行き着いた先
人に聞きながら迷いながらやっと着いた。
この魔族の女は方向音痴らしい。
地図まで描いてくれたお爺さんもいたのに。
途中で出会った野良に先導してもらい着いた。
猫で良かった。
この魔族に任せていたら、一生着けなかった可能性が高い。
ボロい、、、結構デカいがボロい。
掃除は行き届いている様で、建物の周りも綺麗に掃除されている。
ここの人達はちゃんと生活している様だとホッとする。
鎧戸を開け中に入る、誰もいないのかシンと静まり返った吹き抜けの玄関に二人立ち尽くす。
「ごめん」
「誰か居らぬか?少し話がしたくて来た」
「ごめん」
「誰か居らぬか?」
玄関横の扉が開いて痩せこけた老婆が出て来た。
「何のご用でしょう、またうちの子達がご迷惑をかけてしまいましたか。」
クワンリの思念の説明はこうだ。
老婆によると、ここの孤児院は戦争で親を失って行き場のない子供達を育ている施設だと言う。
老婆はここの責任者だと言う。
国からの援助は始めた頃のままで、子供達は増える。
増額を申請しても取り合って貰えず、皆腹を空かしていて悪さをしてしまう子供もいるのだそうだ。
時々怒鳴り込みに来る商店主などが来るのだと言った。
俺たちもそうだと思ったらしい。
そうこうしていると鎧戸が開き子供達が帰ってきた。
訝しげに、興味深々にクワンリを横目でチラチラ見ながら順に入って来る。
俺を見つけた子供が目を輝かせている。
ヤバいロックオンされてる、、、、
前世から子供は苦手だ。
最後に引率の大人の女が入って来た。
驚きの表情と安堵の表情が交互に入り乱れた顔をしていると思ったら、クワンリに駆け寄り謝罪を始める。
何だと思って会話の内容ををクワンリに思念で説明をしてもらう。
例のアレの母親だったらしい。
孤児院の子供と使いに出てクワンリに出会ったと言う。
親子では無かったのだ。
クワンリの腰鞄を取って行ったのは孤児だった。
帰って来て子供が鞄を持っているのに気がついて慌ててクワンリを探しに行ったが見つからず。
今日も皆で探して来た帰りだと言う。
花売りの子供がクワンリに気がつき何か言ってる。
走って扉の向こうに消えると、手を引いてもう一人連れて来た。
思念を使ってみたが、人には使えない様だ。
今の所、猫とクワンリのみ使える事がわかった。
人型じゃ無いと人間とは意思の疎通はできないのかもしれない。
逆にクワンリは猫に思念が使えないかもしれない。
後で聞いてみよう。
クワンリに説明を求めたところ、病気の仲間の為にやったと言う事みたいだ。
この女の悪い癖が出た、、、
何やら鞄を受け取る受け取らないで押したり引いたりしている。
近所のおばちゃんが良くやってる光景が目の前で行われている。
・・・クワンリ
どうした?
・・・病気の子供のためになるなら使ってくれと言っているのだが、聞いてくれん。
やっぱり悪い癖が出てる、、、
良いやつだが、
鶏肉や魚が食べたいのに、、、
・・・お前の持ってる薬草で子供達の病気は治せないのか?
魔道具の魔性石の問題も解決したし、一旦受け取ってさ、
どのくらいの価値があるかわからないけど、ここの修繕や生活環境整備に使ってみてはどうだ?
クワンリに抱き引き寄せられまた頭を揉みくちゃに撫でられた。
だから、脳が揺れるって、、、
心地よい日差しと風の中、木漏れ日の元クワンリは魔道具を作っている。
・・・この魔術具に付ける魔性石のバランスが大事なのだ。
この大きさや純度をうまく設置しないと効果が上がらないのだ。
心配するな、私はこの見極めは上手い方なのだ。
なんか職人みたいで微笑ましい。
他の皆は近所の大工と共に
材料を買って来て屋根を直したり建物の修繕を始めている。
皆笑顔だ、楽しそうに働いている。
病気で寝込んでいた子供達は少しずつ回復して庭で一緒に作業を見ている。
・・・どうだノルよ、善意の行き着く先は気持ちよかろう。
クワンリはドヤ顔で俺に言って来る。
・・・悪くない
・・・素直じゃないな、
お前らしいが。
子供達に耳を引っ張られ、尻尾を振り回され、撫でくり回されながら、
うん良い気持ちだと言い直した。
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