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俺の家での勉強会


 あの文化祭準備から一週間近く経った金曜日の放課後、俺は、というか俺たち二年二組は文化祭の準備をしていた。

 文化祭準備を授業でするのはせいぜい3時間ほどしかなく、それだけで終わらせるのは不可能なので文化祭実行委員である川崎、委員長の二人からできる限り放課後に残ってくれ、と言われている。だが、それでも残ってるのは十数人だけで毎日となると片手で数えられる人数になるだろう。そんなこと言ってる俺も本来ならすぐ帰る側の生徒なのだろうが……


「藍沢くん、その板切り終わったかい?」


「おう、ばっちりだぜ。……でも、これ何に使うんだよ」


「どうやら、料理を保管するクーラーボックスをお客さんに見られるとまずいと思ったらしくてね。仕切りを作ろう!となったようだよ」


 清水が予定のない日以外はサボろうとしないので帰ることが出来ない。俺は嫌われていると知っている友達を一人にするなんて出来ないのだ。慎哉も多分俺と同じ理由で残っているのだろう。

 ちなみに、俺はこういう力仕事や大きい物を作ったりで、清水は小物を作っている。慎哉はというと委員長や川崎と話し合って内装をどういう風にするか話しあっている。あいつだけ楽そうでずるいと何度思ったことか……まあ、こっちもこっちで清水と作業場が隣なのでいつも喋れて楽しいが。あと、前にこの事を慎哉に自慢してみたら本気で悔しがっててそっちも大変なんだなって思ったから今はそんなにだけど。


 俺は板を切り終わって今日言われていた仕事が終わったので疲れたーっと伸びをして、清水と話す。だが、清水は自分の仕事がなくなっても他の人の仕事を手伝うから暇な時間というのがほとんどない。なので邪魔にならない程度に、そして自分が忙しいのに隣で暇そうな奴が話しかけてくる状況で怒らず会話をしてくれる清水に感謝の念を抱きながら話している。


 そういう風に過ごしていると、慎哉が俺たちの方に向かってきた。羨ましいからって自分も喋りにきたのか?そんなことを考えて、慎哉にドヤ顔を披露したが反応がなかった。どうやら違うらしい。面倒になったというか気になったという方があってそうな微妙な気持ちになった俺は普通に慎哉に聞いた。


「なんか用か?」


「時計見てないの。もう1時間経ってるから、帰ろうって誘いに来たんだよ」


「あー。……清水と話すのが楽しすぎて見るの忘れてたわ。ごめん、ごめん」


「……一回反応が良かったからって何度も煽るのやめてくれる」


 慎哉がジトっと見てくる。本当にやめて欲しそうだ……まあ、流石にここ数日言い過ぎてもうからかうのに満足してきたところだしやめておくか。そう思いながら俺はもにやけながら会話を続ける。やめるのは明日からだけどな。そう心の中で呟いて。


「今まで慎哉だって一つのネタを擦ることあっただろ、自業自得だ」


「くっ、昔の俺にもっと浩介と仲良くなって毎回違うからかい方をしてって言いたいよ」


「やめるって選択肢はないのか……」


 慎哉のその物言いに俺は呆れた。

 すると、清水がそんなとこにしておいたらどうだい、何て言ってきた。その清水はロッカーの前に立ってカバンを出している。どうやらもう帰り支度をしているらしい。俺たちは話すのをやめて急いでカバンを取り出した。その時には、清水はもう靴箱の方に歩き始めていた。俺たちはそれを見ると小走りをして追いつく。


 靴箱で靴を履き、もう校舎から出ようかというとき清水が話しかけてきた。


「ねえ、藍沢くん。もうすぐ期末テストだよね」


「ああ、そういえばもう一週間ぐらいか……時間が経つの早いな」


「それで……さ。明日、勉強会でもしないかい。……も、もちろん断ってくれて構わないよ」


「勉強会か、それめっちゃいいな。清水、誘ってくれてありがとな」


 清水がうん、とはみかみながら言う。勉強会か……高校に入ってから誰かの家に行くことなんてなかったから楽しみだな。あれ、というか……


「慎哉くんも明日は空いてるかい」


 俺が抱いた疑問を清水が慎哉に投げかけた。その慎哉はというと驚いた表情をしながら固まっている。


「な、いや。予定は空いてるけどさぁ」


 そう言いながら慎哉は教室で俺にしたようにジトっとした目で清水を見る。清水は視線をずらして見ないようにしている。何をやってんのかは知らないが、慎哉も参加するのは嬉しいな。

