのに、試合の作り方は思ったより細かい。

 

俺は手の中の記録板を開きかけて、まだ閉じた。

 

今は書くより、見る方が先だ。

 

⸻

 

三位決定戦は、ヤパとソルベ・トーレスだった。

 

鞭と幻惑。

 

土魔法とゴーレム。

 

どちらも、相手にしたくない。

 

ソルベは開始前から、足元の土を静かに動かしていた。

 

反則ではない。

 

結界内の整地の範囲。

 

だが、あれはたぶん準備だ。

 

土を知っている者だけが分かる、わずかな下地作り。

 

ヤパは、いつも通り立っていた。

 

鞭を垂らし、力の抜けた姿勢。

 

何も考えていないようにも見える。

 

全部見ているようにも見える。

 

「始め」

 

ソルベが先に動いた。

 

土が立ち上がる。

 

人の背丈を超えるゴーレムの腕が二本。

 

その間に、分厚い土壁。

 

昨日カイルを封じた形より、さらに大きい。

 

逃げる場所を先に潰している。

 

ヤパの鞭が揺れた。

 

赤い薔薇の影が散る。

 

鞭が三本にも、五本にも見えた。

 

だが、ソルベは鞭を追わない。

 

ゴーレムの太い指が、土壁の縁を掴んだ。

 

「ウォールハンマー」

 

土壁が横から振られる。

 

広い。

 

重い。

 

幻も本物も、まとめて潰すような一撃。

 

ヤパの姿が、土壁に呑まれた。

 

赤い薔薇の影が潰れる。

 

土煙が上がる。

 

だが、手応えはなかった。

 

本物のヤパは、土壁の振り抜きよりも内側にいた。

 

ゴーレムの腕の影。

 

そんな場所に入れるはずがない。

 

そう思うのに、そこにいる。

 

鞭が、ゴーレムの手首に絡んだ。

 

引かない。

 

止めない。

 

ただ、添える。

 

ソルベが手を動かす。

 

ゴーレムの腕が、ヤパを払い落とそうと動く。

 

その瞬間、ヤパの姿が二つに増えた。

 

右に逃げたように見える。

 

左に踏み込んだようにも見える。

 

正面には、薔薇の花びらだけが残る。

 

ソルベは迷わず土を広げた。

 

足元を固める。

 

ヤパの移動先を全部潰すつもりだ。

 

正しい。

 

たぶん、かなり正しい。

 

けれど、ヤパは逃げていなかった。

 

鞭が低く走る。

 

狙いはソルベ本人ではない。

 

ウォールハンマーを振ったゴーレムの肘。

 

その関節のような部分。

 

鞭が絡む。

 

ヤパは引かない。

 

ほんの少しだけ、角度を変える。

 

ゴーレムの腕が振り戻される。

 

土壁の残骸が、別のゴーレムの肩にぶつかった。

 

重い音。

 

土が崩れる。

 

崩れた土を、ソルベはすぐに使おうとした。

 

次の壁。

次の腕。

次の足場。

 

だが、ヤパの薔薇の幻が、崩れた土埃に混ざって広がる。

 

赤い花びらが土の中に見えた。

 

どこまでが土埃で、どこからが幻なのか分からない。

 

ソルベの指が、一瞬止まった。

 

止まったのは本当に一瞬だった。

 

それだけで、ヤパには十分だった。

 

鞭が、今度はソルベの足元を撫でる。

 

当てていない。

 

ただ、足を置きたい場所に薔薇の影が重なる。

 

ソルベは踏み替える。

 

踏み替えた先に、ヤパがいた。

 

いつ入ったのか分からない。

 

鞭の柄が、ソルベの胸元の手前で止まる。

 

「そこまで!」

 

教師の声が響いた。

 

勝者、ヤパ。

 

三位。

 

俺は息を吐いた。

 

ソルベは強かった。

 

ウォールハンマーも、ゴーレムも、土の再利用も強かった。

 

けれど、ヤパはその大きさを邪魔に変えた。

 

大きいものは強い。

 

でも、大きいからこそ、少しずれると戻すのにも時間がかかる。

 

そこへ幻を混ぜる。

 

判断を一瞬遅らせる。

 

その一瞬で入る。

 

嫌だ。

 

本当に嫌な戦い方だった。

 

