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69.白粘土の採掘地を求めて取材班は空へと旅だった

 キャンプ地に長女ズ二人を残して、私は今、空の旅を満喫中である。


 ピンクのドラゴンの背中に乗って、中央平原を北へ。

 行き先は、夏でも冠雪しつづける天より高き大霊峰。


 その名をフージ山といった。


 聖王国も魔帝国も手出しできないドラゴンのテリトリーだ。


 両国の精鋭冒険者が、竜族の集めた金銀財宝を求めて挑み、誰も帰ってこなかった。なんて話は良く耳にした。


 バッサバッサとピンクの翼を羽ばたかせ、風を捉まえ空をく。


 乗り心地は良いとはいえんな。頭の方に短距離転移魔法で跳ぶ。


「おいドラミちゃんや。あとどれくらいだ?」


『もうすぐ着くよ! お兄ちゃん!』


 テレパシーがずいぶん流暢になったもんだ。私と契約したからだろうか。


 フージ山の裾野が広がり、遠く山体が見えてきた。遠近感バグってる。近づくと雄大さに、さしもの大魔導師も言葉を失った。


 頂上付近は九千メートルほど。美しい円錐形の成層火山だ。山脈に属する頂点ではなく、単一の山って感じである。


 んで、雲より高いんだから、普通の人間が山登りなんてしようものなら、凍結酸欠高山病そのほか諸々でまともに行動なんてできやしない。


 ま、人間に住めない場所ってのは間違いないな。


 でもって、ドラゴンたちは大霊峰の近辺に、それぞれ縄張りを張っては時々バトルして、とったりとられたりしているんだとか。


 山の高いところに住む竜ほど、格式高いとはピンドラの言葉である。


「なあドラミちゃんや。つまり山頂に住むドラゴンがチャンピオンってシステムなんだよな?」


『そうだよお兄ちゃん! ウチも本当はね、あの山のテッペンとる予定だったんだけどね』


「なんだ? 予定通りとはいかなかったのかん?」


『え? う、ううん。い、いつでもとれるし。ウチは天才ドラゴンですからにぇ。今はまだ、いっかなぁって』


 ドラミがいた茶色粘土の崖は、大霊峰フージから100㎞は離れている。裾野の外側だ。

 つまり雑魚ドラゴンなんじゃねぇの? 知らんけど。


 大霊峰を迂回しつつピンドラは高度を下げる。


 足下に白い岩場が広がった。裾野の窪地。谷みたいな場所だ。


「おっ! あそこか。確かに白っぽいな」


『当機は間もなく~白の谷に着陸しまぁ~すぅ。シートベルトはないのでぇ、衝撃に備えてくださ~い』


 念話で念押ししつつドラミは旋回飛行で徐々に高度を下げていく。


 白い地面が近づいてきた。


 着地の瞬間、私は短距離転移魔法で地上にダイレクト移動。


 遅れてドラミが巨体を振るわせズドンドシャーっと豪快にランディングした。


 と――


 目の前の岩山がぶるりと震えて首を上げる。


 どうやらこの場所には先客がいるようだ。


 白灰色の岩かと思ったそれは、岩石じみた鱗に身を包んだドラゴンだった。


「グルウウオワアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「ギョルルンワアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 ピンクと白灰が違いに吠え合う。


『お兄ちゃんは隠れてて! こいつ倒してこの場所奪うから!』


 おいおい大丈夫かドラミちゃん。


 二体の巨竜が後ろ足で立ち、前足腕組みにらみ合い。


 デカいと思ってたピンドラだけど、相手の灰竜は二回りほど縦にも横にもデカかった。


 と、白灰竜と私の目が合う。


『なんだぁテメェは?』


 テレパシーが最初から流暢だな。最初に会った時のドラミがカタコトだったことをかんがみるに、白灰竜は経験豊富(?)かもしれん。

 声質からしてオスだな。口ぶりが実にヤンがキーしていらっしゃる。チンのピラだか世紀末なモヒ感あり。


 訊かれた以上は答えよう。


「私はドラミの保護者だ」

『保護者ぁ? つまり……この出来損ないのゴミカスザコチビ桃竜と契約した人間ってことかぁ? ひゃーっはっはっは! こいつぁ傑作だ。人間に負けたのかおちびちゃん?』


 ドラミがぷるぷるっと震える。


『ま、負けてないし! お兄ちゃんが格好いいから妹にしてもらっただけだし!』


 いや、普通に負けただろ、私に。しぶしぶ契約してなかったか?


 短期記憶喪失のリアルタイムアタック2200歳児め。


 ともあれ、ドラゴンにとって勝負の概念はとても重要なのだ。


 ピンドラがぐるりとこっちに向き直る。


『そこで待っててにぇ! お兄ちゃんのためにこいつぶっ倒して、白い粘土いっぱいゲットするかりゃ!』


 白灰竜の目つきが変わった。


『ルールわかってんだろなガキ?』

『え? なんだっけ』

『テメェは頭ん中までピンクのお花畑かぁ?』

『黙りぇ! し、知ってっし。けど、言ってみ? 言ってみぃ?』


 知らないな。こりゃ。


 白灰竜が前足の指を一本立てる。


『ドラゴン同士の縄張りバトル。ルールその一。相手を絶対に殺してはならねぇ。個体数が減っちゃ他の種族につけいられるからな』

『うんうん、知ってるよ』


 二本目の指が立つ。


『ルールその二。その場から逃亡するか、自らまいったと敗北を認めたら負けだぜ』

『あったりまえでしょぅ?』


 三本目だ。


『最後は……なんでもありだ。どんな手段を使おうと、何をしようと殺さない以外の反則無し』

『う、うん! ウチだって覚悟……できてっし』


 私はそっと挙手して白灰竜に訊ねた。


「せんせー! なんでもありって、本当になんでもありなんですかぁ?」

『下等生物め。説明不要だ! ドラゴン同士の殺し合いだけを禁じる。それだけだぜ』


 ふぅ~ん♪


 言質げんち……獲ったどぉ!


 とはいえ、ドラミもやる気満々だしな。


 まずは自由にやらせてみるか。


 二頭が翼を広げて違いに後ろに飛び退いた。巻き起こった突風に身体ごともっていかれそうになる。


『お兄ちゃんは物陰に隠れてて! ブレスとかあちちだから!』

「わかった妹よ。まあそのなんだ……がんばれ」


 桃竜のコーラルピンクの瞳が輝く。


「うん! ウチ、がんばるね!」


 素直で良い子なのかもしれんな。シャンシャンとサッキーよ。メインヒロインの座、危ういぞ?


 こうして、竜VS竜の怪獣大決戦が開幕。

 私は白い岩の裏に身を潜め、迫力のバトルを間近で堪能することになるのだった。


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