 ところで、勉強会はどこでするのか気になった俺は清水に聞こうとして——


「何で俺も誘うんだよ、もう少しで二人きりになれたじゃん。文化祭準備で話す機会が増えたからこそ、ここが大事なんだよ」


「仕方ないじゃないか、藍沢くんと二人きり何て僕に出来るわけがないだろう。そもそも、僕は慎哉くんが協力してくれないと恋愛方面では打つ手なしと言ってもいいくらいなんだよ」


「はぁ、やっぱり清水さんって恋愛だけ不器用すぎじゃない。誰かと付き合ったこと無さそうだし……」


「それと不器用さは関係ないだろう。それに、君だって彼女の二人もいないじゃないか」


「二人いたらそれはそれで問題なんだよ」


 質問出来る雰囲気ではなかったため口を閉じる。そして、放課後とは言え人に見られやすい靴箱で言い争いしている二人と一緒にされたくなかった俺は会話の内容も聞かずに校舎から出てすぐ側の壁に寄りかかった。


 そうして数分待つと二人が出てきた。若干の疲れが見えるが気まずそうではない。よかった、これで仲が拗れたらどうしようと気が気ではなかったんだ。そう安堵した俺は次こそ聞こうとして


「浩介、場所は浩介の家に決まったから」


 慎哉にそう言われすぐさま方向転換して分かったと言った。もしかしてこの数分で場所決めをしてたのか、俺に意見させないために。もしそうだとしたら絶対慎哉が犯人だろ。やっぱからかってたの恨んでたのか?……でもまあ、別にいいか。結依も仲良いしな。

 そう納得した俺は明日を楽しみにしながらいつものように下校していった。






 一日経って、土曜日の午後二時頃、家のインターホンが鳴らされた。

 それを聞いた瞬間動いた結依が俺より速く玄関に着く。そして、俺の後ろに母さんが立つ。当たり前だが、家族には友達がくることを言っている。そのせいで昨日はワクワクしている結依と興味深々な母さんの相手をするのが大変だった。


「は〜い」


 結依がそう言いながらドアを開けた。すると、紙袋を持ちながら満面の笑みで手を振ってくる慎哉と少し手を挙げて挨拶をする清水が目に入ってくる。俺もよっ、という風に少し手を挙げた。

 二人は玄関で靴を脱ぐと、フローリングに登り、母さんに挨拶をする。


「初めまして、浩介の友達の森慎哉です」「清水凛です」


 そして慎哉がつまらないものですが、と言い母さんに紙袋を渡した。あれはお土産だったらしい。


「どうもありがとね。ああ、それと私とてっちゃんはリビングに居るから」


 そう言い残してリビングに行った。俺の友達が気まずくならないようにという配慮だろう。それと、分かるだろうがてっちゃんというのは俺の父親のことだ。名前が哲でてっちゃん。仲が良くていいことだ。


 俺たちは母さんについて話したり——俺が二人、いやほぼ慎哉から浩介のお母さんは美人でいいねえなんて言われてただけだが——しながら俺の部屋へ行き、ドアの前まで来る。


「ここが俺の部屋だ」


 そう言ってドアを開けた。


「おーなかなかシャレオツってやつかなぁ、しかも片付いてるし。意外だね」


 そんな慎哉の発言の通り俺の部屋はシャレオツ……いやシャレてはないな、だが片付いてはいる。ベットが壁沿いに置かれており、部屋の中央にはテーブル。残りはクローゼットと本棚、あと鏡。本棚には少年漫画や清水からおすすめされた推理小説なんかが置いてある。それ以外にものはなく、ゴミや服なんかも散らかっていない。男子高校生の中ではなかなか片付いている方なのではないだろうか。


