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ミラーボール

全然つかない、めちゃくちゃ遠い....

もう疲れた....


今は、人化した族長に抱き抱えられ移動中だ。


いつもはクワンリに抱いて貰っている。

と言うか、初めてクワンリ以外の腕の中にいる。


ああ...なんか嫌だ、オッサンに抱かれていると思うと寒気が走る...


しかし、贅沢も言ってられない、何しろ遠いのだ。

悔しいがいつのまにかオッサンの腕の中で寝てしまっていた。


「山猫様着きましたよ。ここがカメムシ城の入り口です」


やっと着いたときには、朝日に照らされていた。


族長の腕からスルリと地面に降りて伸びをする。

見上げると、

朝モヤの中でオレンジの光に照らされているカメムシ城は湾曲している壁だった。

全体像が分からないくらいデカかった。


俺は城に続く長い石を組んだピラミッドを連想させる様な階段の下に行く。


「もう嫌だ!

こんな長い階段登れる訳がないだろう!」


俺がウンザリして、そう言うと、族長は両腕を広げてゆっくりと瞬きをするのだった。


またオッサンに抱かれなきゃならないんだな。



入り口の門番に見送られ俺と族長はコンテナの大きさ位の開口部から城の中に入った。

魔道具の明かりが灯る城の中は隔壁の扉が開放されていて、そこから先は、半円の通路になっていた。


族長の腕から通路に降りた瞬間、足元に誘導灯のような光が俺を導いているかのように光り始めた。


「何と言う事だ!何千年もの間、このような光がついたことは記録されていない。

やはり、あなたは伝説の山猫様......」


族長を見上げると驚きと喜びの中、涙を流していた。


そして俺自身もなぜだかわからないが、どこに行けばいいのかがなんとなくわかる。


やばいやばい。

これは本当にやばい。

もう俺自身も疑う余地がなくなった。

もう諦めよう、

きっとそういうことなんだろう。

なんでこの世界に転生してきたのか、俺はこの時なんとなくわかってしまったような気がした。


俺の好奇心が不安を上回る、ズンズン進む。


族長は静かに俺についてくる、金属のようなトンネルを誘導灯に従って進む。


階段を登ったり、降りたり、角をいくつも曲がる。

建物と言うよりは、もうこれは船の中だな。



大きなホールに出た真ん中には、七色に光り輝く球体の姿があった。

前世で見たミラーボール、異世界で、こんな形で出会うとは...


族長は腰が砕けた様に座り込み、呆然と球体を見つめている。


部屋中にモザイクのように、光が反射している、

この部屋も大きな半球体のような構造になっている。


呼ばれた気がした、

俺は球体に近づいた。


一緒になろう


帰ろう


元に戻ろう


頭の中に、心の中に、そんな声が聞こえた、

思念でも無い、

言葉でも無い、

不思議な感覚だ。

自分の心の中から発せられているような、球体から話しかけられているような。

真下についてまぶしいミラーボールを見上げる。

なんだか、とても懐かしくなった気がしたら、とても眠たくなってきて、

俺は、その場で暗い闇の中に引きずり込まれてしまった。

黒い霧とともに、自分の体が溶けていくような、そんな感覚だった。


夢を見た、

宇宙から地球を見ている?

青く美しい惑星が近づいてくる、

一瞬、白く強烈な炎に包まれる。

まぶしくて目を閉じる。


地上に大きなクレーターが見えて来た。

そこに向かってどんどん降下して行く、

遠くの海が光っている。

山のみどりが鮮やかだ、俺の心が喜んでいる。

ふと横を見るとカメムシ城が、俺の隣を飛んでいた。


気がつくと、そこは族長の家の様だった。


俺は祭壇に寝かされていた。


またオッサンに抱かれて連れて帰って来たんだと思って身体の匂いを嗅いでみた。

オッサンの匂いは付いていない事に安堵して、

周りを確認すると、祭壇の下にはたくさんの猫たちがアンモナイトのようになって寝ている。

前世では、アンモニャイトって確か言ってたな。


それどころではない、どれくらい寝ていたのだろう。窓の外は真っ暗だ。

早く帰らなければクワンリ達が心配していることだろう、族長はこの部屋にはいない様だったので俺はゆっくりと祭壇を降りて、起こさない様に猫の間を抜けて扉に向かった。


隣の部屋に行くと、大きなテーブルに人化した族長とすらりとした女性が話をしていた。


「おお!山猫様気がつかれましたか!」


「よかった、急に眠ってしまわれてなかなか起きないので祭壇で祈りを捧げていたのです。」


隣のすらっとした女性が笑顔でそう言うと近づいて来た。

ずいぶん馴れ馴れしいと思っていたら。


「失礼しました。先日お迎えにあがりました。砂猫です。」


こんな綺麗な女の人だったんだ。砂漠の天使、砂猫....


「俺の仲間が心配してるんじゃないかと思って、ここに来てからどれくらい時間が経ってるのかなあ?」


「早く帰りたいんだけど」


「二日間経っています。ワイバーン側が今大騒ぎして山猫様の行方を探しています。僕が案内した道で帰る事はもうできません。警戒が強まって宿泊所に近寄ることもできなくなってしまいました。」


「マジか....それは困ったことになったね。俺の仲間は大丈夫なのだろうか?」


「申し訳ございません、お仲間のことも、今は正確な情報は得られておりません。」



困ったことになった、二日間も寝ていたとは、とりあえず食事を出してもらおう、腹が減って、今は何も考えられない....


ミルクの甘い匂いがして来た、やはりこの世界の猫まんまはミルク粥が定番らしい。

この匂いを嗅ぐと、

クワンリが急に恋しく思えて来てしまう。

そういえば、彼女と出会ったのもミルク粥が最初の食事だったんだよな。


「20回噛んで食べろ」


「できるな?」


あれからそんなに長い時間は経っていないが、何か懐かしくなってしまった。


食欲が満たされ思考が戻ってきた。

戻る方法に考えを巡らす。


グルーミングしながら考える。

その方が頭が回る。

すっかり猫だな、このまま猫のまま暮らして居ると魔獣に一直線、

それは避けたい。


そんなことが頭によぎったけど、そんなことより今は帰る方法だ。


「待てよ、俺は山猫様だろ、別に逃げなくてもいいんじゃないのか?ワイバーン側が探しているんだったら、見つけてもらえばそれで帰れるんじゃないだろうか?」


「山猫様、それは危険です。ワイバーン族は今とても気が立っている様なので....」


「ワイバーンはルナに帰るために俺が必要なんだろ?

城の通路の光と球体の光は俺が来たから反応したんだよね?」


「はい、とても驚きました。この者と今話をしていたのですが、あの城は、まだ動くのではないかと。」


「じゃあ、そのことをワイバーンに伝えれば、俺の身は安全でしょ?

もしかしたら俺が船を動かせるかもしれないんじゃない?」


族長と砂猫はこそこそと話し合いを始めた。


「それが確実に帰れる方法ですね、僕からワイバーンの族長にすぐに話を通します」


そう言うと砂猫は外に走って行った。

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