43 ヒロインに異世界転生してたらしいけどそんなん知らんしとりあえずカマクラ作っとく③
「いや確かに言ったわよ。正面から出て来いって」
「だからって本当に、正面玄関ぶち破って出てくるなんて思わないよねー…」
「この扱い…!相変わらず過ぎる…!わたくし聖女よ?正式な聖女よ?史上初の、神の加護を本当に受けた聖女でしてよ?」
「「それが本当に腹立つ」」
「もっと敬え!!」
きい!と狭いかまくら内でセリアナが吠える。
そう、私とビビアがらしくなく必死に、再会のために努力している間。
セリアナもセリアナで、努力していたのだ。
最初の宣言通り、教会を牛耳る努力を。
とは言っても。
「てっきり、教会幹部のお偉いさんの弱み握って掌握するのかと思ったんだけど」
「馬鹿ね。そんなのコ⚫ン君の開始冒頭3分で殺害される被害者じゃない。弱み握って直接脅すなんて『消してください』と申告するようなものよ」
その代わりにセリアナが行ったのは、人心掌握。
その人物が何を大事にしているか。権威、財力、容貌、正義感…弱みとそれらを把握し、人と関わるときにそれらを擽った。
…開き直った悪役令嬢コワーーーーー。
当初は幽閉と言わんばかりの待遇だったらしいが、表面上は慎ましく、裏では関与する人々の関心を買い、少しずつ待遇改善を図る。
そして。
教会本部にある古代文書の閲覧の許可をもぎ取り、徹底的に叩き込まれた知識と…幾ばくかのチート知識でもって、『神々』という存在について新説をもたらした。
元々、信仰こそあれ、『神々』が実際にいた神代は遠く。
実在は疑問視され、少しずつ、少しずつではあるが、権威を失いつつあった教会。
セリアナの新説は、『神々の存在』を提起するものだった。
結果、自身が率先して、捜索チームを組み、調査。
なんと古代遺跡の発見と、司法神フォルセトナの神託と加護を受けた。
もう一度言う。
神託と加護を受けた。
今まで「いないんじゃね?」と言われた超存在と遭遇し、あまつさえ、「加護」という名の力を授けられてしまった。
…世界に激震が走ったのは言うまでもない。
「遭遇した」までなら、気が違ったで終わっただろう。異端審問で終了、という羽目にならなかったのは、神託が複数名に行われたこと。
それによると、セリアナが古代遺跡を蘇らせたことにより、失われつつあった神々と人々の信仰心が繋がったこと。これにより、神々の恩恵が大地に届きやすくなったことが伝えられた。
つまり、人々がきちんと信仰心を保てば、大地が豊かになる、とお告げがあったのだ。
一気に勢いを取り戻す教会。そこまでいくと、もうセリアナはただのシスターにしておく訳にもいかない。
セリアナは、史上初の、『聖女』となったのだ。
「なんかもう、正面ぶち破って後方爆破する所業よね、アホくさ」
「ふふーんですわ!」
「…ていうか、この世界、神とか魔法とかのファンタジー要素なかった気がするんだけど…」
「あら?ビビアさん、さては後継アプリやってませんでしたわね?」
「後継アプリ?」
「ええ!いわばファンディスク的な?追加ストーリーとかが入ったやつですわ。あまり評判は良くなかったんですけれど。それの隠しキャラで神様がいるんですの。ベストエンディングでは主人公が女神化して結ばれますのよ」
「ヒロインて…」
「…リーンですわね。実際はこうですから、有り得ませんけど」
「…コイツが女神とか冗談じゃないわね」
「…まぁ、とにかく。どこまでこの世界と繋がりあるかは分かりませんでし。古代遺跡のひとつやふたつ見つけたら、わたくしの立場が強固になると踏んだ程度だったんですけれど」
まさかの「神様」との遭遇である。
しかも世界で唯一の加護を受けた存在。
「…下手に手を出したら、命どころか国が滅ぶわね」
「あ、わたくしに危害を加えようとすると、『神罰の雷』が落ちるのですって。フォルセトナ様が言ってましたわ」