「確かに藍沢くんの部屋にしては片付いているね。もっとロッカーの中みたいに散らかっているのかと思ったよ」


「お前らなあ、俺だって家ではしっかりしてんだよ。内弁慶ってやつ」


 そういう風に見せびらかしていると横から結依に肘で突かれる。顔を見ると睨んできた。

 実はこの部屋、昨日はとんでもなく散らかっていたのだ。ペットボトルだとかテッシュのゴミだとかが部屋に散乱していた。それを結依に手伝ってもらってなんとか今の状態にした。なので不満があるのだろう。


「ごめんって、本当に感謝してるからさ」


 そう結依に囁いた。すると、今度は結依が俺に囁いてくる。


「じゃあ、今回はその誠意に免じてアイスで許してあげる」


 結依はそう言って二人と話し始めた。

 アイスは取るのかよ。……だが、アイスなら安いもんだ。今日中にでも買ってきてやろう。そう決めてテーブルに座る。三人も話が終わったのか座ってきた。俺の前が結依で隣が清水だ。


「今更だけど勉強って言っても何するんだ?」


 そう清水に聞く。


「そうだね……藍沢くんが一番苦手な教科は確か英語だったよね」


 ああ、と俺は頷いた。なんか英語だけは出来ないんだよな、それ以外の教科なら慎哉と10点ぐらいしか変わらないのに……


「だったら、学校でもらった英語のワークをしようか。それとこの単語プリントも。ノートを持ってきてくれるかい」


 清水がカバンから自分のワークとお手製っぽいプリントを数枚机に置いた。まさか作ってくれたのか……

 俺は自分のカバンからノートを出し、机に置いた。そして感謝を伝える。


「清水、ありがとな。俺のためにそこまで考えてくれてさ」


「だ、大丈夫さ。それと、結依ちゃんはどうするんだい?」


「私もここで勉強します。実は結構成績やばいので〜」


「こういうところは浩介に似てるんだね……だったら俺は結依ちゃんの勉強を見ようかな。清水さんは浩介の勉強を手伝えばいいんじゃない?」


 そう慎哉が提案した。それを否定するやつが出るはずもなく勉強会は俺、清水ペアと慎哉、結依ペアに分かれてすることになった。なんか藍沢家の勉強の面倒を見てもらって申し訳ないな。これはちゃんとしないと……






 そう思って勉強して一時間後、少し話したりはあったが俺に似合わず真面目に勉強していた。そのおかげか、清水の用意してくれたワークも試験範囲は終わり、単語のプリントも全て終わらせた。


「すごいね、藍沢くん。まさかここまで勉強出来るなんて思ってなかったよ」


 清水も——普段の俺のだらしなさが分かる言葉を使っているが——すごい、と褒めてくれた。

 一方で、こっちは順調だがあっちはというと——


「ここは二次関数のグラフy=2x²+4x+12とy=kに分けて図を書いて……」


「なるほど〜、やっぱり慎哉先輩頭いいですね。すごいです」


 順調そうだ。なんというか、面白みがない。まあ、慎哉と結依は仲がいいし慎哉はこういうことに向いてるからな。失敗する要素がないんだよな。


「じゃあ次は……どれがいいかな。一応、国語と家庭科以外はワークを持って来たんだけど」


 そう清水が俺に背を向けてカバンを漁りながら質問した。俺はごめんな、重かっただろ、と言いながら清水の右後ろに行き、カバンを覗き込む。うーむ、どうしようかな。

 そういう風に迷っていると清水が話しかけて来た。


「ちょ、ちょっと……離れてくれないかな。……あの、顔が近くて……」


「あ、ああ!ご、ごめん。近かったよな。悪気はなかったんだ」


「そ、それは、分かっているよ」


 俺は照れて清水から離れた。そして、清水は顔を背けた。もしかして清水も照れたんだろうか、それだったらいいが怒っていたら謝らないと。そう思いながらも俺の顔は赤くなっていただろう。でもそれは仕方ないことだ、美人で可愛い清水の顔をあんな数cmも空いていない距離で見て何も思わない奴なんていないだろうからな。

