↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/5

第4話:あり得ない同盟

二時間ほどの浅い眠りの後、重厚なオーク材の扉を叩く、丁寧なノックの音で俺は覚醒した。完全に目覚める前に、俺の手はすでに枕元のテーブルに置いた拳銃を握りしめていた。冷たい金属の感触が、馴染んだ心地よさを与えてくれる。


「レイ様?」廊下から、落ち着いた年配の男性の声がした。


俺は音もなく扉に近づき、拳銃を低く構えたまま、扉を開けた。

そこに立っていたのは、長く、完璧に整えられた白い口髭を蓄えた、非の打ち所がない服装の老人だった。アリスティアだ。彼の両脇には、俺と同じく険しい表情で構えるシバタとタクミ。そして、反対側の壁には、やけに気楽そうにハンゾウがもたれかかり、俺に片手をひらひらと振って見せた。


「執事長のアリスティアと申します」老人は、軽くお辞儀をした。「今宵の祝宴の前に、あなた方との私的な謁見を望んでおられる貴族の方がおいでです」


十分後、俺たちは豪華な城の廊下を歩いていた。空気は冷たく、蜜蝋と古い石の匂いがする。装飾的な鉄の燭台で揺らめく蝋燭の炎が、壁にかけられた歴代の王族たちの厳めしい肖像画の上に、長い影を落としていた。


「蝋燭の灯りか」タクミが、俺たちにだけ聞こえる声で呟いた。「集中管理された電力網すらないとは。この文明の技術レベルは産業革命以前ですね」


その老人の年齢からは考えられないほど耳ざといアリスティアが、前を向いたまま答えた。

「もちろん、明かりを灯すための魔晶石はございます。ですが、国王陛下は……伝統的な雰囲気を好まれるので」


「高くつく伝統だな」俺は指摘した。「隣国は?そちらも、感傷的か?」


「東のカイラン共和国は、そのような感傷とは無縁です」アリスティアの声が、僅かに低くなった。「彼らは魔晶石を、街の照明から攻城兵器の機構に至るまで、あらゆるものに組み込んでおります。我が王のやり方を『時代遅れ』と評することもしばしば。我々の伝統を、利用すべき弱点と見なしているのです」


やがて、二人の王国兵士が守る華麗な扉の前に着いた。アリスティアがお辞儀をし、俺たちのために扉を開ける。「王女殿下がお待ちです」


俺たちは、広々とした優雅な私室へと足を踏み入れた。王女セラフィナは、大きなアーチ窓のそばに立ち、俺たちに背を向けている。数人の侍女が彼女を取り囲み、二着の、息を呑むほど美しいガウンを広げて見せていた。一着は銀糸のきらめくドレス、もう一着は深いサファイアブルーのドレスだ。侍女たちの間で、活発な議論が交わされている。


「銀糸のドレスは、王家の紋章とも調和いたします、殿下。重要な祝宴に、まさに威厳の象徴ですわ」


「ですが、サファイアブルーは、殿下の素晴らしい瞳の色を引き立てます!」もう一人の侍女が、情熱的に反論した。「優雅さも大切ですが、印象に残ることもまた重要です!」


「流行のために、気品を犠牲にすべきではありませんわ、エリーゼ」


「失礼ながら、殿下」


俺の声が、彼女たちの議論を断ち切った。侍女たちは、俺の大胆さに息を呑んで黙り込む。王女の背中が、ピクリと硬直した。


「青い方だ」俺は、簡潔に言った。「貴女の瞳の色によく合っている」


一瞬、呆気にとられたような沈黙が流れた。やがて、王女セラフィナがゆっくりと振り返る。彼女の紫水晶の瞳が俺を品定めし、寸分の隙もない俺の兵士としての立ち姿を捉えた。彼女の唇に、小さく、純粋に感心したような笑みが浮かんだ。


「なるほど」彼女の声には、新たな敬意の響きが混じっていた。「報告書には、『ハズレ』の方々が、戦闘以外にも鋭い目を持っているとは書かれていませんでしたわね。美意識を解する戦士とは。感服いたしましたわ、レイ様」彼女の笑みは、より焦点を結び、戯れから仕事の顔へと変わった。「ですが、私の衣装を批評するためだけに、この謁見を望んだわけではありますまい。多くの疑問がおありでしょう。どうぞ、全てお話しくださいな」