でも、三位になる理由は分かった。

 

ヤパは礼をして、ふわりと下がる。

 

勝ったのに、勝った人間の顔ではない。

 

散歩の途中で、少し面白いものを見つけたような顔だった。

 

⸻

 

決勝。

 

エルナとロデュウ・フリードリヒ。

 

生徒会長。

氷の魔法使い。

 

第二王子。

炎の剣士。

 

二人が結界の内側に立つ。

 

それだけで、試合場の温度が分かれたように感じた。

 

ロデュウは剣を下げている。

 

炎はまだ出ていない。

 

それでも、熱の気配がある。

 

エルナは静かに立っている。

 

冷気は見えない。

 

けれど、足元の土が少し締まったように見えた。

 

「礼」

 

二人が頭を下げる。

 

顔を上げる。

 

「始め」

 

先に動いたのは、ロデュウだった。

 

一歩。

 

その一歩で、炎が剣に乗った。

 

カリンを押し込んだ炎。

 

ヤパの幻を焼いた炎。

 

だが、今はそれよりも大きい。

 

剣を振るたびに、炎の尾が試合場を走る。

 

熱が前へ押し出される。

 

エルナは下がらない。

 

足元から氷が広がった。

 

炎が走る。

 

氷が迎える。

 

赤と白がぶつかる。

 

溶ける。

凍る。

砕ける。

 

一度で終わらない。

 

ロデュウの炎は、氷を溶かして道を作る。

 

エルナの氷は、溶けた水をまた凍らせて足場を変える。

 

剣が来る。

 

氷の板が立つ。

 

炎の剣が当たる。

 

板が砕ける。

 

砕けた氷が蒸気になる。

 

白い煙が上がる。

 

その煙の中から、ロデュウがさらに入った。

 

正面。

 

迷いがない。

 

炎の大きさに目を奪われるが、本体は剣だ。

 

速い。

 

重い。

 

剣筋がきれいだ。

 

エルナは半歩だけ横へ動いた。

 

大きく逃げない。

 

半歩。

 

それだけで、ロデュウの剣筋が少しずれる。

 

氷の線が、ロデュウの後ろへ走った。

 

退路を塞ぐように。

 

ロデュウは振り返らない。

 

炎を後ろへ落とす。

 

氷が割れる。

 

前へ進む。

 

エルナの氷が、今度は低く走った。

 

足首を狙うのではない。

 

足の置き場を奪う線。

 

ロデュウは踏み抜いた。

 

炎が地面を舐める。

 

氷が溶ける。

 

溶けた水が、すぐに凍る。

 

足場が滑る。

 

それでも、ロデュウは止まらない。

 

足を強く置き、剣を振る。

 

炎が広がる。

 

エルナの前に、赤い壁ができた。

 

氷の壁が立つ。

 

炎がぶつかる。

 

氷が割れる。

 

割れた欠片が、炎の中で白く光る。

 

エルナの指が動いた。

 

その欠片が、ロデュウの横へ飛ぶ。

 

攻撃ではない。

 

配置。

 

次の氷の起点。

 

ロデュウがそれを見た。

 

剣を返す。

 

炎の尾が氷片を焼く。

 

その間に、エルナが一歩下がる。

 

ただ逃げたのではない。

 

下がった場所に、もう霜が走っていた。

 

ロデュウが踏み込む先を、先に作っている。

 

「細かい……」

 

思わず呟いた。

 

リーナが隣で息を呑んでいる。

 

エルナは大きな氷を使える。

 

でも、それだけではない。

 

小さな氷片。

溶けた水。

蒸気。

砕けた壁。

 

全部を、次の配置に使っている。

 

ロデュウは、それを炎で焼きながら進む。

 

ただ焼くだけではない。

 

広げる炎で視界を奪う。

 

細い炎で足元を切る。

 

剣に纏わせた炎で、氷を砕く。

 

炎の形が何度も変わる。

 

ロデュウが低く息を吐いた。

 

炎が剣へ集まった。

 

広がっていた熱が、一本の線へ絞られていく。

 

「炎龍波」

 

剣が振られた。

 

炎が龍の首のようにうねる。

 

正面から、エルナへ走る。

 

大きい。

 

速い。

 

熱が形を持っている。

 

あれを盾で受けたカリンの腕を思い出した。

 