 そんな風に少し気まずい空気が流れ始めたとき、急に結依が立ち上がった。


「ちょっと、飲み物取ってくるね〜」


 そう言ってドアに手を掛ける。そのとき、慎哉も立ち上がった。


「ちょっとトイレに行ってくるねー」


 そのまま結依と二人で外に出て行ってしまう。この状況で俺たちを二人きりにするとか性格悪いぞ。そう心の奥で二人に悪態をついても何も変わらなかった。だったら仕方ない、このまま気まずいままは嫌だしな。俺は勇気を出して清水に話しかけた。




 ◯




 俺は結依ちゃんと一緒に部屋を出ると、廊下の暑さでどれだけエアコンに助けられていたか分かった。

 そんなことは置いといて、結依ちゃんに二人きりにしたのはいいけどこの後どうするのか聞こうとすると、結依ちゃんはその場にしゃがみ込み、ドアに耳を当てて中の声を聞こうとしていた。

 俺は結依ちゃんに出来るだけ小声で話しかける。


「何やってるの」


「声を聞こうとしてます」


「それは見たら分かるんだよ。そうじゃなくて、何でそんなことしてるの」


「いやいや〜、気になるでしょ。お兄ちゃんと清水先輩がどういう会話をするのか」


 そうニッコリと楽しそうに笑って言う。それに魅せられたのか、面白そうと思ったのか俺の体は耳をドアに押し当てていた。

 中から案外はっきりと声が聞こえてくる。


『な、なあ。物理を教えてくれないか。物理にするから、次のワーク』


『そ、そう。分かった、じゃあ、やろうか』


 ワークを机に置いたのだろうか、小さく高い音がした。そのあとはノートに書き込む音が続く。


『清水、ここがわからないんだけど…教えてくれるか?』


『もちろんだよ。えーっと、ここは……あっ』


『ん?どうかしたのか』


『い、いや。なんでもないよ。それで、ここは……』


 浩介はもう大分照れが治っている感じだ。それと、一回清水さんがことばを漏らしたのは、教える途中で浩介の顔でも見たのかな?それとも手が触れたとか、そこら辺だろうね。だったら、ここから先は清水さんが満足するだけで関係は進まないかな。

 そう見切りをつけた俺は結依ちゃんの肩を手で柔らかく叩き、もうやめようと伝えた。


「そうですね〜、清水先輩がここから攻めるとは思いませんしやめましょうか」


 そう言った結依ちゃんは俺を手招きしてついて来させる。ついていくとある部屋の前に着いた。ドアを結依ちゃんが開けてくれたので中に入る。中はエアコンが効いているのかとても涼しい。さっきまで暑い中ドアに引っ付いていたので感じる涼しさが桁違いだ。

 それにしても、ここは誰の——


「ここは私の部屋だよ〜」


 そう俺の心を読んだかのようなセリフを結依ちゃんは言ってきた。それに驚きながらも部屋を見てみると、確かに結依ちゃんっぽい部屋だと言うことが分かる。ベットやクローゼット、テーブルがあるのは浩介の部屋と同じだけど、結依ちゃんの部屋にはぬいぐるみがたくさんあった。大きいものだと1メートルを少し超えたぐらいのものもある。ちなみに、キャラクターはバラバラで同じものはなかった。


「それで、何で俺をここに呼んだの?」


 俺がそう尋ねると、結依ちゃんは今までのニコニコ顔が嘘だったように真剣な表情になった。


「お兄ちゃんと清水先輩の二人きりの時間を作ることと、私が慎哉先輩に質問したいことがあったからです」


 そうきっぱりと言われる。結依ちゃんはいったい何を質問したいんだろう?そう疑問に思ったことを見抜かれたのか結依ちゃんは質問してきた。


「慎哉先輩って清水先輩のことが好きなんですか」


 …………………………………………………………………………………………………………………………え、バレてたの?