「こわ!超怖!!」
「どーりでほいほい1人で歩いてる訳だわ…」
「ちゃんと麓には、おつきの方連れてきてますわよ」
「「そういう問題じゃない」」
ふう、と溜息をつく。
「…もーー…自力脱出が先とは…」
「1番可能性低いと思ってたんだけど」
「わたくしの勝ちですわね!!」
あの日した約束。
必ずまた会おうと。
その為にお互い、やれることをやろうと。
私とビビアは、外部から助けることを目標に、セリアナは自身で脱出することを目標に、4年の時間を過ごした。
蓋を開けてみれば、セリアナの完全勝利と言っていい。
おかげでビビアは膨れっ面だ。
「4年でやり遂げるなんて…さすが優秀なわたくし。わたくしが本気を出せばこんなものですわ!ほーっほっほっほっ!」
「うわ高笑い」
「本気で『ほーっほっほっほっ!』ていうやつ初めて見た」
「…何でかしら、ちっとも心が乱されないわ。これが勝者の余裕というものね!」
「よしゴリラ、そこに放り出しなさい。この自己陶酔勘違い女埋めるわよ」
「合点承知ぃ!!」
「ちょ!ばか!わたくし聖女よ?!神罰くだるって…ぎゃあああ!!」
神罰の判断基準はわかり兼ねるが、雪だまりに放り投げるくらいは問題がなかったらしい。
気高くきらきらしかった聖女様は、雪まみれのいつものセリアナに戻った。
「ばっかじゃないの?ばっかじゃないの?!万が一神罰の下ったらどうするつもりよ!」
「ノリ的に」
「そんくらいで神罰くだすような狭量な神なら信じない方がマシ」
「この罰当たりども…」
「ほい、セーニャ」
「何ですのこれ」
「蜂蜜酒。あったまるよお酒」
「…」
「…」
「これも4年越し、だね!」
襲撃のあった冬越えの祭り。
本当だったら、そのとき飲むはずだったもの。
「…あまい…」
「そりゃ蜂蜜だもの」
「結構強いから潰れないでよー」
「…つまみはないの、つまみは」
「あるよーナッツ」
「これしょっぱいと甘いでえんえん止まらないわよ、気をつけなさい」
ふふ、と誰ともなく笑う。
「お帰り、セーニャ」
「…ただいま…」
「さぁて、セリアナは自力脱出したことだしー次はビビーの還俗かなー」
「ふん、もうそんなの間近よ!さっさと自由の身になってやるわ」
「セリアナは?どうするの?」
「まだ世界に古代遺跡ありそうですの。それの捜索かしら。落ち着いたら学校とか作りたいですわね…リーンはどうするのよ?」
「ん?街興しも楽しいけどー…もう少ししたら後進に任せて、旅にでも出ようかな、わたしもまだまだ知らないこといっぱいあるんだなって思ったし」
色々世界を見てみたい。
自分で完結させてた世界は、未知のびっくり箱だということが分かったから。
「ではこれは決起会かしら?」
「お、いいね。新章突入?」
「なんでもいいからお代わり頂戴」
「ちょ?!気づいたら瓶が半分切ってる?!」
「な!ビビアさんあなた飲み過ぎでしてよ!ちゃんと配分考えなさいよ!」
「うるっさいなーまた買えばいいじゃないの」
「買うの私よね?!」
「そういう問題じゃなくて気遣いの話で…!」
喧喧囂囂と、姦しい声はどこか明るく響いた。
雪は溶ける、そうすれば春が来る。
雪がない世界では、新しいことにたくさん触れて。
そうして雪の時期には、こうしてきっとまた集まる。
私達の道は、きっとこれから重なることの方が少ない。
もしかしたら、そのうち途切れてしまうのかもしれない。
でも。
それでもここには、私達がいつでもいるのだ。
今この時の私達が。
そうして、未来の私達をいつだって迎えてくれるだろう。
おかえり、と。
!おわり!
これにておしまいです。
「失敗したあとの物語」「それでも生きていく」がテーマでした。
お付き合いいただき、ありがとうございました!
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