胸の奥が、少し縮む。

 

エルナは両手を上げた。

 

冷気が落ちる。

 

「アブソリュートゼロ」

 

声は静かだった。

 

だが、試合場の空気が変わった。

 

炎龍波が、鈍った。

 

消えたのではない。

 

炎の形をしたまま、動きが遅くなる。

 

赤い龍の首に、白い霜が走る。

 

炎が、氷に食われていく。

 

ありえないような光景だった。

 

ロデュウは止まらない。

 

炎龍波が鈍った瞬間、その横を抜けた。

 

大技を壁にして、自分は剣本体で入る。

 

強い。

 

炎龍波そのものも強い。

 

だが、それを隠れ蓑にして詰める判断がもっと怖い。

 

エルナの氷が足元から立ち上がる。

 

ロデュウは剣で砕く。

 

炎で溶かす。

 

前へ。

 

前へ。

 

あと一歩。

 

観覧席の空気が止まった。

 

届く。

 

そう思った瞬間、エルナの指が動いた。

 

砕かれた氷の欠片。

 

溶けて水になったもの。

 

白い蒸気。

 

ロデュウが焼いたはずのもの。

 

それらが、ロデュウの周りで一斉に凍った。

 

足元。

肘の横。

剣の下。

肩の後ろ。

 

全部を止めるわけではない。

 

ほんの少しずつ、動きを削る。

 

足が半拍遅れる。

 

剣がわずかに重くなる。

 

肘の線が狭くなる。

 

ロデュウの炎がそれを焼く。

 

だが、焼くために一瞬だけ炎が散る。

 

その一瞬で、エルナの氷の刃が立ち上がった。

 

鋭くはない。

 

試合用に丸められている。

 

それでも、胸元の手前。

 

決定打の位置。

 

ロデュウの剣は、あと少し届いていなかった。

 

「そこまで!」

 

教師の声が、実技場に響いた。

 

一瞬、誰も声を出さなかった。

 

ロデュウの炎がゆっくり消える。

 

エルナの氷が、白い霧になってほどける。

 

二人は、同時に息を吐いたように見えた。

 

「勝者、エルナ」

 

次の瞬間、声が爆発した。

 

拍手。

足音。

名前を呼ぶ声。

 

その全部が重なる。

 

エルナは静かに礼をした。

 

ロデュウも、深く礼を返す。

 

負けた顔ではあった。

 

だが、折れた顔ではなかった。

 

ロデュウは何かを短く言った。

 

ここからは聞こえない。

 

エルナが小さく頷いた。

 

王になりたい王子ではない。

 

剣を持って国を守りたい王子。

 

その炎を止めた氷。

 

今年の一位は、その氷だった。

 

⸻

 

表彰は、その日の夕方に行われた。

 

試合場は整えられ、結界具は止められていた。

 

土にはまだ、ところどころに凍った跡や焼けた跡が残っている。

 

完全には消えていない。

 

今日一日、ここで何があったのかを示していた。

 

上位五名が、前へ呼ばれる。

 

「第五位、トルシエ・ユング」

 

大槌の生徒が前へ出る。

 

「第四位、ソルベ・トーレス」

 

ソルベは静かに歩いた。

 

カイルを破った土。

 

エルナに止められた土。

 

それでも、四位。

 

「第三位、ヤパ」

 

ヤパは、やはりふわりと歩く。

 

四年生で、三位。

 

周囲のざわめきが少し変わった。

 

学年の上の者たちを越えて、そこに立っている。

 

異質だ。

 

「第二位、ロデュウ・フリードリヒ」

 

第二王子が前に出る。

 

炎の剣士。

 

決勝で敗れた人。

 

それでも、堂々としていた。

 

「第一位、エルナ」

 

生徒会長。

 

氷の魔法使い。

 

今年の序列一位。

 

エルナが前に出ると、拍手が一段大きくなった。

 

上位五名が並ぶ。

 

大槌。

土。

鞭。

炎。

氷。

 

方向が違う。

 

強さの形が違う。

 

でも、全員が上にいる。

 

俺はその列を見ながら、手の中の記録板を握っていた。

 

書くことはたくさんある。

 

でも、今はただ、見ていた。

 

⸻

 

その後、三十位までの序列が掲示された。

 

正式な序列。

 

