63.ピンクのドラゴン略して~
蛍光ピンクみたいなファンシーな色味しやがって、立派に火竜だったらしい。
どうやら縄張りを主張するつもりだ。
威嚇の咆哮に対して、私が中指を立てる。
「中央平原は貴様のもんじゃないだろう。みんなのものだ。つまりは……私のものだ!」
「ギャオルルルルル!」
「人間語しゃべりなさいよ!?」
残念、優秀な私でも竜語は未履修だ。というか、発音できない。
『イマスグタチサレ』
こいつ、頭の中に直接語りかけてきた。どうやら人間語のヒアリングはできるようだ。
声色からして……メスか。まあ、心の声なんだけど。
テレパシーとはなんだかんだいっても長命種だ。ピンクのくせに。
「おいこらピンクババアドラゴン。立ち去れじゃなくて立ち去ってくださいだろ? それが誰かにお願いする態度か?」
『ダマリェ』
「はあ? 黙りませんけど? つーか心の声で噛むとか……ざっこ」
「ギュルルワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
キレたらしく、いきなり火炎ブレスを吹き付けてきた。短距離転移魔法で回避する。
殺意たっか。
そこいらにあった粘土の小山。その後ろに隠れる。
と、ピンドラ(ピンクのドラゴン)は炎ブレスを粘土山に向けて、一心不乱に吹き続けた。
クソあっついので私は自分の周囲に氷結魔法を張って中和する。
みるまに粘土が焼き上がった。
焼き……上がった?
土塊みたいだったのが、かっちりとした岩のようだ。
「おい貴様。良いブレス持っているな」
「ギュオ?」
「私と契約しないか? 焼いて欲しいものがある」
『契約シテクレル?』
心の声がスンとなった。おや? 激昂してたと思ったら意外な反応だ。
「そうだ契約だ。貴様が粘土を焼いてくれるなら、私も貴様の望みを叶えよう。無論、世界の半分が欲しいとかは無理だが、大魔導師のできる範囲内で協力しようではないか?」
『デハ、チカラヲシメセ』
ピンドラは天に咆哮すると、翼をはためかせて私の頭上に飛び上がった。
口から火球を吐いて地上を爆撃。
私は短距離転移魔法を繰り返し、ランダム回避する。
『チョコマカスルニャ!』
ドカンボカンとあちこちに火炎弾によるクレーターが出来上がった。
市街地じゃなくて良かったわ。まじ大惨事の一歩手前。戦場だってここまで酷い有様にはならんだろ。
穴ぼこだらけになった粘土質の土地。遮蔽物を全部破壊し尽くすドラゴンの攻勢。
私は隠れる場所が無くなった。
が、ピンドラも私の居場所を見失ったようだ。
『ド、ドコイッタ?』
私は今――
ドラゴンの頭の上にいます。
飛翔する竜の脳天に立って、腕組みしなら直立不動。
「貴様の頭の上だぞ」
『ナ、ナ、ナニー!?』
ドラゴンは空中で反転した。腹を天に向けて空を背泳ぎするドラゴン。その鼻先に短距離転移で着地する。
『バカニャ!?』
「力を示せば貴様は交渉のテーブルにつくのだな。では……いくぞ。覚悟の準備はできているな?」
先に武力で訴えかけたのそっちだからな。
男女平等主義者として、こいつをわからせる。
指先に魔法力を込めに込めて……竜の眉間にデコピン一発。
硬い鱗の装甲もなんのその。インパクトの衝撃を脳にぶつけた。
『――ギャッ!?』
竜の羽ばたきがとまり、きりもみ落下。地面にズドンと墜落した。
え? もちろん私は着地寸前で転移魔法。落下の衝撃をキャンセルし、無事、生還である。
目を回すドラゴンの顔に近づいて、ほっぺたあたりをペチペチ平手で叩く。
「どうだ参ったか? 参ったといえ? 参りましたメイヤ・オウサー様。これからは一生忠誠を誓いますと言え」
「グルルッポォ」
「人間語でどうぞ」
『キミミタイナ人間ハ、ハジメテダヨ。契約ヲ……ムスボウ』
ふむ、捨てるロリあれば拾うドラゴンありか。
こいつの火炎ブレスならちょうど良い高温さでレンガが焼けそうだ。
ドラゴンオーブンゲットだゼ!




