帰還
鬼人を送り出したその夜はそのまま洞窟で朝を待つ事にした。
薪はあるし、鬼人が残りの食材で鬼人料理を作って置いておいてくれている。
燻製肉を果実の上に乗せたもの、焼いた川魚にライムの様な実を絞ったもの、ガレットの様な生地に香草と蛙肉が巻いてあるもの。
どれも絶品だった。
猫は味が濃いと少ししか食べられないが、鬼人料理はたらふく食えた。
クワンリもとても気に入った様で真剣に食べている。
焚き火の前で二人、炎に顔を照らされてじっと揺らぎを見る。
時々薪が弾けて毛並みの良い身体に焦げが出来ないか気をつけながらクワンリに身を寄せる。
クワンリは黙ったまま俺の身体を優しく撫でてくれる。
目を細めてサイレントニャーのお礼をしてゴロゴロと喉を鳴らす。
チラッとこちらを見て少し微笑みながらクワンリは魔草を吹かす。
森の夜は更けていく。
「良い月ですね」とか言って見たくなる夜だ。
言わないけど。
忘れてた!失敗した、、、
この女は方向音痴だった。森を彷徨い続けもう三日目だ。
鬼人の洞窟に来た時は精々一日で着いたのに、もう三日だ。
雨に降られてずぶ濡れだし昨日の夜に携行食は無くなるし。
命の危機を感じて来ている。
大型の獣は人族の山狩でいなくなっているし。
小動物は当てにならないし。
でも、斡旋所に鬼人の討伐報告をする時に討伐した場所を聞かれてもクワンリに嘘をつかせないで良くなったのは俺の心配事だったので良かったと思う様にしている。
いつになったら街に帰れるのだろう。
頼むから晴れてくれ、、、、。
三日目の夜に街に着いた、ボロボロな姿で斡旋所にたどり着いた。
閉める所だったが鬼人の討伐報告だと言ったら中に入れてくれた。
10体分の鬼人のツノを提出して討伐場所を聞かれたが、三日間森を彷徨ってやっと帰り着いた事をクワンリが告げると受付の人は笑ってそれ以上聞いてこなかった。
孤児院の院長からも捜索願いが出ていたらしい。
後二日戻るのが遅かったら捜索隊が出ていたそうだ。
よし、結果オーライだ!!
討伐方法を聞かれたが実家の秘伝だと苦しい言い訳も場が和んでいるからか、素直に受け入れられた。
後で聞いた話では討伐方法は遊び人の皆も言いたがらないのだそうだ。
企業秘密とでも言うのだろう。
鬼人の討伐報酬はかなりの額になった。
生息地調査は未達成、当たり前だ、案内できないのだから。
孤児院に帰り着いた。
風呂を沸かしている間
クワンリに院長や寮母さんは泣きながら説教している。
良い人達だ。
討伐報酬の半分!を渡そうとしてまた怒られている。
薬草販売がうまく行っていると説得され渋々引き下がった。
良い魔族だ。
俺は子供達に身体を拭いてもらっている。
やっと帰り着いた、心底疲れた。
瞼が重くなって来た、、、、
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