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なんか捨て子の女の子に転生したらしい  作者: ダレイワス1世
第七章 アレクシア学園二年生編
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なんか討伐だけじゃないらしい

カリンと会ったのは、渡り廊下だった。

 

向こうから、歩いてくる。

 

四年生になって、また少し、雰囲気が変わった。

 

背が伸びた。

 

盾を背負う姿も、様になっている。

 

「ヨウカ」

 

「カリン」

 

名前を呼び合うのは、もう、自然になっていた。

 

「研修、終わったんだって?」

 

「はい」

 

「どうだった?」

 

「疲れました」

 

カリンが、笑った。

 

「私も、そう思った。二年の時」

 

四年生は、もう研修を終えている。

 

「討伐、あった?」

 

「ありました。ゴブリンの巣を」

 

「そっか」

 

カリンの声が、少し、静かになった。

 

「私の時も、討伐、あった」

 

それ以上は、言わなかった。

 

たぶん、同じことを、思い出している。

 

初めて、生きているものを殺した時のことを。

 

言葉にしなくても、分かった。

 

「大丈夫だった?」

 

カリンが、聞いた。

 

「震えました」

 

「うん。私も」

 

それだけで、通じた。

 

 

少し、二人で歩いた。

 

渡り廊下の窓から、中庭が見える。

 

一年生が、何人か、走っていた。

 

「カリンは、四年生ですね」

 

「うん」

 

「あと、二年で、卒業ですか」

 

「そうなる」

 

カリンが、窓の外を見た。

 

「早いね」

 

「早いです」

 

フィル村で、一緒に遊んでいた。

 

それが、もう、ずっと前のことのようだった。

 

「卒業したら、どうするんですか」

 

聞いてから、少し、気が早いかと思った。

 

まだ、二年ある。

 

だが、カリンは、すぐに答えた。

 

「冒険者に、なろうと思ってる」

 

「冒険者」

 

「うん。盾と剣で、人を守る仕事。私に、向いてる気がして」

 

それは、意外ではなかった。

 

カリンは、守る人だ。

 

順位戦でも、守ってから、前に出た。

 

聖騎士、という言葉が、また頭に浮かんだ。

 

だが、口には出さなかった。

 

「向いていると思います」

 

「そう?」

 

「はい。カリンは、守る人なので」

 

カリンが、少し、照れた顔をした。

 

「ヨウカに言われると、なんか、本当っぽい」

 

 

「ヨウカは?」

 

カリンが、聞いた。

 

「私ですか」

 

「うん。卒業したら」

 

考えたことが、なかったわけではない。

 

だが、はっきりとは、決めていなかった。

 

「まだ、分かりません」

 

「冒険者は?」

 

「私は、討伐が、あまり得意ではないので」

 

「でも、討伐だけじゃないよ」

 

カリンが、言った。

 

「え?」

 

「冒険者の依頼。討伐だけじゃない。お使いとか、荷物運びとか、薬草採りとか。人を捜したり、猫を捜したり」

 

「猫、ですか」

 

「うん。迷子の猫を捜す依頼も、あるって」

 

それは、少し、意外だった。

 

冒険者と聞いて、魔物と戦うことばかり、思っていた。

 

だが、そうではないらしい。

 

「討伐が苦手でも、できる依頼は、たくさんある」

 

カリンが言った。

 

「ヨウカは、薬草も分かるし、怪我の手当てもできる。人のことも、よく見てる。そういう依頼なら、向いてると思う」

 

言われて、少し、考えた。

 

薬草採り。

 

人助け。

 

迷子の、猫捜し。

 

どれも、戦うわけではない。

 

でも、俺に、できそうなことだった。

 

研修でも、薬草採りは、俺の役だった。

 

水路の掃除も、段取りを立てた。

 

戦うだけが、冒険者ではない。

 

そう思うと、少し、道が見えた気がした。

 

 

「登録だけなら、在学中でも、できるらしい」

 

カリンが言った。

 

「え、そうなんですか」

 

「うん。軽い依頼を、休みの日に受けたりして、慣れておく人もいる」

 

「カリンも?」

 

「まだ。でも、五年になったら、やってみようと思ってる」

 

四年生は、もう、そういうことを考えているのか。

 

「ヨウカも、やってみたら?」

 

「私が、ですか」

 

「うん。薬草採りとか、簡単な依頼から。慣れておけば、卒業してから、楽だと思う」

 

少し、迷った。

 

だが、悪い話では、なかった。

 

「考えてみます」

 

「一緒にやる?」

 

カリンが、言った。

 

軽い調子だった。

 

だが、その一言に、少し、胸が動いた。

 

一緒に。

 

カリンと。

 

「カリンと、ですか」

 

「うん。私が前で、ヨウカが後ろ。組めば、できることが増える」

 

前と、後ろ。

 

盾と剣の、カリン。

 

見て、支える、俺。

 

確かに、組めば、噛み合う気がした。

 

「向いているかもしれません」

 

「でしょ?」

 

カリンが、嬉しそうにした。

 

「じゃあ、いつか、一緒に」

 

「はい。いつか」

 

その約束は、まだ、ぼんやりしていた。

 

卒業も、冒険者登録も、まだ先だ。

 

でも、少し、楽しみになった。

 

 

別れ際、カリンが言った。

 

「また、話そう」

 

「はい」

 

帰省の時と、同じ言葉だった。

 

でも、あの時より、軽かった。

 

無理に、時間を作らなくても、こうして、廊下で会える。

 

それで、十分だった。

 

「順位戦、今年も出るんでしょ?」

 

カリンが、聞いた。

 

「出ます」

 

「私も。今年は、もっと上に行く」

 

「二十一位より?」

 

「もっと上」

 

去年と、同じことを言った。

 

だが、その顔は、去年より、自信があった。

 

「カリンなら、行けます」

 

「ヨウカも、去年より、上に行きなよ」

 

「行きます」

 

そう答えると、カリンが、頷いた。

 

そして、盾を背負い直して、歩いていった。

 

その背中は、フィル村にいた頃より、ずっと大きく見えた。

 

でも、頷き方は、昔のままだった。


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