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プロ根性

人混みは嫌いだ、歩きづらくて、もっと小さい猫ならば人の脚の間をすり抜けて歩けるのに、俺はデカすぎる。

モタモタしているので、クワンリが抱き抱えて歩いてくれている。


「ノルよ、なんだか子供ノルより重たくないか?腕からすり抜けてしまいそうなのだが、、、」


・・・身体の力を抜いているからでしょ、力入れたら余計抱きづらいと思って


「しかし持ちづらい」


・・・モノみたいに言って〜

じゃ力入れてみる?


「痛い、爪を立てるモノでは無い!抱きずらい、力を抜いて良いぞ」


・・・でしょ〜


観覧席に座るとようやく落ち着いた。抱いて連れてきてくれたのでお礼に脛や足の甲にスリスリしてやる。


サルマは飲み物と食べ物、この世界の競馬新聞の様なリーフレットを持ってきて、賭ける仕組み馬の選びかたなどをクワンリに説明をはじめた。

俺はパドックが見たいと言うと、

「さすが、ノルさん準備場で出走前の馬を見るのはとても良い考えです」


褒められた。

馬と思念で話しをすれば勝つ馬がわかると思っただけなのだが。


五レースが終わり三レース取った。

外したレースも結構近い予想で、馬たちに話しを聞くのはなかなか良い考えだと思う。

今のところ元金の三倍近くある、儲かっている。


最終レースの馬に聞き取りをしに行く。

今日引退をする

今まで負けなしとも言われたベテランがいた。

最近は勝てなくなっていて、今日が引退レース

意気込みが違う。


周りの若い馬からはからかわれているが、俺は個人的に応援したくなってしまう。


走り終わったやはりベテランのウマが俺の隣にきてつぶやいた。


・・・俺たちは競走馬として生まれ育てられた。その事に感謝してレースは全力で走る。

走る事が喜びで引退などしたくは無い。

あいつは今日は勝つぞ。

いや、勝って欲しい。


俺は三番のベテランにお小遣い全額を賭ける事にした。


ゲートに最終レースの馬たちが集まってきた。

馬鹿にしていた若い馬は騎手を落とさんばかりに興奮している。


・・・若いな、レースに勝っても騎手を選ぶ馬など、プロでは無い


さっきの馬が俺を背中に乗せながらつぶやく。

男前の馬だ。


準備が整った


スターターの合図でゲートが一斉にひらかれた。

土煙を上げながら十頭の馬達が走る出す。


この世界の競馬はオーバルコースではなく、会場の直線の他は街の郊外の普段は一般道として使われている道を走る。

マン島TTみたいだと思い懐かしい気持ちになった。

一周三分のコースを三周走る。

猫なので見づらいだろうとさっきの馬がレースの時も背中に乗せてくれている。

お陰で人間達よりもレースが見やすい。


二周目迄は三番の馬は中盤にいた。背中に乗せてもらっている馬の解説によると、あの馬は最後の直線で一気にごぼう抜きをするスタイルらしい。

なので、観客にも人気があったのだと言う。


最終コーナーを土煙を上げながら十頭の馬達がゴールを目指して直線に入ってきた。


三番の馬は四番手付近を走っていたが外から追い上げて来た。

一頭、二頭、三頭と追い越しあっという間に先頭を走る。

二番手を大きく離してゴールした。

お小遣いが五倍になった瞬間だ。


ゴールした三番の馬は何かおかしい、足取りがふらついている、首を振って鼻息も荒く脚がもつれそうだ。

騎手が降り立て髪を一撫でした。

騎手が離れるとその場で倒れ込んでしまった。

全身が痙攣して苦しそうだ。


動きが止まった、、、、


背中に乗せてもらっている馬は感嘆の声を漏らす。


・・・俺たち競走馬は走り、勝つために生まれ愛され育てられてきた。引退レースで優勝して騎手を最後まで落とさず、降りて離れるまで持ち堪える事ができた。

あいつにしたら本望だろう。

俺もあんな逝き方に憧れる。


クワンリとサルマにそう伝えると二人とも涙を浮かべながら笑顔で頷く。

泣き笑いは二人ともブスだな。

でも良い顔だ。


前世で読んだ本の内容を思い出した。


坊さんの相談室の様な内容が書かれていた本だ。


人は何故生まれてきたのか?理由や役割はあるのか?

と言う質問に

人は死を迎えるために生まれてきた、理由や役割など無い。

どう死ぬか、どう生きるかはその人間次第だ。

その坊さんは大根を例にとって話す。


大根が意思を持ち考え、いつも人間に食われてばかりだと嘆き憤り食われたくないからと、辛くなったり、毒を持ったりすればどうだろう?人間はこの大根の種類は作らなくなり、食べられる事は無くなるだろう。

しかし、双葉の頃から大事に育てられ水も肥料も貰え、立派な大根になるまで丁寧に育てられた、と感謝の気持ちを持って美味しく育つ。

そうすると我が大根は一番と、沢山作られる。

そのうち味の評判が広まり種子があちこちに広がり子孫繁栄をもたらす。生物の本能の勝利を掴む事ができるだろうと。


自分が幸せになりたいのなら、自分の周りの者達を幸せにする事だと言っていた哲学者の言葉も同時に思い出した。


そんな生き方、逝き方がしたいと思いながら心の中で合掌した。

良いね、ブックマーク、ご感想頂けますとありがたいです。

よろしくお願いします♪

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