 俺の心中にあるのはその一言だけだった。何でバレたんだろう、いや、結依ちゃんは俺の話から清水さんが浩介のことが好きだということに気づいたんだ、俺の気持ちにも気づいてもおかしくない。だったら、聞くべきことは


「そうだよ。認める。それで、何でそれを俺に確認しにきたの?」


 その理由だ。結依ちゃんは理由なしに人の思いを聞き出す何て人じゃないからね、何かしらの理由があるはずなんだけど……

 そんな風に考えていると、結依ちゃんがいきなり謝ってきた。


「ごめんなさい。私、そうとは知らずにお兄ちゃんたちがイチャつくのを手伝って、あまつさえそれを目の前で見せました。本当にごめんなさい。私、それが謝りたくて……」


 わざわざそれを言いにこんなことをするなんて結依ちゃんはいい人だね。まあ、いつも思ってたけどさ。


「……大丈夫だよ、結依ちゃん。あんなの学校で何回も見せられてるから。わざわざ謝る必要なんて無いよ」


 慰めるためにそういうと、結依ちゃんがええ〜!!と驚きの声をあげる。


「それ、大丈夫なんですか、精神とか」


 精神って面白い言い方するなぁ。なんて呑気に考えながら大丈夫だから落ち着いてと身振り手振りも合わせて言った。


「それで、一つ質問いい?」


 俺は人差し指を立てながら聞いた。

 

「はい、失礼なこと質問したんですから、何でも答えますよ」


「それは助かるよ。それで、前に結依ちゃんは清水さんに協力しないって言ってなかったっけ。とても協力してた気がするんだけど」


「言いました。でも、それは清水先輩から頼まれても協力しないって意味で言ったんですよ〜。だから、今日のは応援です。慎哉先輩も好きな人のために頑張ろうとしている人は応援したくなりますよね」


 やっぱり結依ちゃんはいい人だなぁ。

 そう思いながら見ていると結依ちゃんが気になったことがあるんですけど〜、と尋ねてきた。


「慎哉先輩は何で二人きりにしてあげたんですか?恋敵なのに」


「あー、それは……清水さんに対する恋心よりもあの二人に感じてる友情の方が大きいんだよ。俺の中ではね。あの二人が頬を染めて楽しそうに話してるところを見ると胸が締め付けられるようだけど、同時にその方がいいって思っちゃうんだよ。そっちの方が正解!って感じかな」


 結依ちゃんは何を言うべきか考えるかのように黙ってしまう。別に笑い飛ばしてくれてもいいんだけどな……だけど、そういうところが結依ちゃんのいいところだよねと思った。


「もういいんじゃないかな、リビングで飲み物を取って部屋に戻ろうか」


 数秒経ち、気まずくなった俺は話を切り替えるようにそう結依ちゃんに言ってドアに向かって歩き出そうとする。すると結依ちゃんが俺に近づいてきた。


「慎哉先輩は私のことをいい人って思ってるみたいですけど〜、慎哉先輩も大分いい人ですよね」


 そう慰めるように…ではなく、当たり前の話をするように結依ちゃんはニッコリと笑いながら言った。

 何で心が読めるんだろう?そんな顔に出てたかなぁ。そういう風に困惑していると結依ちゃんは軽やかにドアを開ける。

 俺も口角を上げながらこの部屋から出た。




◯




 慎哉と結依が帰ってきて、そのまま何時間か勉強をした。清水は目を逸らしてきたり、チラチラ見てきたりしていたが、二人が帰ってきてからそんなことはなくて安心した。

 まあ、そんな感じで勉強会が終わり、二人が来た時のように母さんと結依と一緒に見送る。


「今日はありがとな」

「バイバ〜イ」

「いつでも来ていいからね」


 俺、結依、母さんからそう言われた二人も手を振って別れの挨拶をした。


「じゃあねー」

「バイバイ」


 そのまま二人が見えなくなるまで見送ってドアを閉めた。

 すると、母さんが面白そうに聞いてくる。

 

「あの清水ちゃん?だったっけ、あの子彼女?」


「違うってただの友達だよ」


 下手に反応するとさらに言われるのは分かっているので淡白に返事する。

 すると、結依が口を開いた。


「そうそう、お兄ちゃんは慎哉先輩と……だもんね」


「絶対違うからな!お前は俺の好きな奴知ってるだろ!」


 あ……まずい


「へえ、浩介好きな子がいるんだ〜」


 そう母さんが面白そうに言ってくる。この似たもの親子が……

 俺は昨日よりも大変だろうなという予感を感じながら母さんと結依のからかいに身を投じた。

 

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