来年度、学園内で上位者として扱われる生徒たち。

 

人だかりができる。

 

歓声。

ため息。

悔しそうな声。

喜ぶ声。

 

俺は少し離れて待った。

 

押し合いの中に入る元気はない。

 

レオスが先に見に行き、すぐに戻ってきた。

 

「カリン先輩、入ってる!」

 

胸が跳ねた。

 

「何位ですか」

 

「二十一位!」

 

二十一位。

 

俺は、その数字を頭の中で繰り返した。

 

カリン。

 

三年生。

 

二十一位。

 

正式な序列持ち。

 

すごい。

 

分かっていた。

 

カリンは強かった。

 

ロデュウに負けた。

 

でも、弱かったわけではない。

 

むしろ、あのロデュウに挑んで、盾の光で受けて、前へ出た。

 

だから、二十一位。

 

納得できた。

 

納得できるのに、遠かった。

 

人だかりの向こうに、カリンの姿が見えた。

 

誰かに声をかけられている。

 

祝われているのだろう。

 

カリンは少し困ったように、それでもきちんと頷いていた。

 

こちらを見た。

 

目が合う。

 

カリンは、ほんの少しだけ笑った。

 

大きく手を振るわけではない。

 

駆け寄るわけでもない。

 

ただ、小さく頷く。

 

俺も頷いた。

 

おめでとう。

 

声には出さなかった。

 

でも、たぶん届いたと思いたかった。

 

俺の名前は、序列にはない。

 

それでいい。

 

今はまだ、そこではない。

 

二年生には届いた。

 

三年生には届きかけた。

 

でも、序列には届かなかった。

 

カリンは届いた。

 

その事実は、少し悔しくて、かなり嬉しかった。

 

変な感じだった。

 

⸻

 

掲示板の前の声は、しばらく収まらなかった。

 

「エルナ会長、やっぱり一位か」

「ロデュウ殿下でも届かなかったな」

「ヤパ先輩、四年で三位って何なんだ」

「トルシエ先輩の大震撼、怖かった」

「カリン先輩、二十一位だって」

「三年で?」

「盾の人だろ」

「光ったよな、盾」

 

その中に、俺の名前も少し混ざる。

 

「ヨウカは?」

「序列にはない」

「でも一年で二年二人抜きだろ」

「ディオン先輩に負けた子」

「光と闇の」

「小さいけど、変な戦い方する」

「可愛いのに怖い」

 

最後は余計だ。

 

本当に余計だ。

 

でも、今日はそれに反応する元気もあまりなかった。

 

序列。

上位五名。

三十位。

二十一位のカリン。

序列外の俺。

 

全部が一気に形になった。

 

順位戦は終わった。

 

俺の中では、負けた時に一度終わっていた。

 

でも、今日ようやく本当に終わった気がした。

 

⸻

 

夜、記録板を開いた。

 

少し迷って、まず一行だけ書く。

 

今年の序列、決定。

 

その下に、上位五名を書く。

 

一位、エルナ。氷。アブソリュートゼロ。炎龍波を止めた。

二位、ロデュウ・フリードリヒ。炎の剣士。炎龍波。前へ進む炎。

三位、ヤパ。四年生。鞭。ローズウィップ。距離と目を狂わせる。

四位、ソルベ・トーレス。土魔法、ゴーレム。ウォールハンマー。

五位、トルシエ・ユング。大槌。大震撼。

 

少し間を空ける。

 

カリン、二十一位。

盾に光。剣にも光。ロデュウ相手にも下がらなかった。

 

さらに下に、自分のことを書く。

 

ヨウカ、序列外。

二勝。三回戦敗退。

まだ届かない。

 

そこで手が止まった。

 

悔しい。

 

でも、それだけではない。

 

俺は、今日見たものを思い出す。

 

炎を凍らせた氷。

 

幻を焼いた炎。

 

土壁を振るうゴーレム。

 

大地を揺らす大槌。

 

薔薇のように目を惑わす鞭。

 

そして、二十一位に入ったカリンの盾。

 

全部、遠い。

 

でも、見えた。

 

見えないほど遠いわけではなかった。

 

俺は最後に一行だけ足した。

 

来年、もっと届くようにする。

 

記録板を閉じる。

 

順位戦は終わった。

 

けれど、学園生活は終わらない。


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