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○○依頼、受け付けます  作者: 殺人請け合い担当者・Venazi
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ニヒキメ…銃殺依頼、受け付けました

男は無邪気に凍った果実を頬張る。


噛み砕き、粉々にし、ユックリと飲み込む。


あぁ、何と甘美なのだろうか。

沢山の水晶が転がる店が、とある場所にある。


その店の名は“Die Agentur für Mord”…殺しの、代理店。


一人の男が、天井を見上げる様な恰好で眠っている。


椅子からずり落ちそうになっているが…何故か落ちない。


キィ…と戸が開き、人が現れた。


「オ客さん、御用は?」


男が軋んだ声を上げると、凛とした少女が僅かにおびえた表情を見せた。



「わ…私のお母さんを、殺してほしいの。」


少女は、震えた声で言った。


「どの様に殺しましょウ?」


男は興味無さそうに果物をかじっている。


「そ、そうだね…えーっと…じゅ、銃で…こう…」


少女は言いながら、果物が入った籠を机に置く。


「はイどーぞ」


男は果物を冷凍庫に入れながら、紙を見せた。


「ルール…ブック…?」


少女は、ぺらぺらと紙をめくった。


「その三…?差し入れは…果物のみ。………えっ」


少女は男を見た。


「差し入れでしょウ?」


男はただ眺める様に少女を見て、また果物をかじった。


「…四……貴方の悪意を精一杯の殺意へ……なにこれ。」


「ルールですよ。」


ただただ男は静かに言うと、宣言した。


「五時間以内で戻ってきましょウ」



男は骨董商の様な衣装を纏い、少女の母親がいる家へと向かった。


そこには、警察が沢山いた。


それを掻い潜り、男は女性へのメッセージを届けた。


『貴方好みの骨董を提供いたします』


女性はすぐに出てきて、男を応接室へと案内した。


勿論、部屋には警部がいるのだが。


「あら、このブローチ…素敵ね」


「此方の壺もオすすめですよ」


当たり障りのない会話をしながら、ちらりと警部をうかがう。


むっとしかめっ面で、まっすぐ前を見据えている。


全く此方を見ようともしない。


…と、その時…ガシャン、と音がして、部屋がフッと闇に包まれた。


「あら、何かしら…」


「奥さまはここでお待ち下さい…ああ、アンタも待っててくれ」


明らかに声音を変え、警部は部屋を出た。


「…治りますかねェ」


「どうでしょう…」


男はわざと不安げな声を上げ、女性の恐怖をあおった。


「…ちょっと、遅くないかしら…?」


案の定、まだ10分くらいだと言うのに女性はそわそわし始めた。


「みてきますね」


男はわざと小さな声で言うと、キイィっとドアを開けて…


「ヒッ……やめ、」


絶命する…ふりをした。


「ちょ、ちょっと?どうしたの?ねぇ!」


女性は、錯乱状態に陥った。


男は僅かに嗤うと、あらかじめ持っていた真っ黒な布で全身を覆った。


そして、女性のすぐ後ろで…声を掛けた。


「騒グナ。」


男は、ただ小さく囁くだけだった。


だが…


「キャアアアアアアアアアアアアア!!」


女性が大きな悲鳴を上げた。


だから――


「騒イダナ。」


パンッと軽い音を響かせ、銃を発砲した。


女性が死んだのを見届け、ガラスを思い切り割り…黒い布を遠くへと飛ばした。


そして、男は部屋の椅子でぐったりとしている演技をする。


いわゆる、襲われたフリだ。


警部が、音を聞きつけて走って来た。


懐中電灯を持っているらしい。


「おい、無事か!」


と、男の顔面に光を当てる。


男は眩しそうに身じろぎ、ユックリと目を開ける。


が、眩しい為かまた目を閉じる。


「眩しイ…」


「…すまん……何があったんだ?!奥さまは…!?」


男は小さく言った。


「分かりません…突然、何かが入って来て…悲鳴が聞こエて…殴られて…」


たどたどしく説明すると、警部が女性に光を当て…逸らした。


「……守れなかったか……しかし、何が目的なんだ…?」


警部は首を傾げ、男に軽く肩を貸した。


「すイませんね…」


男は言って、簡単な治療を受け……そのまま、店へと戻っていった。



「は…早いのね…」


少女がおびえた声を上げ、男を見た。


男は冷たい目で少女を見つめながら、言った。


「オ代を頂きましょウか?」


「な…何を払うの?」


男は目を細め、少女を見つめた後…


「…思イ出…ですかね」


と言い、少女から不思議な色の水晶を取り出した。


「そう…?それじゃあ、さよなら……」


少女はフラフラと、出口へと向かっていった。


そして…掻き消えた。


「オ客さん、アりがとウござイました」


男が言い、店はまた、静寂に包まれた。

男は笑いながら、水晶を転がした。


コロコロ、コロコロコロコロ。


水晶は転がって、机から落ちた。


ころり、ころころ…水晶は何処までも転がっていった。

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