彼女が頷くと、侍女たちは青いドレスを残し、そそくさと部屋から退出していった。


「改めて、自己紹介をさせていただきます」彼女の立ち姿は、威厳に満ちていた。「私はセラフィナ・セレーネ・フォン・エリュシアード。エリュシアの第二王女です」


「レイだ」俺は頷いた。「こちらはハンゾウ、シバタ、タクミ。……まあ、盗賊ギルド《スィーブス・ギルド》のように動く、エリート騎士団とでもお考えください」


彼女の笑みに、今度は純粋な好奇心が浮かんだ。「面白いことをおっしゃる」彼女は椅子を勧めた。「答えが欲しいと。どうぞ」


「法皇は俺たちを『ハズレ』と呼んだ」俺は、単刀直入に言った。「そして、今夜の祝宴の後、俺たちを追放するよう、すでに要請したとも聞いている」


「ええ、その通りです」彼女は、険しい表情で認めた。


「失礼ながら、殿下。あの派手な服を着た男が俺たちをどう呼ぼうと、興味はありません」俺は続けた。「俺たちがここにいるのは、一体全体、何が起こっているのかを知るためです」


セラフィナの表情が、疲れたような悲しみを帯びたものに和らいだ。「アリスティアからお聞き及びのことと存じますが、この王国は助けを必要としています。近隣諸国に敵視され、そして我々の真の、最大の脅威――魔女王――が、数ヶ月前に復活したことが確認されました。我々は、絶望的な状況にあるのです」


「よろしいですかな、殿下」ハンゾウが、珍しく丁寧な口調で口を挟んだ。「戦場に、高校生を送り込むと。彼らは兵士ではない。ただの子供《ガキ》ですよ。この王国は、その一線を越えるおつもりで?」


彼女の顔に、怒りの色がよぎった。「いいえ、それは私が越えたくない一線です」彼女の声は、張り詰めていた。「ですが、第二王女である私に、影響力は限られています。この国の馬鹿げた古の規則のせいで、召喚を承認せざるを得ませんでした。信仰に関する事柄において、法皇は絶対的な権威を持ち、私の兄である王太子も、彼を支持しているのです」


「あんたらの国の人間でやればいいだろうが」シバタが、唸るように言った。


「女神の祝福――あなた方がご覧になった力は、異世界から来た者にしか与えられないのです」彼女は、辛抱強く説明した。「普通の兵士がどれほど勇敢であろうと、魔物の大群を前にしては生き残れません。ただの殺戮になるだけです」


「ならば」タクミが、純粋な論理で口を開いた。「我々全員を、元の世界に戻せばいいのでは?」


王女の肩が、がくりと落ちた。彼女の王族としての仮面がついに剥がれ落ち、純粋で、深い後悔の念が露わになる。「本当に、申し訳ありません」彼女は、か細い声で言った。「ですが、あなた方を送り返す方法は……ないのです。召喚の儀式は、一方通行の道。我々の歴史を通して召喚された英雄は皆、この世界で生き、そして死にました」


彼女は、深く、正式なお辞儀をした。「あなた方は、公式には『ハズレ』の烙印を押され、祝宴の後に都から追放されます。あなた方が受けるに値しない運命です。それを思うと、言葉に尽くせないほど、私は悲しい。本当に、申し訳ありません」


俺たちの新たな現実の重みが、部屋に沈黙をもたらした。もう、帰れない。


俺はすっくと立ち上がると、部下たちと王女の驚きをよそに、簡潔で、正式な礼を行った。臣下の礼ではない。一人の兵士が、一人の指揮官に示す敬意の礼だ。


「感謝します、殿下」俺は言った。「我々に正直に話してくださったこと、そして、法皇の地下牢から我々を救ってくださったことに」俺は顔を上げ、彼女の瞳を見据えた。「今は、俺たち自身の次の手を考えねばなりません。ですが、これだけは、お約束します。いつか、貴女が規則に縛られなくなり、兵士や英雄にはできないことを成し遂げる『プロ』が必要になった時は……俺たちを呼んでください」


俺は、手を差し出した。一瞬の逡巡の後、彼女はその手を取った。


「ええ」彼女の握る力は、驚くほど強かった。「必ず」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。